日課になっている午後の散歩で、6月に入って店に入らない場合はマスクを外して歩いている。
そうすると不思議なことに今まで感じなかった様々な情報が「鼻」から入ってくる。
それは「匂い」であったり「臭い」もあるが「香り」もあり、木々も人々も生きている証を発していると感じる瞬間である。
たまに散歩コースを伸ばして帰りがいつもより遅くなり17時を過ぎたころには、早い家では夕げの支度をしているのか、道を歩いていると味噌汁の匂いが漂ってくることがある。
昭和のころは電気釜などはなかったので、薪かガスでご飯を炊いていたし、魚を焼く煙が外まででていた。
なんとなく、そんな家庭は温かみを感じさせてくれるのだが、こんな光景をみると昔から伝承されている話を思い出す。
「高き屋にのぼりて見れば煙立つ民の竈賑わひにけり」と、ある説によれば「仁徳天皇作と誤伝されている歌」らしいが、近代になり、こんな風に紹介されている。
「仁徳天皇でよく知られるのは『民のかまど』の伝承である。高台から見渡すと家々から煙が上っておらず、『炊事もできないほど貧しいのか』と3年間、税を免除した。そのため宮殿は荒れ果て、衣も新調できなかったが、ようやくかまどの煙を見て、『民が富んでいるのは、自分も富んでいるのだ』と喜ばれた。」
前置きが長くなったが、こんな批判を浴びた世間知らずの男が釈明していた。
日銀総裁「家計が値上げを受け入れている」
— 小沢一郎(事務所) (@ozawa_jimusho) June 6, 2022
国民に直に聞いてみたか?妄想か?御自分の家計を基準にしているのか?国民生活の厳しさ、現在の物価高騰の家計への影響を理解もできない人物に、日銀総裁など務まる訳がない。言い訳と自己正当化。いい加減、出口戦略の説明を。https://t.co/C51wjpDipI
珍しい「民の竈」という言葉を使った社説が目についた。
「日銀総裁発言 『民の竈』が見えぬのか」
・・・日銀は約一万社の企業から業況を聞き取る企業短期経済観測調査(短観)をはじめ、さまざまな調査を実施し、景気の実態を把握して金融政策を行っている。ただ、経済統計の結果が国民の生活実感と乖離(かいり)することはあり得る。黒田氏はその可能性をまったく念頭に置いていないのだろう。 黒田氏は七日の参院財政金融委員会で、自らの値上げ許容発言について「強調しすぎたかもしれない」と釈明したが、撤回したわけではない。 黒田氏はまず小売店に自ら出向いて人々の話を直接聞くべきだ。その上で、自らの発言が的を射ていたか、深く考えてほしい。 |
日本人の平均年収は403万円。いっぽう、2021年度の黒田総裁の年収は3501万円とまさに「天と地」の違いがあり、一度でも夫婦でスーパーに行き買い物を経験したのならば「民の竈」の一端でも垣間見ることができたのかもしれないが、残念ながら、2023年4月8日が任期満了なのでわずか10年間の任期で4500万円の退職金をもらう黒田東彦総裁は永遠に「民の生活」と無縁の「上級国民」として余生を過ごすことであろう。
さて、話を「一般国民」に関することに戻すと、首相主導の予算編成や政策決定を実現するため2001年に小泉純一郎政権が初めて作成した「骨太の方針」。
予算編成などの細部には立ち入らないものの、世論の一時的な批判には揺るがない国政のしっかりした改革方向を示すとの意が込められているといわれているので「骨太」と言われているが、政府が「閣議決定」しただけで独り歩きしてしまうという国民離れした方針である。
「防衛費や子ども関連費倍増も 財源検討は参院選後に先送り 政府が「骨太方針」閣議決定」
【東京新聞より】
岸田文雄のいうところの「新しい資本主義」の柱だったはずの「分配」の文字は消え、さらには富裕層の金融所得への課税もいつのまにかいなくなり、「所得倍増」どころか「資産所得倍増プラン」などという国民のタンス貯金を株に回せという。
そして、防衛費費は安倍晋三の圧力に屈し「5年以内に抜本的に強化する」というのだが、さすがに自民党内からも「やりすぎ」という声が出始末。
おまけに驚くことに、これまで「可能な限り依存度を低減しつつ、安全最優先の原発再稼働を進める」としていた原発については、「最大限活用」と明記し全面的な原発再稼働に舵を切ってしまった。
すでに新聞・TVメディアを通じて今年の電力不足が喧伝されとくに「夏の節電」を煽り始めている。
どうやら「スカスカ」の骨太方針に成り下がっている。
日本政府は20年以上も「#骨太の方針」と言っている。それで結果はどうなのか?
— 鈴木傾城 (@keiseisuzuki) June 7, 2022
方針だけは骨太。
中身は骨粗鬆症。
約束は骨抜き。
実行したら骨折。
結果は骨折り損。
国民は燃え尽きて真っ白な灰に……。
骨太の方針 をやればやるほど国民は困窮化している。もう限界だ。https://t.co/tc4jzG7li8
ところで、朝日新聞社の言論サイト「論座」の寄稿者で、米国在住の作家、ジャーナリストの冷泉彰彦が、「現在の日本が選択しなくてはならないのは、具体的な政策であり、1)国家債務、2)エネルギー、3)産業構造、4)人口動態、5)地方の問題、6)時間軸、この6つ」だと提起していた。
「岸田政権に“丸投げ”では日本沈没。参院選前に直視すべき6つの大問題」
■国政選挙を前にして、国の方向性の議論から逃げるな 1)の国家債務ですが、現在の与野党においてはこの問題への危機感が薄れています。MMT(新しい財政理論)などの影響が入ってきていること、また「財務省主導の財政規律主義」が飽きられたことなどが原因だと思いますが、とにかくコロナ対策を口実に湯水のように歳出が垂れ流しになっています。 国家債務については、そんなに怖くないという考え方もあります。例えば、日本の国家債務は個人金融資産と相殺になっているので、国としてのデフォルト(債務不履行)になる危険はないとか、日本の財政規模は巨大なのでIMFとしては救済行動イコールIMFの破綻になる、従って日本の財政は「世界共通の利害として潰せない」というような楽観論もあります。 いずれも全く間違いではありません。ですが、このままダラダラ財政赤字を拡大するだけですと、現在起きているような「緩慢だが止まらない円安」という形で、国の価値がどんどん縮小するということはあり得ます。そして、ある時点からは、制御ができなくなり、気が付いたらハイパーインフレになっていたというシナリオは十分にあり得ます。 そんな中で、コロナ対策そして軍拡と、大規模な歳出を続けるのは、やはり危険であると思います。日本は、個人金融資産の多くが高齢者の生活資金になっています。従って、リスクを取らない種類のカネであり、ベンチャー投資などへの原資はほとんどありません。カネがないので、最先端産業が育たないというのは、90年代から始まっており、現在は非常に厳しい状況です。ですから、前向きだがリスクのある話には公的資金を入れて行かないといけないというのは事実だと思います。 それもやるが、コロナ対策のバラマキもやる、そして軍拡もやるということでは、例えばですが中国との競争ということで考えると、戦わずに破綻というところに追い詰められる危険があります。レーガンは、ソ連を軍拡競争に「誘き出し」て最後は破綻させることに成功しましたが、今、日本が軍拡競争に参加した場合に、破綻するのは日本の方です。この点も含めて、財政の問題というのは厳しい議論が必要と思います。 次に2)のエネルギーですが、この円安とウクライナ戦争の中で化石燃料の輸入は量的にも価格面でも厳しい状況が続くのであれば、日本経済は早晩行き詰まります。かといって、排出ガスに関して「苦しいので石炭など化石燃料を許してくれ」などと山本太郎のようなことを言っても、国際社会は許してくれないでしょう。 ここは安全性の高い順に、原発を稼働するという一手だと思います。ドイツの愚かな判断を教訓として、安全性の高い炉を動かすことで、時間を買う、この判断を現役世代を中心に進めて行かないと、日本経済は突然死することもあり得ます。 続いて3)産業構造の問題です。まず、EV(電気自動車)について国策としてどう向かい合うかという点があります。2)のエネルギーと表裏一体の問題ですが、いくら性能の良いEVを作っても車の製造過程が化石燃料まみれでは、世界に対して販売はできなくなります。 |
「エネルギー」問題で、岸田文雄内閣の骨太の方針のように「安全性の高い順に、原発を稼働するという一手」という「悪手」以外はおおむね反対はできないのだが、最大の問題は参院選前までに野党がはたしてどこまで直視して争点化できるかということであり、現在の「野党第一党」にはその気が全くないことが国民にとって最大の不幸ではないだろうか、とオジサンは思う。