小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

過敏性腸症候群の原因は小腸内細菌増殖症?

2020年01月26日 16時05分12秒 | 糖質制限
NHK-BS「偉人たちの健康診断」という番組を時々見ます。
歴史上の人物の意外な一面を発見すると共に、現代医学の最先端を垣間見せてくれるところが興味深い。



彼は「断腸亭日乗」という42年間書き続けた日記を作品として残しています。
名作と耳にして過去に購入して手元にあります(未読)。

日記の内容は・・・日々のアレコレ(女性のファッションなどもあります)を書き綴った中に、戦争について見聞きしたことを毒のある批判的な筆致で綴っている箇所が目立ちます。
これを世間に公表すると、戦争中の当時は非国民として警察につかまること間違いなし。
そのため、書きためた原稿は靴箱の中に隠しておいたそうです。
生前に発表する気はさらさらなく、死後に発表して“戦争の愚かさを知る資料”として後世に残すことを目的にしていました。

さて、「断腸亭日乗」の中に時々登場する、荷風の胃腸症状(腹痛・下痢)。
でも、進行性の病気ではなさそうで、彼は79歳の長寿を全うしました(死因は肝硬変らしい)。
現代医学から見ると、彼の繰り返す胃腸症状は「過敏性腸症候群」の可能性大。

過敏性腸症候群のトピックスとして近年、その80%以上に「小腸内細菌増殖症」という病態が潜んでいることが判明し、これが原因ではないかと話題になっているそうです。
健康な状態でも小腸液には1万個/mLの細菌がいますが、小腸内細菌増殖症では10万個/mLに増えている。

・・・知りませんでした。
解説は腸の病気と食事に関する本をたくさん書いている江田 証(あかし)Dr.。
あれ、この先生、栃木県出身だ。
医院の外観も見たことあります。

さて、外国暮らしの経験のある荷風の朝食は洋風で、小腸内の細菌を増やす要素が多かったとの分析。
例えば、とある朝の食事内容;
・クロワッサン→ フルクタン(小麦由来の糖質)
・リンゴのコンフィチュール(ジャム)→ 果糖
・ショコラの中のミルク→ 乳糖
これらの発酵性糖類(FODMAP、フォドマップ)はすべて小腸内細菌のエサとなり、増加した細菌は多量のガスを発生して病状を悪化させるとのこと。
他にも、大豆などの豆類・キノコ類・ヨーグルト、タマネギ・ニンニクもよくないそうです。
これらの食材を避ける食事プログラムを3週間続けると約75%の患者に症状の改善がみられたとの報告あり(オーストラリア、モナシュ大学)。

ええっ? 豆類・キノコ類は糖質制限系には欠かせない食材なのに・・・。
過敏性腸症候群/小腸内細菌増殖症によい「低FODMAP食」と糖依存脱出の「糖質制限食」はかち合ってしまいそうですね。
困った!
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2 コメント

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はじめまして。 (りぼん)
2020-01-26 17:07:49
読者登録させていただいている りぼん と申します。
私も、以前、仕事をしている時に、過敏性腸症候群で、悩んでいました。
私の場合は、ストレスが原因みたいで、心療内科に通ううちに、過敏性腸症候群は良くなってきました。
薬の関係で、便秘になりやすいのと、骨粗しょう症予防のため、1年前から、朝食にヨーグルトを食べて、快調になったのですが・・・。
良いと思っていた、ヨーグルトやはちみつ、フルーツがダメだと、困ります。

まあ、色んな説があるということでしょうか・・・。
長文失礼しました。
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腸内細菌を味方に。 (管理人)
2020-01-27 06:44:04
はじめまして。
食事療法は古今東西、過去現在未来であまた存在し、何がよいのか不鮮明です。
その中でも医療者の私が肯けたのは「炭水化物(=糖質)制限」だけです。
オリゴ糖は人間は消化吸収できず、腸内細菌の善玉菌のエサになるのでお勧めです、と便秘患者に説明してきましたが・・・まあ、便秘によい食品は下痢にはよくないということになりますか。
今は、神饌や精進料理が栄養学的・健康にどう影響するのか、興味があります。
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