中西正男の「ご笑納ください」

デイリースポーツで13年半、芸能記者として勤務。現在は朝日放送「おはよう朝日です」などに出演させていただいております。

スペクタクル。

2010-07-26 14:16:57 | Weblog
昨日、定食屋さんでモリモリ食べていると、隣の席に二十歳過ぎくらいの女性が一人で入ってきました。

上戸彩さんをアンニュイにしたような綺麗な女性で、おかわり自由のお店で男性客が多い店内では、まさに異彩を放っていました。

さらに、注文を盗み見すると、うなぎの蒲焼きに小鉢がついた『うなぎ定食』を注文してらっしゃいました。

完全にこちらの勝手なイメージですが、定食屋さんに入ってきただけでも驚くようなルックスの女性が、野菜炒め定食やハンバーグ定食ではなく、うなぎ定食を頼んでらっしゃるのが意外で、自分が注文した『豚キムチ定食』もそこそこに、女性の一挙手一投足に刮目していました。

ほぼ一匹分の蒲焼きが5切れほどに切って盛り付けてあったのですが、北斗百裂拳を放つ際のケンシロウの腕のように、速すぎて残像が見えるほどの勢いでご飯とうなぎに箸を伸ばしてらっしゃって、僕が豚キムチの豚とキムチをバランスよく箸で掴もうと、しばし足踏みしているうちに、うなぎは残り一切れになっていて、お茶碗も空っぽになっていました。

人智を超えた早業に、せっかくバランスよく掴んだ豚肉とキムチを箸ごと落としてしまうくらいの衝撃を受けましたが、本当の衝撃はここからでした。

ご飯をおかわりに行った女性の手には、いわゆる“まんが日本昔ばなし”のご飯ばりに白米がてんこ盛りにされたお茶碗が握られていました。

ただここで、はたと気づきました。ご飯はてんこ盛りだが、残されたうなぎは一切れだけ。

先ほどは4切れで軽めのご飯一杯を食べたのに、今度はてんこ盛りのご飯に対してうなぎ一切れ。

これではあまりにバランスが悪い。この難局をどう乗り切るのかと、こちらの豚キムチは完全にお留守になり、固唾を飲んで見守っていると、想像を超えた創造を目撃することになりました。

①残ったうなぎをこれでもかとご飯に押し付け、うなぎの風味とタレをてんこ盛りご飯の上部に染み込ませ、その上部のご飯をごっそりと小皿に移す。

②茶碗に三分の二ほど残っている白いご飯を一切れのうなぎで食べられるだけ食べる。

③いよいようなぎもなくなり、ただただ茶碗に残った三分の一ほどの白いご飯を、小皿に移してあった“うなぎ風味ご飯”をおかずにかき込む。

故中島らもさんの著書の中で、チャーハンをおかずに白米を食べる偉人の話は読んだことがありましたが、自作のうなぎ風味ご飯をおかずに白ご飯を食べる女性がいるとは思いもよりませんでした。

豚キムチにはほとんど手をつけていないのに、アンニュイな気持ちでお腹と胸がいっぱいになりました。

35年間、アンニュイという言葉の意味をハッキリとは分からずに使い続けているが、ハッキリ理解している人が少ないからか、何となく通用し続けている35歳。

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