ヒトラーは髭の無い自分の顔を生涯誰にも見せなかった。おそらく、思春期に髭が生えだしてから鼻の下の髭を剃ったことは一度も無かったはずである。このブログの「ヒトラーとリンカーンの共通点」で述べたように、鼻の下が長いからだと私は思っていた。かつてそういう説明を読んだ記憶があったからである。しかし今回費用を掛けて写真加工をしてもらったら、違うのではないかと思えてきた。たしかに彼は鼻の下が長めだが、それ以上に目立つのが鼻が広がっていて鼻の穴が大きいことである。若い頃のヒトラーには、それが自分の顔に対する劣等感になっていたのではないか。思春期には自分の容姿を異常に気にするものである。ヒトラーはナルシストだったからとりわけ気にしただろう。その感情は大人になっても続き、鼻の下の髭は絶対に剃らなくなったのだと思われる。
鼻の下に黒い髭があれば、人の目はそこに注目して鼻の印象が薄くなる。ヒトラーの鼻が広がっているのは写真加工してみて始めて気付いたが、有名な首相就任演説の画像を見ると鼻の孔が大きいのがよく分かる。上向きにのけぞっている時に鼻の孔が目立つのだ。国政を左右する大事な状況でそんな事を気にする人間などいなかっただろうが、ヒトラー自身はものすごく気にしていたと思う。だから常に髭で鼻の孔を隠して、生涯絶対に髭をそらなかったのだろう。それに彼は髭の無い若い頃の写真を、ほとんど廃棄したのではないかと疑われる。
図の3つの写真と1枚のスケッチのみが、私が見つける事が出来た25歳以前のヒトラーの顔を示す資料の全てである。1枚は赤ん坊の時、2枚は少年時代であるが大勢の中の記念写真である。1枚の方は有名でよく出ているので見た人も多いだろうが、もう1枚は知らない人もいるだろう。ぼやけているのは遠距離から撮った記念写真の中から取り出して引き延ばしたからだろう。おそらくヒトラーは、この写真が世に出るのを止めさせたはずである。しかし記念写真だから、大勢の学生やその家族が所持していたので全ては没収されずに残ったのだろう。ヒトラーは上の2枚、赤ん坊と12歳の少年時代の写真しか自分の若い頃の顔を公式に見せずに、それ以外は全て没収して廃棄したのだと私は思う。 ヒトラーは1938年にオーストリアを併合した後で、自分に関する資料を残らず集めさせて不都合なものは全て廃棄したと言われている。その際に写真も処分したのだろう。
セバスチャン・ハフナーの「ヒトラーとは何か」によれば、彼は政治以外には何も無かった男である。職業はない(画家と建築家になろうとしたがなれなかった)、家族もいない(実の妹を完全に隠して彼女にヒトラーの名を使うのを禁じさせた)、国すらなかった(生まれたオーストリア帝国を腐っていると軽蔑してドイツに移ったが、死ぬ間際にドイツなんぞ滅びちまえと破壊しつくそうとした)。誰も愛さず友人もいなかった。彼が愛した母親と姪のアンゲラ・ラウバルはもう死んでいた。彼には愛人のエバ・ブラウンがいたが、彼女を愛していたとは思えない。自分が自殺する時に、本人が望んだとはいえ共に自殺させている。母親や姪なら安全な場所に避難させただろう。彼には愛犬がいたが自分の目の前で毒殺させた。彼は愛人と愛犬を可愛がっていただけで、目の前で平気で死なせたのである。彼は若い頃にクビツェクという男と親しくしていたが、もう会いたくなくなると一方的に別れて30年間会わなかった。これが友人だろうか。総統としてのヒトラーに最も寵愛されたシュペーアが語っている。「ヒトラーにもし友人がいたら、それは私だったろう。」彼はヒトラーには友人などいなかったと言いたかったのである。
何もないヒトラーには政治だけが全てだった。だから政治家ヒトラーに好ましくないものは消してしまった。妹を隠したのもそのためである。だから自分の写真も消したのだろう。軍隊時代の前には、開戦に熱狂する群衆にいる25歳のヒトラーの写真だけが公表するのを許された。愛国者としての宣伝になるからである。それ以外の写真は邪魔だったのだろう。それに若い頃の自分の顔に対する劣等感も加わったのではないか。髭の無い顔は見せたくなかったのだろう。ヒトラーの横顔の絵があるが、これは17歳の顔だそうである。特徴的なのは、すでに髭を生やしていることと真横を向いていることである。若い画家同士が絵のモデルになり合ったのだろう。ヒトラーは自分の顔を正面から描かれるのが嫌で横を向いたのではないか。すでに髭を生やし始めていたが、鼻に対する劣等感が消えなかったらしい。
ハフナーによれば、ヒトラーは熱狂的なヒトラーファンだったという。自分自身に惚れ込んでいたのである。だから自分の顔がどう人に見られるを気にし続けた。あんな顔でナルシストだったのである。そんなヒトラーが見たら怒り狂うように写真を加工させてみた。ナチス政権下なら逮捕された可能性は十分あるだろう。
この写真をTシャツにプリントして売ろうかと思っています。興味のある方は見て下さい。
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