小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

食中毒と冷蔵庫

2020年08月23日 14時01分45秒 | 予防接種
台所の生ゴミがすぐに臭ってくる夏。
食中毒が心配になる季節でもあります。

こちらの記事に「“冷蔵庫に入れて安心”は危ない!」と注意喚起してありました。
なんだか心当たりのあることばっかり・・・ちょっと焦りますね。
一部を要約抜粋;

鶏肉とカンピロバクター:冷凍されることなく市場に出回っている国産鶏肉の多くが汚染されている。購入後に長時間外に出しておくと菌は増殖し、冷蔵しても菌は死なない。

生肉と大腸菌:生肉から感染する。生肉には食中毒菌が付着しているという前提で取り扱うべし。

卵とサルモネラ菌:卵の殻などに付着し比較的低い温度で発育するため、環境次第では冷蔵庫内で増える可能性あり。

カレーとウェルシュ菌:食品は加熱が重要であるが、加熱した後でも温かいまま冷蔵庫に入れてしまうと、カレーなどの粘度が高い食品は中心部の温度がなかなか下がらず温度ムラができるためウェルシュ菌が発生しやすくなる。

野菜とO-157、カンピロバクター:動物の糞は様々な菌を保有しているが、野菜は育てるときに肥料として動物の糞を使っている。野菜室の設定温度は冷蔵庫より高く、野菜に付着した土から雑菌が発生する恐れがあるので注意が必要。菌を広げないために新聞や袋に入れて保存すべし。

魚介類とアニサキス:近年増えてきた寄生虫による食中毒。流通システムの発達で、冷凍せずに家庭の食卓に並ぶ魚介類も増えたが、冷凍すれば死滅するはずの寄生虫や細菌が死滅しないまま食べてしまうことになる。魚の内臓に寄生していることが多いので、食べるときにはしっかり火を通す、細かく切るなどして十分に気をつけるべし。

・冷蔵庫は開閉の頻度を少なくし、長時間開けておくことも避ける。食材の表面温度が上がると結露ができ、細菌やカビが発生しやすくなる。保冷用の冷蔵庫カーテンを付けるのは効果的。

・食材の詰め込みすぎはいろんな意味でマイナスになるため、7割程度を心がける。冷蔵庫用温度計で確認するのも可。



<冷蔵庫NGアクション>

NG1.奥までぎっしり食材を入れている
→ 食材は手前に寄せ、7割収納を心がける

NG2.ドアポケットに卵を入れている
→ ほかの食品と接触を避けて庫内に収納

NG3.収納グッズを多用する
→ 収納グッズをまるごと定期的に洗うクセを付けよう

NG4.調味料や液だれ放置
→ 庫内は隅々まで清潔に

NG5.カレーを鍋ごと保存する
→ 保存袋に移し流水などで冷やした後、なるべく平らになるよう保存

最後に、食中毒菌一覧表を。
食べてから発症するまでのタイムラグ(潜伏期間)が結構長いものがあり、「昨日食べたものが原因」とは限らないことがわかります。



もうひとつ、こちらは食中毒のTV番組から;

□ チョイス 病気になったとき「食中毒」
(2018.8.24 NHK E-テレ)

・食中毒のリスクは、食品の色・形・味・ニオイでは判断できないことが多い。

・生の食材には菌がいると思って取り扱いには十分注意する。

卵の殻とサルモネラ:日本で流通するほとんどの卵は殻が洗浄・消毒されているのでほぼ安全(流通ルートから外れたものは危険)。ただし、1万〜3万個に1個程度の確率で殻の中が汚染されている卵がある。
 卵にしっかり火を通せば大丈夫。半熟だと?

・食中毒を疑ったときに受診する目安;
 おう吐が泊まらない、下痢が止まらない、血便が出る、口が渇いて尿が出ない。

・回復期に食事を再開するときはおかゆからがよい。

鶏肉とカンピロバクター:家畜の体内、特にニワトリに存在する細菌。食べて2〜3日後に胃腸炎(下痢・おう吐・発熱)を発症する。75℃×1分間以上の加熱で死滅する。“とりわさ”は危ない(ちなみに、牛と豚のレバーの生食は法律で禁止されている)。
 合併症としてギラン・バレー症候群がある。感染してから1〜3週間後に手足がしびれ、力が入らなくなる。頻度はカンピロバクター食中毒患者100〜1500人に1人程度。進行すると呼吸困難に陥ることもある。そのメカニズムは、カンピロバクターに対して作られた抗体が、自分自身の神経を攻撃して全身の神経に炎症が起きることによる。免疫グロブリン療法(点滴)、血漿浄化療法などで治療し、リハビリをして3ヶ月〜1年ほどで回復する。

家庭でできる食中毒予防
つけない:野菜はためた水で洗うのではなくボウルにざるを重ねて流水で洗う。肉を切るときはまな板の上に牛乳パックをはさみで切って広げた上で切るとよい。
増やさない:加熱したから安心、ではない。熱では死なない菌もいる。カレーが冷めるときの30〜40℃は繁殖しやすい。カレーは熱いうちに小分けにして氷水に付けて急速に冷まし、冷蔵庫で保存するのがよい。
やっつける:(一部のウェルシュ菌★などを除き)一般細菌は75℃×1分間以上の加熱で死滅する。中心まで熱が十分通ることを要確認。冷凍の肉を調理するときは解凍してからにすべし(電子レンジ・流水はOK、常温に長時間放置はNG)。
★ ウェルシュ菌は高温になると芽胞を形成して自分を守ることができる。大鍋でとろみのある料理(カレー、シチュー)は冷めるまで時間がかかるので危ない。

魚とヒスタミン中毒:サバ・マグロ・カジキなどにはヒスチジンという物質が多く含まれている。魚の鮮度が悪かったり、常温で長い時間放置するとヒスチジンが細菌により分解されてヒスタミンになり、大量にヒスタミンが含まれる魚を食べるとじんましん・皮膚のほてり・頭痛などのヒスタミン中毒症状が出る。通常は数時間〜1日で自然に回復するが、症状が強い場合(呼吸困難など)は病院を受診する必要がある。なお、ヒスタミンにはニオイがなく、加熱しても分解しない。海外ではチーズやハムの報告例もある。抗ヒスタミン薬の投与で改善する。
予防:鮮度の低下した魚は食べない、購入した魚はすぐに冷蔵庫へ。

アニサキスアレルギー:アニサキスは魚介類の主に内臓表面に寄生する生物。イカにもいる。ふつう、内臓は食べないことが多いが、魚の鮮度が落ちるとアニサキスは筋肉へ移動する傾向がある。アニサキスのいる魚を食べるとほとんどの場合はそのまま何事もなく胃を通り過ぎてしまうが、たまに胃の粘膜に潜り込むことがあり、その時は腹痛やおう吐が出ることがある。またその際に体の免疫系が反応してアニサキスに対する抗体を産生し、すると次にアニサキスを含む魚を食べたときにアレルギー症状が出るようになることがある。アニサキスは加熱で死滅する。抗ヒスタミン薬を常備し、強い症状(アナフィラキシー)が出たときのためにエピネフリン自己注射を処方してもらう。
刺身のアニサキス対策:冷凍(-20℃で24時間以上冷凍すると死滅する・・・家庭用では不十分)がお勧め。酢で締めても死なない。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 酸素と人体〜味方であり敵で... | トップ | 受動喫煙のリスク〜“三次喫煙... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

予防接種」カテゴリの最新記事