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新・定年オジサンのつぶやき

残された日々をこの世の矛盾に対して勝手につぶやきます。
孫たちの将来に禍根を残さないよう、よき日本を「取り戻したい」。

トランプの幼稚な“関税遊戯と地政学的音痴ぶり

2025年04月24日 13時42分20秒 | トランプ外交

約1週間ほどネットやPCから遠ざかっていた生活をしていたので、この間の出来事のまとめをしてみた。
 
やはり的確な分析はこの御仁に頼るしかない。
 
月3週の動き
 

赤沢経済再生担当相の訪米と、為替
「格下の格下」発言で男を下げた赤沢氏、日本は米国の傀儡であるとでも言いたかったのか? 交渉相手として外交上、確かに格というものは存在しますが、石破首相の全権委任であれば、赤沢氏は国の代表です。「会っていただいた」なんていう外交官は、その時点で失格。「いうべきことは言ったから問題ない」と強弁しますが、トランプ氏の横に立って記念撮影など、すべてが格下の遜り感しかなく、異常な外交です。
そして訪米時の会見で「こういうと手口が明らかになりますが、防衛の話はしました」と語りました。そしてトランプ大統領は「大きな進展」と投稿した。このことからみて、恐らく赤沢氏は円高誘導について容認する発言を行った、とみられます。むしろそれをトランプ氏の興味をひき続ける、日本側が今回の訪米で準備した手土産だったのでしょう。しかしそれは金利差縮小に伴うものであり、政府マターであってはいけない。日銀の独立性という観点から、トランプ氏に口止めすることも忘れなかったのでしょう。
赤沢氏は帰国してから「米国から要請あれば、加藤財務相が為替協議」という形で、為替が議題になったことを暗にふれています。日本は円高にしろゆっくりすすめたい、しかし成果を焦るトランプ氏はそれを許さない。加藤氏が24日以後に話し合うのはそういうことです。恐らくそれに基づき、5/1の日銀政策決定会合では、金利をどこまで上げるか? が決まります。3月の消費者物価は3.2%で、利上げを後押しする。悪いインフレだから、いつまでも金利を低く抑えていてよいのか? そういった議論にもなってきます。
日銀の理屈はずっとぐらぐらで、1ヶ月で態度、発言がころころ変わります。賃上げ率は今年も高く、来年になると落ちるとみられ、今年でないとその理屈は使えません。トランプ関税の不透明感とて、今は不透明ではなく透明です。企業業績に確実にダメージがありますが、それを吸収できる、とする理屈を立てれば利上げできる。実際はどうであれ、今の日銀はほとんど政府の傀儡で、政府からの要請があれば、あとは事務方がそれに基づく会見時のシナリオを考えるだけです。利上げして円高、が至上命題となればそうします。
 
石破政権の交渉材料
関税取り下げ協議、という政府発信をそのまま報じるメディアもありますが、日本から報復措置や代わりの貿易条件などを提示していないので、取り下げるとしたら別の面で大きな譲歩を迫られる、ということ。恐らく今回は、トランプ氏が問題と考える項目を、一方的に聞いてくるだけだったのでしょう。まさに『格下』の閣僚が、丁稚のように御用聞きにうかがった、写真から発言から、そんな雰囲気がにじみます。
そして『最優先』の交渉相手としてくれた、トランプ氏への手土産が「円高」だった。ではそのカードを切って、残りの交渉材料は何か? 安倍政権時代から、自民党がさしだすのは常に軍備です。なぜなら政治マターですぐ動かせるから。恐らく円高と、防衛装備品などを大人買いし、それこそ日本の兵器はすべて米製となるのかもしれません。でもそれだけしても、自動車関税を見直すには、まだまだ不足するのが現状です。
今回は、相手の言い分を聞いてくる、が主眼だったのでしょう。しかし本来これは、事務方の仕事です。しかし米国が赤沢氏を受け入れたのは、トランプ氏は「中国は交渉したがっている」としますが、トランプ氏の癖で、こういうときはなしのつぶてです。中国は交渉にのる気はない。ASEANに手を伸ばして、米国を孤立化する戦略にでています。米中関税戦争が世界に拡大した今、明らかに中国の方が分があるからです。
日本が材料にできるとしたら、まさにここでしょう。しかしそれはいち早く日米で交渉をまとめ、米国の手柄にすることではない。中国との比較、対中包囲網としての日本の立ち位置を主張し、逆に米国に関税をかけられたら、日本は中国に接近するしかない、とするのです。しかし恐らく、石破政権はそうしないし、できないでしょう。都議選や参院選を控え、早く交渉をまとめたい誘惑にかられます。それは親米主義者の歓心を買うことにつながるから。まさに赤沢氏のように誇りを捨て、媚びへつらう様をみせつけ、それで喜ぶ人たちに支持され、自民党は選挙に勝利したい。今回の交渉からもそんな思惑しか感じられません。
 
大阪万博は成功?
橋下大阪元府知事など、どやっていますが、正直何を喜んでいるのか? というレベルです。まず「関係者をふくめ50万人」という報道です。関係者? 意味が分かりません。従業員や、メディア関係者などの入場料を払わない人も含まれるのか? 大体、番組のロケなら少なく見積もっても20人ぐらいは一つの番組で来るでしょう。ニュースの現地報道だって5人はいるはずです。最初はそうしたものがかなりの数に上ります。
そして問題はインフルエンサーです。新規性を求めるYouTuberをはじめ、みんなが知らない情報をいち早く…と考える人は多い。そしてもう一つは、ステマです。お金をもらって大阪万博をネットでPRするため、入場する人もいます。別に大阪府で雇わずとも、こういうものに金をだす人は五万といます。N党の立花氏とて、スポンサーがいるから成り立っているのであり、彼らの活動をネットに上げる人たちも雇われています。同じように、万博を成功に導きたい層がいて、お金をだしていることは十分に考えられることでしょう。
真に面白いコンテンツなら、二度、三度と通いたくなります。そういうコンテンツかどうか? というのはそれこそ一、二ヶ月経ってからわかることです。一度で十分、と思う人が多ければ、そのころには入場者数は底這いし、逆に閑散とした風景をネットに上げる人が増えるでしょう。多額の予算をかけたコンテンツが、ごみになっているのが面白いからです。そしてそのころには、スポンサーも消えているはずです。
堀江氏など、万博を批判する人を攻撃しますが、彼はまさにそうした「スポンサー」の側にいる人です。彼の宇宙事業など、スポンサーがいないと成り立たず、お金をだす側を重視する。だからそちら寄りの判断をしがちです。少なくとも、万博を利用して利を得よう、と考える層の初動が今です。今回はバックにIR事業者もいるので、よほど気を付けないといけません。何しろIR事業の成否すら、万博のそれにかかっているのですから、広告宣伝費をつかってでも万博をよく見せたい、との動きが裏では必ずお起きているのですから。
 
フジテレビに株主提案
役員クラスを総取り換え、といった提案を大株主であるダルトンがしました。しかし随分と癖のある人選で、ダルトンがフジテレビのためにした、という感じではありません。会長候補とされたSBIの北尾会長など、ライブドアがフジテレビを買収しようとしたとき、フジテレビのホワイトナイトになったことを「唯一の失敗」と述べましたが、あなたの失敗はもっと別のところでしょう? とツッコミたくなったほどです。
ダルトンの思惑は、恐らくフジテレビを傀儡とする…とまでは言えないかもしれませんが、不動産事業の売却などで、一時的に収益をふくらませて利を得る、といったところでしょう。長期投資を主眼とするところですが、落ち込んでいく日本のメディア業界で、経営陣を刷新したところで大きなリターンは見込めません。
しかし切り離せ、という不動産事業を自分たちが握れれば、それは大きな利になる。メディア事業は外国人が経営に口をだせませんが、不動産事業ならちがう。むしろ、ダルトンに選任された取締役なら、そうした判断に手を貸すでしょう。ある意味、今やメディア事業よりそうしたメディア以外の事業が評価されてきたフジテレビだけに、虎の子を手放すことになりますが、それをしてでもメディアを経営してみたい、という層が今回、手を挙げたとみられ、そこにも大きな問題がありそうです。結局、フジテレビは日枝氏を追いだした後でも、寄生する層からて甘い汁を吸われ続けないといけない展開になっていきそうです。
以前なら、フジテレビは政治と癒着し、それこそライブドアの買収を退けることに成功しましたが、今やその後ろ盾もおらず、最近では中国系のアニメを流すことから、中国を敵視する似非保守層からの反発も招いています。未だに新たなセクハラ報道が止まず、まさにコネの切れ目が支援の切れ目となっている。深夜番組は再放送ばかりで、ゴールデンでさえ焼き直しになってきた。昔のアナログ放送では、VHFとUHFに分かれ、全国放送のVHFと地方局のUHFとされ、UHFは格下とされましたが、今のフジテレビはまさにUHF枠に入ったかのようです。東京のキー局ではなく、東京の地方局として生き残るのかもしれません。
 
消費税議論と、財務省解体の動き
政治の世界では、国民民主の「手取りを上げる」から、減税議論の流れが活発化しています。そんな中、Nスぺが『未完のバトン』として国債発行の危うさを報じました。財務省がカウンターとして番組制作を指示した可能性が高い一方で、これは別に何の不思議もない話です。日本の高い国債依存率を考えれば、日本国債が揺らいだとて何の不思議もない。今日は少し、日本の現状について考えてみたいと思います。
財務省解体を叫ぶ人の中に「財政破綻はしない」と述べる人がいます。この前亡くなった森永氏がやり過ぎた側面もありますが、私も破綻はしないと考えます。いくら国債を発行しても、日銀や国内の金融機関に買い支えさせればいいのですから。でも円は暴落します。それは通貨をそれだけ大量に発行するからで、いずれにしろ破綻状態です。破綻しない、と国民生活は安泰、というのは大きな乖離がある話なのです。
もう一つ「緊縮財政だ」という人もいます。これも誤りです。正確には、日本経済はずっと縮退を続けており、本来は財政を縮小していく必要があったのです。しかし政治的にそれは容認されず、いつのころからか補正予算を組むことが当たり前となり、その補正予算で嵩上げされたGDPで現状維持を謳い、また安倍政権になってからはGDPの計算方法を変える、などしてごまかしてきたのです。税収が減らなかったのは、海外経済が好調で、企業がそこで稼ぎだしてきたから。しかし企業は海外の収益を国内に還元せず、国内経済はずっと縮退してきた。それがデフレであり、日本は経済規模に合わせた財政を組まなければいけなかった。
しかし補正もそうですが、国債に頼った経済なので、それを繰り返せば償還費用がかかります。つまり過去、大盤振る舞いされたツケを払う段になったら、必然に財政は緊縮にならざるを得なかったのです。国債をつかうのなら、経済が成長する方につかわなければいけないのに、一過性のバラマキやら、補助金やら、そんなことに使ってきたから、ツケ払いをするときはその分、財政を圧迫することになります。つまり「緊縮財政だ」はある意味で正解ですが、それは過去のツケがあるからで、財務省の責任か? は疑問があります。
政治には常に『バラマキしたい』誘惑があります。それはそう主張すれば国民の歓心を買い、議席を増やせるからです。公明が今、給付金を言い出したのもそれでしょう。しかし本当にそれが、日本のためになるのか? という視点が重要です。例えば国民民主の「手取りを増やす」も、それが富裕層の減税率を上げて、結果的に歳入減となるなら 税が富を均すという効果を棄損し、結果的に生活が苦しい層をさらに苦しめることになります。税は簡素に、かつ富を均衡にする仕組みを維持し、正しく運用されなければいけません。
今は政治に「バラマキしたい」欲求が高く、それに対抗する勢力がいないと、必ず後に大きな問題がでる。そのために財務省があります。今は税をとり過ぎている、と感じるのは私も同様ですが、財務省を解体したとて、うまくいくはずもないのです。逆に政治のブレーキ役がなくなれば、日本にとって不幸ともなるでしょう。私は正しい政治が、正しく財務省をコントロールできることが大切だ、と考えており、今は官僚の人事権を内閣がにぎっているので、本来はできるはずなのですが、自民党ではそれができないことが問題です。
できない、というかしたくない。自民、財務省、財界、メディアといった層が組んで、財政を食いものにしてきたのがこれまでです。本来、国民に還元すべきもの、成長に資する投資が必要なのにそれをせず、だから日本経済は縮退し、一部の人間にのみ富が集中してきた。元自民の重鎮、古賀氏の息子が携わるコンサル会社が、空港ビルに関与していた事件など、まさに氷山の一角です。パソナ会長を辞任する南部氏も、国の仕事を優先的に受注するなど恩恵をうけてきた。自民とかかわる人物らが国を食いものにしてきたのです。
今、インフレで税収増や国の歳出入が好転、といったことを報じる向きもありますが、インフレ初期にはこうしたことがよく起こります。インフレによる人件費や事業費の増加など、遅効性があるからで、地方では公共工事の応札不調も起きています。国がインフレに見合う支出にしていないから、こうしたことが起こる。でもこれを続けたら、民間事業者が疲弊します。結果、インフレがもたらす効果は相殺されるのです。経済が縮退するのに、インフレになった今はかなり問題があり、今後はその逆効果がでてくるでしょう。
はっきり言って、財務省解体を訴える前に、自民党とそこに巣食う連中を一掃しないと、この国はますます彼らの食いものにされるだけです。むしろ財務省解体を訴えるのは、そうした連中に扇動されているのでは? とすら勘ぐれます。つまり自分たちの利益を最大化するためには、財務省がない方がよいのであって、まさにブレーキの壊れた財政となれば、自分たちの思い通りの国にできる、との思惑がにじむようです。
なので個人的には財務省を解体するのではなく、先に述べたように『正しい政治が、正しく財務省をコントロールする仕組み」が大切だと考えています。そして真の成長投資により、縮退する国から成長する国に変え、その成長を国民に還元していく仕組みをつくらないといけません。でもそのとき、まず先にすべきはこれまでのバラマキのツケを、きちんと清算する仕組みでしょう。無利子国債なのか、いずれにしろ大胆なことを考え、それを実行できる強い内閣が、国の財政事情を改善しながら、でないとそれこそ円にクラッシュが起きてしまいます。まさに今、財務省を解体したら為替相場に大きな変調が起きることは確実なのです。政策は順番を間違えても失敗する。今は近視眼的ではなく、遠謀も含めて考えないといけない時期です。

 
肩肘張らないこんなコラムは大変わかりやすい。
 
給付も減税も
 
      
トランプ関税による国内への影響を懸念して、なにやら石破政府が国民1人につき3~5万円を給付するといい始めた。内閣支持率が低迷するなかで、これは誰がどう見たって夏の参院選対策であるが、配らないよりも配るにこしたことはない。みなが物価高でヒーヒーいっている折、どうせなら公明党案の1人10万円でお願いしたいところである。それでも消費税なり物価高で吸い上げられてきた額には到底及ばないし、少しは家計の足しになる程度なのだ。
 少数与党になった自民党にとって、仮に夏の参院選で惨敗でもしようものなら、政権基盤は今以上にぐらつくことになる。世間の風当たりが強いことを自覚しているからなのか、冷ややかな視線に彼らは焦っているのである。なにかご機嫌とりをしなければ――と。国民の暮らしを心配して給付に乗り出すのではなく、自分たちの議席の心配をして給付するわけで、動機としては転倒しているしふざけてもいるが、もらう側としては一時的なものであっても配らないよりは配るほうがよい。投票をどうするかは別として、おおいにばらまいてご機嫌をとりにきなさいと思うのだ。有権者が大切にされるのはいつも選挙の前だけである。考えようによっては、これまで吸い上げてきた国民のカネを家計に戻すというだけであり、もともとはわたしたちのカネなのだ。
 この5万円給付を巡って、一方では「給付ではなく減税をすべき」という議論があり、「給付か? 減税か?」の二者択一を政治家どもが真顔で討論しているではないか。もともと対立する話でもないのに、給付と減税のいずれかしか選択できないような議論をくり広げているのだ。どちらかに限定する必要などないし、給付と減税を両方とも実施すればいいだけである。

 「消費税なんてとっとと廃止してしまえ!」という主張は、この物価高のなかで突飛なものではなくなっている。ただでさえ商品が高騰しているのに、そこに1割も上乗せして税金でもっていかれると誰しも頭にくるものだ。スーパーに行くと以前の3000円感覚が5000円に、5000円感覚が8000円というように、レジで「えっ?」となる日々である。たかだか5万円をもらったところで、埋め合わせにもならない。恒久的な減税策も同時に実施しなければ国民生活の底上げにはならず、負担感の軽減にはなり得ない。ガソリンにしても世界的には石油の取引価格は落ちついてきているのに高止まりし続け、そこにいくつもの税金が課せられてリッター170~180円台のままだ。四半世紀前にリッター80円台だったのが信じられないくらい跳ね上がっている。社会保険料その他も含めた潜在的国民負担率はいまや50%をこえ、収入の半分が税金として持っていかれるのだから、搾取し過ぎである。江戸時代中期の国民負担率がおおむね29%だったというから、現代のほうがはるかに年貢奴隷化しているといえる。
 それにしても、首相になる前は裏金問題や統一教会問題等々でも身内に対して辛口のコメントを発していた石破茂も、首相になるとたちまち口を閉ざして、石橋を叩いて渡るように政権維持に汲々としているではないか。「結局、首相になりたかっただけじゃん」と床屋で店主が呆れていたが、誰が首相になっても旧態依然として、何も変わらないのが日本の政治風景である。
 石破茂は自民党の1年生議員たちに10万円の商品券を配っていた。この際、国民にも同額を配るというか、返すべきである。そしたら、ちょっとは投票先について検討の余地を残す有権者もいるのかもしれない。


 
まあ残念ながらこんなアドバイスは石破茂には届きそうもない。
 
ところで、国民の中にはまだまだ嫌中派は少なくはないが存在しているかもしれないが、最近の度を越えたトランプの振舞いを見ればもはや「親米派」の連中も「嫌米派」に転向するかもしれない。
 
トランプは“ケツを舐めにやってきた犬ポチ日本”に超ご機嫌。逆に“ケツを蹴り飛ばした中国”が準備する『4つの戦略4』
 
相互関税を巡り、公の場で口にするのも憚られる「汚い言葉」で各国の指導者たちを侮辱したトランプ氏。そんな合衆国大統領に日中両国が見せた姿勢は、あまりに異なるものでした。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野孟さんが、いの一番にアメリカへと馳せ参じた日本と、立体的かつ長期的な視点で対応する中国との差を紹介。さらに中国側が「トランプの馬鹿さ加減」に対して用意周到に準備した4つの戦略を詳しく解説しています。
■ンプのケツを舐めに行く日本、そのケツを蹴り飛ばす中国
トランプ米大統領は4月9日、中国以外の国々に対する相互関税の適用を90日間延期することを発表した際に、この措置が決して一歩後退ではないことを強調したかったのだろうが、次のように述べた。
■トランプが口にした「ass」という言葉自体の穢らわしさ
I’m telling you these countries are calling us up, kissing my ass. They are dying to make a deal. “Please, please sir, make a deal, I will do anything, I will do anything sir”

(本当のことを言うけど、これらの国々は我々に電話してきて、私のケツにキスしたがっているんだ。奴らは取引したくて仕方がないんだ。「お願いです、お願いですよ、旦那様。取引して下さい。私は何でもします、何でもしますから、旦那様」と)
私の乏しい英語知識の限りでは、尻あるいは臀部の正式というか生物学的な用語としてはbuttocksがある。米国では短縮形のbuttが尻とかケツとかの意味で使われ、また外形的に見た場合の腰骨の辺りの盛り上がりを指す場合はhipsも使われる。
しかしassというのはちょっと次元が異なる下品な言葉遣いで、それ自体で「ケツの穴=肛門」という意味もある。assholeという表現もあるので、assがイコール肛門という訳でもないらしいが、いずれにせよ、最悪の場合「肛門を舐める」と訳さなければならないような常軌を逸した言葉遣いだということである。
歴代の米国大統領のみならず、全世界の史上数々のトップリーダーで、公式の場においてこれほどまでに汚らしい言葉で他国の指導者たちを一括して侮辱した者は、多分、いなかっただろう。
■他国に先駆けて「ケツを舐めに」馳せ参じた日本
このような言葉遣いによってトランプは、米国にとってもはや同盟国とか友好国とか近隣国とかの特に尊重すべき国など存在せず、すべては冷酷な取り引き(ディール)で脅迫し屈服させ利益を奪い取るべき「敵対国」であると宣言しているに等しい。   
カナダに「米国の51番目の州になれ」と求めたトランプの無礼に対して、ロバート・ボスウェル=トロント大学教授が「同盟国を脅す国は定義上、もはや同盟国ではない。これは国家の自尊心の問題だ」と言った(3月25日付日経)。極めて正当な反応で、同国の新首相=マーク・カーニーも同様の考えに立って「米帝国がその上に築かれてきた80年の歴史をもつ〔自由貿易体制という〕経済秩序は、はっきり言って、終わった」と宣告した(4月19日付NYタイムズ)。
ボスウェルが言うように、今後カナダは「米国市場への依存を減らすためにあらゆる努力を払う」ことになるだろう。
正反対を突き進むのが日本で、石破茂首相は側近の赤澤亮正=経済再生相を急ぎワシントンに派遣した。赤澤は4月17日にトランプを表敬訪問した後、ベッセント財務長官らと会談した。その具体的な中身は明らかにされていないが、想像するに、過去のパターンを踏襲して、米国産のコメの輸入を増やすので日本の自動車への高額関税については勘弁してほしいとか、要りもしない米国製の兵器を買い増すつもりだとか、何枚かのカードを切ったのだろう。
■我慢比べの持久戦に持ち込んで絶対に負けないことを目指す中国
日本がトランプに急いで擦り寄って目先の災難を切り抜けようとする軟弱姿勢であるのに対し、カナダは原理原則を立てて毅然と対応している。そのカナダよりもさらに用意周到に準備された戦略に沿って慌てず騒がずの態度を示しているのは中国である。その戦略とは次の4点である。
第1に、トランプの脅迫作戦には決して乗らず、「脅しの下では交渉せず」の姿勢を貫く。トランプは盛んに「電話をしてこいよ」と誘いかけるが、断固としてこちらから掛けることはしない。但し、トランプ個人を非難することは慎重に回避し、いざというときに直通で話ができる余地は残しておく。
当然、何をするか分からないトランプのことであるから、最悪の被害が、しかも長期にわたって続くこともあり得るけれども、それは最初から覚悟の上で「我慢比べの持久戦に持ち込んで絶対に負けないことを目指す」のである。
持久戦論は、毛沢東が抗日戦争を指揮するに当たっての戦略の軸とした考え方である。
最初は強大な日本帝国主義が戦略的に優勢を占め中国は守勢に追い込まれるが、長引くにつれ日本の脆弱性が露呈され、その中で中国が反攻準備を開始し、やがて機を捉えて中国が戦略的に反攻に出て日本は退却に追い込まれる。
この1.と2.の段階では、「もうダメだ」と戦いを諦める「亡国」論や、「すぐに決戦に打って出よう」とする冒険的な「速勝」論のどちらにも傾くことなく、持久戦を戦い抜かなければならないとした。
抗日戦が始まって1年後の1938年5~6月に延安で行った講演で、その前年の『実践論・矛盾論』と共に中国における政治・軍事の初級教科書の双璧。その『持久戦論』が「いま中国でバカ売れ」と米ワシントン・ポスト紙が書いてクーリエ・ジャポンが翻訳紹介したのは2019年1月のことである。
つまり、米国からいかなる攻撃を仕掛けられようとも、相手が脆弱性を曝け出して自滅していくまで耐え抜くのだという国民的意思統一はその頃から始まっていたのである。
● 1938年出版「毛沢東の教え」の復刊版がバカ売れ中 米中貿易戦争、中国のバイブルは“抗日戦争”を勝利に導いた『持久戦論』(クーリエ・ジャポン)
また中国は、貿易総額の中に占める米国の割合を2017年の14.2%から24年の11.1%まで減らし、ほぼその分を東南アジア向けにシフトしている。さらに米国国債保有国として日本に次ぐ第2位の中国が、対米報復関税の実施と並行して少しずつ売却し始めているのではないかとの憶測が金融界に広がっていて、4月7日には30年物、10年物を中心に活発な売りが出て利回りが急上昇した。
全て、用意周到に組まれている。「亡国」屈服でもなく「速勝」冒険でもなく、「持久」雌伏して機を窺うのである。
■すでに習近平に一本取られてしまっているトランプ
第2に、トランプが10%から始まって34、54、125、145%と、日替わりのように口先だけで税率を吊り上げた上に、一転、その追加関税分の実施を90日間延期してみたり、一人ジタバタしているのに対し、中国は125%に達したところで一方的に「はい、もはやこれまでとしましょう」と言ってそれ以上の吊り上げ競争に応じないことを宣言した。これは賢明な態度で、100%を大きく超える関税など実際には意味がないことは分かり切っている。
しかも面白いことに、中国は実は、その言葉の通り、4月10日から米国からの輸入品に対して125%の関税を賦課し始めている。ところが米国の方は、大統領の言うことが日替わりすることも禍して現場の態勢が追いつかず、一文の積み増し関税も徴収できていない。中国は無言実行、米国は有言不実行で、すでにこの段階でトランプは一本取られてしまっている。
第3に、中国は問題を2国間関係のディールに押し込めておくことの愚を悟っていて、これを世界大の外交展開に結びつけて米国の孤立化を図ろうとしている。
(1)4月11日にはスペインの社会労働党政権を率いるペドロ・サンチェス首相が過去2年間で3度目の訪中で習近平主席、李強首相と会談、スペインが仲立ちしてEUと中国の関係強化に努めること、中国の自動車及び同部品メーカーのスペイン投資を促すことなどを話し合った。ベッセント米財務長官はテレビでこれを「スペインの自殺行為」と苛立ちを露わにした。
(2)習近平は4月14日から17日まで、ベトナム、マレーシア、カンボジアを歴訪、各国トップと「自由経済態勢とサプライチェーンの安定を共同で守ろう」「包容的なアジアの価値観で弱肉強食ルールに対抗したい」などと話し合った。とりわけ、トランプから一際高い46%の関税を突きつけられているベトナムとは、中国南部とベトナム北部をつなぐ鉄道建設プロジェクトはじめ45件もの新規案件について合意し調印した。
■「後ろ向きである上に短期的」な日本のトランプへの対応
3)これら2国間外交の積み上げと並行して、中国はWTOへの提訴、国連安保理の非公式会合を開催して「関税を武器単独行動主義やいじめ行為を行い、世界経済や多国間の貿易体制に深刻な衝撃や混乱を引き起こしているトランプ政権を批判しよう」と提唱するなど、既存の多国間機構を活用して米国への圧力を強化しようとしている。5月には習近平がモスクワで開かれる「対ドイツ戦勝80周年記念式典」に出席、プーチン露大統領と対米戦略をすり合わせることになろう。
さらに7月にリオデジャネイロで開かれる「BRICS首脳会議」では、今年1月に正式加盟したインドネシアを含め中露印など10カ国が集う。この加盟に慎重だったインドネシアが踏み切ったのも、同国の重要産業であるニッケルの対米輸出を大幅に増やそうとする狙いがトランプ政権登場で断たれる見通しとなったことが大きな要因となっている。

 
己の支持者向けならば少々常軌を逸してでもやってしまうトランプなのだが、他国との貿易となると相互の信頼関係がなければ成立は難しく、関税を100%以上を課せればもはや略奪となってしまう。
 
トランプはEU諸国を敵に回し中国はその間に、BRICSにインドネシアを加盟させ、米国の、幼稚な“関税遊戯”をあざ笑うかのように大局的な時代観で進む姿勢に少しは石破茂も見習うべきであろう、とオジサンは思う。 

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