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もう1つの足利事件…執行された「飯塚事件」久間三千年死刑囚

2009-08-09 16:22:19 | 政治・事件
「足利事件」でDNA鑑定の誤りが明らかとなり菅谷さんの無実が示された頃,同様の判決で死刑が確定し,再審請求目前で死刑が執行された人がいるという報道は読んでました。しかし,こうやってその事件自体をメインにしてじっくり取り上げてもらわないと,ただの1つの事件として記憶の底に埋もれてしまいますよね…。

テレビ朝日|ザ・スクープ(近日動画配信)
ザ・スクープスペシャル 第28弾
「“第二の足利事件”は国家権力による殺人か!?」

1992年、福岡県飯塚市で女児二人が殺害された。逮捕された久間三千年(みちとし)元死刑囚は
当初から無実を主張。しかし裁判所は自白も直接証拠も一切ないことを認定しながら、
「状況証拠の積み重ね」によって死刑判決を繰り返した。
ところが肝心の状況証拠についても専門家たちは次々と疑問の声を上げている。
詳細すぎる目撃情報、血液型特定への疑問。そして問題のDNA鑑定…。

番組では裁判で採用された状況証拠を独自に再検証。さらにDNAの再鑑定に
向けて動き出し、「死後再審」を目指す弁護団に密着する。



■目撃証言
・不審者(車)として多くの目撃証言が寄せられていたのは
 白い車,しかし,捜査側が注目したのは当日目撃された
 という紺のワゴン車。これにより久間氏が容疑を受ける。

・山中の曲がりくねった道で一瞬の間に通過しただけで
 止まっていた車の色やタイプだけでなく,
 ガラスにプライバシーフィルムが貼ってあった
 とか,後輪がダブルタイヤであった,そこにいた人物の
 服装までこと細かく証言されている。(しかも事件後17日の証言)
 ※検証した大学教授が同様の状況で45人に質問したところ
  同じように回答できた者はいなかった。

■血液型について
・福岡科警研では「B型かAB型」と判定
 科警研は「A型の反応が弱かったのでおそらくB型」
 →検察・判決はB型で認定
 ※法医学者「強弱を判定材料に含めてはいけない」

■DNA鑑定について
・細胞に含まれる染色体のある特定の部分で
 16塩基を1つの単位とし,それが何回繰り返すかで個人を特定する判定法。
 染色体は母親と父親から同じものを1本ずつ受け継ぐので
 2つの型の組み合わせがその個人の型となる。
 しかし,その何回かを数えるもの差しが塩基126個分という
 非常に大きいものであったため目分量で数えざるを得ず誤差が否定できない。

・久間氏は「16-26」と判定されたが,
 その後の新しいものさしでは,18ー29,18-30,18-31の
 いずれかに読み替えるとした。
 ※個人を特定するのに「3つのうちどれか」など有り得ない。
 ちなみに,足利事件の菅谷利和さんも当初「16-26」と判定された。

・久間氏のDNAは執行後遺族に送り返されてきた
 拘置中の私物・取調中の証拠資料の中から
 毛髪,電気カミソリのひげ,歯ブラシの口腔粘膜を採取し
 「飯塚事件」元死刑囚のDNA鑑定へ - 社会ニュース : nikkansports.com(2009年8月5日)
 判定が成された(死後再審請求前のため具体的数字は非公開)が
 犯人のものとされる残留血液は使い切られて残っていない。
 ※捜査規則186条に違反。
 ※法医学者「再検証できない材料での鑑定結果は証拠として
  信用度が1段,2段落ちる」

・試料を使い切ってしまったという科警研職員の証言
 「結果を出すことが一番だった」
 …当時はDNA捜査の実用化へ各国が競争しているような状況,
 警察庁と科警研も新規予算獲得へ動いており,
 足利事件やこの飯塚事件で華々しい成果を挙げることで
 世の中へのアピールに利用したと見る向きも。

■死刑執行について
麻生内閣初の死刑執行 福岡2女児誘拐殺害と福島母娘強殺の2死刑囚 - MSN産経ニュース
・確定から執行までは平均6年
 久間元死刑囚の場合,否認しているのに2年で執行
・再審請求の直前に執行
・足利事件DNA再鑑定決定の2週間後に執行
・森英介法務相就任わずか1か月に執行

「死刑執行命令書」にサインしまくり朝日新聞に「死に神」呼ばわりされた
鳩山弟元法相の言うように,刑が確定すれば速やかに
自動的に執行されるのが法治国家だといえなくもないですが,
事実上拒否権が与えられている法務大臣が,本人が一貫して
否認している件でサインするって,正直,何も考えてなかったんでしょう。
(森氏は取材や在任当時の質問に対し「個別の件には答えられない」と回答を拒否)
衆議院議員 森 英介(千葉11区選出)


法務省は死刑執行の日時決定や順番の基準について全く非公開ですが
再審請求中は執行しない ほか
重大事件の共犯が未確定,逃走中(そちらの裁判で証人になるから)
などの事情で決まるところはあるようです。
久間さんが「執行予定リスト」を作って「あと何人までは大丈夫」
と見積もっていた予想を大幅に裏切る結果となったわけですが
私も順番的におかしいと思いますし,
死刑の執行請求を行った(「死刑執行起案書」を取り下げなかった)
法務省サイド
も,足利・飯塚両事件が相次いでひっくり返り
DNA捜査の信頼が失墜するのを恐れてかけこみ執行し
もみ消し,風化を目論んだのでは
と疑われてもしかたないと思います。

番組内では鳥越さんが,これまでのテレビでは異例と言えるでしょう,
一審の陶山裁判長および2人の裁判官,
再審の小出裁判長および2人の裁判官,
そして最高裁の滝井裁判長はじめ5人の担当判事の名前をフリップで示し

良心の呵責はないのか訴えていました。

まあ,一審の判決理由は「個別の状況証拠は被告人の
有罪を証明できるものではないが総合的に検討すると
有罪と判断できる」というものだったそうですが,
個別の証拠を“常識で”検討していくと
「怪しきは罰する」結果になったのかどうか…

ていうか,そもそも怪しいと思うこと
すら妥当だったのか?
女児を車に乗せて連れ去り殺害したというのなら
被告人の車の車内に女児の毛髪とかもっと確実な証拠が
見つかるはずだったのでは。

先日,最初の裁判が行われた裁判員裁判
「起訴されたら刑事事件は99%有罪」の閉鎖的な司法の現状に
一般人の視点で風穴を空けるべく導入されたものであるわけですが
このような無罪か死刑かという裁判で,
「当時の最先端技術」に素人がツッコミを入れられるかどうか
厳しい話ですね…。

しかし,女児殺害というのは憎むべき凶悪犯罪ですが
 そもそも一審・二審・最高裁と死刑になるような事件だったのでしょうか?
 否認したから死刑になった?二審以降は量刑を争っている
 わけではないので無罪か死刑の二択しかなかった?)


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冤罪File (ファイル) 2009年 09月号 [雑誌]

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DNA鑑定―科学の名による冤罪

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DNA鑑定 -その能力と限界-

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3 コメント

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Unknown (しま)
2009-08-10 20:38:18
こんにちは、

小生も、この番組、偶然にも視聴することができました。

いつもいつも、この国の刑事裁判というのは全く同じパターンで、権力側に都合のいいように、自白があれば問答無用と有罪、たとえ自白がとれなくても、捜査側に有利な証拠を認めて有罪、つまりは、疑わしくは罰する、そのような国なのです。

しかし、番組の中での手紙のやり取りを見ていて、残された奥さんと子供さんのことを考えると、なんともやりきれない思いでいっぱいになってしまいました。

ところで、ご案内の「裁判員裁判」ですが、この制度はもともと冤罪をなくするために設計されたものではないのです。
役人が設計したものであれば、当然自分たちが不利になるような法改正など、さらさらするはずなどありません。

要するに、三権すべてを行政官僚どもが握っている、恐るべき〝野蛮国家〟なのだと、この国はそういう国なのだと、そう考える以外ありません。

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/10978.htm

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 近代法の思想を一言で言うと、「1000人の罪人を逃すとも、1人の無辜を刑するなかれ」ということにあります。
 権力の犠牲になって、無実の人が牢獄に送りこまれることだけは、何としてでも避けなければならない。権力の横暴を絶対に許してはならない。
みなさんもご承知の「疑わしきは罰せず」という原則も、ここから誕生したのです。
 つまり、検察側が勝利を収めるためには、犯罪を完璧に立証しなければならない。そこに少しでも疑問の余地があってはいけないし、ましてやデュー・プロセスの原則を踏み外してもいけない。検察側はパーフェクト・ゲームが求められているわけです。
 もちろんその結果、ジョンソンのような犯罪者が無罪になるかもしれない。しかし、その害より権力の害のほうが文句なく大きいと考えるのが、近代法の精神であり、デモクラシーの精神なのです。1人の犯罪者ができる悪事より、国家が行なう悪事のほうがずっとスケールも大きいのです。
小室直樹著「痛快!憲法学」(集英社インターナショナル)より引用
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権力を背中にしょっている連中が、権力を背景にして犯す罪はより重いのです。

たいへん失礼いたしました。
返信する
リンク先が間違えていました。 (しま)
2009-08-10 20:41:23
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/10978.html

申し訳ありません。
失礼いたしました。
返信する
”権力を背景にして犯す罪”,重いですね… (d_d-)
2009-08-25 23:17:00
しまさんコメントありがとうございます。

久間さんとそのご家族はほぼ間違いなく
真犯人を見つけるより手柄(番組中では「結果」と言われていました)をつくることばかりを考える連中,国の犠牲者だと思います。

裁判員制度についてですが,
> もともと冤罪をなくするために設計されたものではない
と言い出したらきりがないので,制度として始まった以上は国民が最良の活用をしていかなければならないと思っています。
ただ,
“権力を背中にしょっている連中が、権力を背景にして犯す罪”が罪にもならないのに裁判員の秘密漏洩ごときに罰則規定があるというのはバランスを欠いていることは否定するべくもなく(全員一致のアメリカの陪審員制度と違い多数決で決める裁判員制度では誰が何を言ったということは秘密として守られるべきだという大義名分はあるわけですけど),違法な手段で得た証拠は証拠能力無しということを徹底,冤罪につながる行為には罰則を適用,警察検察側の証拠隠滅にも厳しい対処を下せるようにしていかないといけませんね。
返信する

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