もう何十年も前の文藝春秋の巻頭随筆欄の一文が,未だに記憶に残っています。筆者は富士ゼロックスの小林陽太郎氏,表題は「蛇は頭を潰すまで」だったと思います。
小林陽太郎氏は,富士フイルムの社長だった小林節太郎氏を父に持ち,富士フイルムを経て富士ゼロックスに転じ,社長,会長を歴任しました。現在は富士ゼロックス相談役最高顧問,経済同友会終身幹事,国際大学理事長などの地位にあるようです。
巻頭随筆の大略は次のようなものだったと記憶しています。
《太平洋戦争直後,いまだ占領軍総司令部(GHQ)が日本の全てに支配権を維持していた時代,小林氏はGHQとの各種折衝に困難を極めていたそうです。
なかでも小林氏を悩ませたのは,GHQのある佐官級の将校で,なにかにつけて無理難題を吹きかけたり,話をおかしな方向に持っていったりして,やりきれない思いでGHQを後にする毎日だったそうです。
ところがこの将校がGHQ内で大きな失敗を犯したのか,あるとき小林氏にしおらしく下手に出て失敗の後始末を頼んだのだそうです。
小林氏も日本人,過去のいきさつはさておいて,何とか助けようと苦心したそうです。おかげでこの将校のクビはつながったそうです。
ところが,こんな負い目を受けたにも拘わらず,この将校は,その後も変わらず無理難題,むしろ以前よりも酷く小林氏に当たったそうです。
そして,この将校との苦々しい経験から,小林氏がつくづくと思ったのは,「蛇は頭を潰すまで」。要するに,邪悪なもの,すなわち蛇は頭を潰して完全に死滅させなければならない,と云うことだったそうです。》
私がこの小文を何十年も経て今日,未だに心に刻んでいるのは,真に邪悪なものはヘビの頭を潰すように息の根を断たねば,ふたたび息を吹き返して邪悪を繰り返す,という箴言としてです。
国家としての今の日本にとって最も邪悪な人物は,云わずと知れた小沢一郎です。この男の頭の中の大部分を占めているのは邪悪な権力欲です。
日本がどうなろうと自分が支配する,天皇さえも自分の支配下に置くことも厭わない,ましてや政界の有象無象は自分の前に平伏するのが当然だ,鳩山民主党なんかただの手段に過ぎない,と信じて疑わない,とんでもない邪悪に手足を付けたような人間です。
鳩山由紀夫なんかを政界から放逐する,なんて甘いことをしても日本は唯々堕ちて行くばかりです。傀儡としての鳩山由紀夫を操っている人形師・小沢一郎を政界から抹殺しなければならないのです。
昨今の大新聞を見ても,みんな小沢一郎に関して腰が引けています。どちらに転んでも逃げが効くようにしているのです。もちろんかつて大連立を画策した読売新聞の渡辺恒雄がその典型でしょう。大新聞のずるさの象徴のような男です。今や,半年でボロが出た鳩山由紀夫の後釜を探して,小沢一郎となにか画策しているようです。
しかし,渡辺恒雄にしても自らが表に立つことは,新聞屋を装っている限りできないわけですから,小沢一郎の背後に隠れているよりほかありません。
ですから,小沢一郎の息の根を止めてしまえば,渡辺恒雄も動きが取れないのです。
小沢一郎という邪悪なヘビの頭を潰してしまわなければならないのです。それには小沢一郎を単に民主党幹事長の座から叩き出してはいけないのです。幹事長の座にある間に「ヘビは頭を潰すまで」なのです。そうでないと,未だにお人好しが多い日本では,幹事長の座から離れただけで小沢一郎を許してしまう可能性が高いからです。
なにせ麻薬密売人が中国で逮捕され,中国の法律に基づいての正式裁判で死刑判決を受け,現実に死刑執行されただけで,「そこまでしなくとも。ちょっと厳しすぎると思います。」などとしたり顔で街頭インタビューに答える人間がうろうろしている日本です。法律として死刑が存在する日本で,死刑廃止を唱えながら法務大臣の地位に平然と居座る人物がいるではありませんか。
小沢一郎のような邪悪な人間は,そのような矛盾に充ちた日本人を冷ややかに観察しているのです。ヘビの眼で獲物を窺っているのです。ヘビの頭は潰さなければなりません。