濁泥水の岡目八目

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「手取り14万円でもいいんだよ、にんげんだもの」相田みつをは心の底からの善人だとは思うが・・・ひょっとしたら悪魔かもしれない

2019-11-14 14:29:34 | エッセイ


 山本七平さんが「軍医の治療」について述べていた。軍医の治療は極めて効果的で傷も病も早く治るのだが、患者からは少しも感謝されずに恨まれたそうである。世間のお医者さんにとって患者はお客さんでもある。嫌われたら他所に行ってしまうから、出来るだけ痛くせず苦しまないようにしなければならない。そのために治療が遅れてもしかたがないと諦めるのである。
 軍医は全く違う。軍医の治療は「軍事行為」なのであるから最も早く成果を出すのが優先される。痛かろうが苦しかろうが関係ないのである。それに軍医の治療は「軍の命令」とされるから、たとえ上官であろうとそれに従わざるをえない。ましてや階級が下ならどんなに苦しかろうが絶対服従である。だから軍医は故障した兵器を修理するように傷病兵をてきぱきと治してゆくのである。治してもらうのはいいが、その痛みや苦しみは忘れられないものとなり軍医は感謝されずに恨まれたそうである。
 堀江貴文さんの教えも「軍医の治療」なのであろう。確かに効果的なのだろうが、あまりにも苦しくて辛いことをやれと言われて恨む人も多いと思う。堀江さんには楽々やれることだって、死ぬ気で頑張ってもやれない人だっているはずだよ。私もはっきり言って頭は良くないし飲んだくれだから、二日酔いでボケーと一日中寝ているのが大好きだったりしたんだ。歴史が好きで色々調べたり考えたりはしていたんだけど、俺の頭じゃあ文書にまとめるのは無理だろうと諦めていたんだ。でも、吉本隆明との対談で鮎川信夫さんが「やる気さえあれば頭なんて悪くたって文章は書けるからね、頭が良くてもやる気がなければだめだ」という意味のことを語っていたのを読んでなんだか自信がついたんだよ。私は鮎川信夫さんの詩は全く分からないし興味もなかったんだけど、やはりこの対談シリーズで「私は誰とでも親しくなるのは嫌ですがね」と語っているのを読んで、ああこの人は俺と同じなんだぁと親しみを感じて興味を持って、エッセイなどを読んで自分が学ぶべき人の一人として尊敬していたんだ。吉本隆明は小室直樹さんの真っ当な日本の労働運動(ムラ)批判(所属する組織によって労働者の身分が違う)という厳しい意見を左翼丸出しで見当違いの反論をしていた時から信用していなかったが「私は国家が崩壊したのを見た」などと馬鹿なことを言いだしたから愛想をつかしたよ。敗戦直後の日本は混乱したし一部では無法もはびこったが、決して崩壊などしていない。国家の崩壊とは「殺戮と強奪とレイプ」がやりたい放題の生き地獄なんだよ。国家という「巨大な暴力」が消えれば無数の小さな暴力が暴れまくって手がつけられなくなり「人が人にとって狼となる」なんてことは大昔の賢い人がちゃんと教えているのにねぇ。

 堀江貴文さんみたいな叱咤激励より、鮎川信夫さんのさりげない一言が私にやる気を出させて頑張らせたんだよ。それを思うと相田みつをさんの言葉は悪魔のささやきみたいで、いくら読んでもやる気は出なかったはずだよ。

 


 

 

 


 

 



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