大工風の道

仮設住宅ってわけでもないけれど、
ま、しばらくここで様子みようっと。

えんやこ~ら

2009年06月04日 | 屁理屈と愚痴


家を建てる…。

ただそれだけの単純な行為なのに、最近訳のわからん法律で、どんどんややこしくなってきている。

とくにここへ来てでてきたのが、あの天下の悪法「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(通称=住宅瑕疵担保履行法)」だ。

どう考えても、大手ハウスメーカーと天下り支援の意味が濃く、これによって「施主と職人」という「人間味のある付き合い」が法律によって完全に否定された。
(否定されるようなことをしてきた輩がいっぱい居たから…というのも事実だけど)

私らの立場からいうと、大工にまず相談してほしいけれど、考え方は自由で、自分の家を建てるのにハウスメーカーに発注するのもよかろう。
それにしても、そのメーカーに発注すること自体、本来「自己責任」であるはずで、なにがどうなってか(一般に例の設計士の詐欺事件が引き金と言われるが)、消費者保護の観点という名目で、今、こんな有様だ。

さて、今日は昼間の仕事を終えてから、友人の大工が相談にのってほしいというので、彼の事務所にお邪魔したのだけど、どうもその「瑕疵担保」のことがよくわからないらしい。

施主直営でこの夏着工で、完成が10月以降…。
すなわち、通常なら今回の瑕疵担保履行法の適用される物件。
引渡しが10月以降なら適用だもんね。

んで、「引渡し」ってなによ?
直営なら、引渡しという言葉自体無いじゃん…!



もっとも自分もよくわからないのだけども、こんな現状にそぐわない法律じゃんじゃん創って、現場を混乱させて、私ら末端の職人たちはそれについての勉強会やらでてんやわんや。

経費もかかるし、結局純粋に「建築」にかけることの出来る費用がさがって手抜きするしかないじゃん…って話もある。

もう一度原点に帰ってはどうですか皆さん。

所詮「家」。
「住みか」なのだ。
動物でいうところの「巣」。

保険は「任意」でいいんじゃないですかねえ。


そういや、先週末、岐阜県池田町の仲間の現場で、家造りの原点を見た。
見たというより作業に加わらせてもらったのだけど、なにかというと「石場建て」の基礎のつき固め。
「ヨイトマケ」というのが一番ポピュラーだけど、このへんでは「じごつき」というらしい。ほかにも「じつき」とか地方によってマチマチだけど、これでつき固めた礎石の上に柱を建て、土壁をつけて家にする。



こんな昔からの当たり前の家造り文化が、法律によって規制され、環境負荷の高いコンクリートや鉄などの工業製品に頼らないといけない仕組みになってしまった。
そう、「瑕疵担保履行法」ではこの伝統文化が当てはまらない。
法律を作った偉い方たちが、この文化を知らなかったのだ。(呆れ)
保険の担当者でさえ「石場建てってなんですか?」というようだし。

念のためにいうけれど、これがちょいと前までのこの国における「家造り」のスタンダード。
とても合理的なのだ。
(もっとも今の多くの大工は未だ「石場建て」すら経験がないみたい…)

さて、多くのみなさんの疑問は、「そんな、基礎にしっかり固定しないで大丈夫なん?」ってところだろうか。

はっきり言うと…。
なにをもって「大丈夫」かどうかという「価値観」が違う。

地震ではそれなりに「ずれる」だろう。
将来、一部の石が沈下するかもしれない。

でもそれが「家」の性能になんの問題があるのか?

高層ビルを建てるわけではないのだ。
イメージしてほしい。
椅子や机、あるいは自動車だって、地面に固定していないけれど、壊れない。

「ずれたら引っ張って直す」「沈んだら、付き固めて直す」。
そうやって昔の家は長持ちしてきた。

今流行の言葉でいうと、究極のエコじゃないかと思うのだけど。

※誤解しないでほしいのだけど、「こうじゃないとダメ」と言ってるのじゃなくって、この工法を「否定しないでください」と言っているだけですから…。

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今週土曜日に残りの20個の礎石、つき固めるそうです。
手伝い募集中だとかで、希望の方あれば、連絡先などこのコメント欄に書き込んでもらってもいいです。
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