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唐沢なをき先生vsマンガノゲンバ の件で思った

2009-09-17 12:28:05 | よしなし事
ここ半月くらいの間に,「爆問学問」で『20世紀少年』の浦沢直樹さん,
「プロフェッショナル」で『バガボンド』の井上雄彦さん,
「マンガノゲンバ」で『プライド』の一条ゆかりさん(さすがにこのくらいの大御所になると「先生」と呼んだほうがはるかにすっきりくるな…)
といずれもNHKの番組で一流漫画家先生たちの仕事の様子が
紹介されまして,その一流たるスケールの大きさを垣間見ることができて
楽しかったです。

「右手が自由に動くよう左の腕で踏んばって
 体を固定して描いてたら肩を脱臼した」
「神がかったようにいい絵が次々と描けて
 「おおっ!」と乗りに乗って描いていたらその後
 反動で体調を崩し動けなくなった」

浦沢先生,カッケー!てか,話,面白え。
映画完結編の公開に絡んでラジオの生番組に登場して
たっぷり1時間以上トークしたりされてますから,
結構得意なんでしょうね(バンドのライブでもMCしてるんでしょうかね)。

井上先生のドキュメントは,画力もさることながら
ネームで一番苦労している,あそこまで苦悩して登場人物像を描き出す
ことで,心に迫る作品が生まれるんですね。
連載で今登場している伊藤一刀斎,この人何のために
出てきてるんだろうと疑問に思ってましたが,
井上先生も悩んでたんですね。
どう描いてもこの人の格を落とすほうに転んでしまいそうになるって。
そりゃ,戦いたくない武藏に戦いを挑んでいる,しかも
武藏に自ら戦いたいと思わせる要素を持っていないのなら。
どんなに剣の腕が立っても基本的にザコキャラ,読者の
記憶に残るに人物にはならないでしょう。今後どう展開するんでしょうか…?


一条ゆかり先生は,とにかくキャラの設定,生き様が
エッジ利いててすごいですね。
あと,机の大きさもある入力端末,うらやましい…
いったいいくらするんだろう…?



(40万で21インチが買えるのか…)

で,この3番組のうち最後の「マンガノゲンバ」では
1~2か月ごとにこのような大物作者の特集として
まるごとスタジオトークあるいは仕事場訪問インタビューが行われるほか
そうでない回も毎回「作者ノゲンバ」として
話題の作品・ユニークな作品の作者の仕事ぶりを取材し紹介する
コーナーがあるんですね。
絵の描き方にしてもアイデアや構成にしても
ほんとうに人それぞれさまざまで,
楽しく,勉強になるという気持ちも少しありながら
見ていたわけですが,その裏側でトラブルが起こり
取材&OA中止となったケースもあったそうです。

唐沢なをきオフィシャルブログ「からまんブログ」
 以下のエントリはいずれもなをき先生の奥さん(よしこさん)がUpしています。
『マンガノゲンバ』取材中止しました
『マンガノゲンバ』の件
いや、そうじゃなくてー
『マンガノゲンバ』スタッフの人が謝罪に来ることになりました(9/15)


連載中の『ヌイグルメン』制作の過程を取材するとのことだったそうですが
担当ディレクターが事前のうち合わせの段階で勝手な
イメージを膨らませすぎたようで,
執筆中に漫画家を志すようになったきっかけなどを
質問するという撮影で,意に沿わない回答をすると
「そうじゃなくて~」とダメ出しをしたり露骨に嫌な顔をしたり。

> なをさんは子供の頃から、ずーっと特撮の舞台裏の
> 漫画を描くことだけ考えてた人で、ほかの漫画は
> 全部イヤイヤ描いた漫画で、今、『ヌイグルメン!』で
> 特撮の舞台裏が描けて幸せだあ! 
>
> ってな感じの筋立てになってるようでした。

そんなキャラ設定はイヤだ…。(;^_^)

唐沢先生としても番組上のやらせが許せないというんじゃなくて
多少の演出は必要だと考えた上で取材を受けたそうなんです。

そうですよね。
私も学生時代,地元のテレビに出たことあるんですけど,
もう,本当にひどかった!
当時ラジオ番組の投稿常連だった私はそこのディレクターさんから
テレビのディレクターさんにオタクの代表みたいな形で紹介されて
1度は座談会,もう1度は青年の主張みたいな形式で
何の演出もなく,編集するから好きなこと喋ってくれたらいいです
と言われ,何か喋りましたけど…
もう大後悔ですよ!
だって全然おもしろくないんだもの。まったくのフツーで。
ほんと,ウソや誇張を入れてでも面白いこと言うべきだったんじゃないかって
1人で申し訳なく思ってたのを思い出します。

そんなわけで(いや私の話は関係ないですけど),
唐沢先生夫妻も撮影用にダミーの打合せとかしようと
思ったそうなのですが,件のDは本物にこだわったようなんですね。
実際に雑誌に載る漫画に使われるものを撮りたいと。
ただしそれはDの頭の中でつくりあげたストーリーに沿ったもので
思い描いた画を撮るために現実をそっちに合わせろと。
3日間予定されていた収録では2日目以降,唐沢先生が
スーツアクターの人に取材し,その結果がキャラクターの成長に
つながった…という筋書きになっていたそうなのですが
わかんないから取材に行くのに,その先のことまで他人に決め付けられちゃ
仕事になんないって!

このディレクター,完全に勘違いしてるよな~
『プロフェッショナル』だって,井上雄彦先生の取材に
まる1年かけた結果,おばばの臨終に立ち会えたわけだし,
『情熱大陸』が芥川賞作家の川上未映子さんを取材したときなんか
たしか2月の雑誌に載せる小説を書くのに締切を5月くらいまで
オーバーしてましたよ。3日やそこらの取材でそんなストーリーの
完成した番組ができるわけないじゃん。

けど,実はこれまでの「作者のゲンバ」も皆この手で撮られてたりして。
過去の放送を思い出してみると…
『ナッちゃん』の作者・たなかじゅんは,漫画に出て来る機械を
 実際に模型をつくって実現可能か確認してから描く。
 キャラクターの顔を描くとき,集中力が続かないからと,
 目なら目だけ,鼻なら鼻だけを1話分続けてペン入れする。
『モテかわ★ハピネス』の作者・青木光恵は,
 街に出てかわいい女の子やそのファッションを観察するのが趣味。
『鈴木先生』の作者・武富健治は地域行事などにも熱心。
『真・異種格闘大戦』の相原コージは,連載にあたって
 A4で6ページにわたってびっしり書いた企画書を持ちこみ熱意で
 編集者を口説きおとした。武道を習ってリアルを追及。
  ※WEB連載のため,ここ で読めます。
『ナチュン』の作者・都留泰作は文化人類学者で,
 アシスタントなしで背景も全部自分でびっしりと描く。
『パギャル!』の作者・浜田ブリトニーは本当に住所不定のギャルなので
 カラオケボックスやマンガ喫茶、ファミリーレストランで原稿を描いてる。
『リングにかけろ2』の車田正美は,農道や山道で独自の歩行術「ジョ散歩」
 をして体を動かす。
武論尊は,『北斗の拳』の4兄弟の設定を,第1話ができあがったのを
見てから考えた。


どれがダウト?

それはさておき,こんな騒動というか話題が持ちあがると,
逆に取材を受けてみたくなりません?
芸能人なら誰しも一度は『情熱大陸』に出てみたいと
夢想するそうですが,一般人でもふと“脳内情熱大陸”の主人公に
なる瞬間があったりするのではないでしょうか。

その際,やっぱ,さっき書いたように,普通すぎる自分じゃつまんないと。
絶望先生の「過多書き(大袈裟な肩書き)」みたいに,
むしろフィクション入っていいから演出加えて面白くしてほしい。
第三者が何かしらの媒体で自分を紹介するとして,
想像もつかないフィルターがかかって
わけもわからない人物像を,これが自分(D.D.)だと
紹介されたらどんなだろう?

高校からの友人がバンドのボーカルをやってまして
大学時代(つまりアマチュア)に地元の新聞に載ったことが
あるんですね。そのとき彼はインタビューで言ってもいない
ことを書かれたといって怒ってましたけど,私は
「ボイストレーニングしてます」と書かれたことが
どう迷惑なのかぴんときませんでした。
だから,私の場合も,
実像とかけ離れたキャラクターで紹介されたとしても
第三者からみたらどうってことないかもしれません。

たとえば,1日12時間寝てるとか,10人の子持ちとか,
東大卒のニートだとか,性転換を2回したとか…。

あーあ,取材受けてぇ。(オチか?これ)


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※唐沢センセイ,今回の不快な取材でのやりとりをこの漫画でネタにすることで心のバランスを保つことができたとか。
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