久々の更新になります。今日は突然思い立ち、隠れた映画大国旧ユーゴの映画を紹介させていただくことにしました。
●アンダーグラウンド★★★★★ 1995年 新ユーゴ、ブルガリア、フランスなど共同製作
サラエヴォ出身のエミール・クストリッツァ監督の代表作。カンヌ映画祭パルムドール受賞作品。97年キネマ旬報ベストテン入賞。
大戦が終わったことを伝えず、地下に暮らす人々に武器を作らせ続けるマルコ。ある日、地下で暮らす親友のクロがひょんなことから地上に出てみたら・・。
1941年、ナチスの侵攻下のベオグラードから始まり、内戦と分裂の始まる1990年代まで、激動のユーゴスラヴィアへの鎮魂歌を、パルチザン時代の友人の裏切りをからめて描いた問題作です。深刻で悲劇的なテーマを、強烈な皮肉とブラックユーモアで描ききり、不思議な余韻を残します。バックに流れるジプシー・ブラス音楽もインパクト大。茶猫も何度も見ましたが、ドナウ河を舞台に中洲の小島が分かれていくラストシーンがユーゴの崩壊を象徴的に、しかも美しく描いています。クセのある映画でありながら、後味は悪くありません。2011年に渋谷のシアターNで再上映されました。1本だけ見るなら、やはりこれでしょう。
●パーフェクトサークル★★★★★ 1997年 ボスニア・フランスの共同製作
ボスニア戦争まっただ中、包囲されたサラエヴォ。一人きりになった詩人の家に迷いこんできた二人の戦争孤児の兄弟と出会い、絆が生まれる。詩人は戦禍の激しくなったサラエヴォから、二人の子どもを脱出させることを試みます。絶望の中から生まれる新しい家族・・そして結末は・・。44ヶ月に及んだサラエヴォ包囲戦の中で撮られたという驚くべき作品でもあります。1997年サラエボで公開され、日本では1998年、岩波ホールで公開されました。東京国際映画祭グランプリ受賞作品。
●ボスニア! ★★★ 1996年 新ユーゴ作品
「ボスニアを東京まで拡大せよ」という過激なサブタイトルがついています。原作は「美しい村は、燃えるときも美しい」ボスニアの詩人・スルジャン・ドラエゴヴィッチが監督した作品。のどかな暮らしをしていた村がボスニア戦争に不本意に巻きこまれて行く中、幼なじみの友人が使われなくなったトンネルの中で再会し、銃を向け合わなければならなくなってしまう・・。映画の舞台になったのは「諸民族の友愛と団結のトンネル」という実在の場所で、トンネルの廃墟の中から一部の兵士が生還した実話をもとに制作されたそうです。
サンパウロ国際映画祭、ストックホルム国際映画祭グランプリ受賞作品。日本では1998年、中野武蔵野ホール等で上映されました。そのときのコピーは「遠い国の話ではない。”ボスニアを東京まで拡大せよーー” 銃口の向こうに友がいた。炎の向こうに祖国があった」99年夏にはWOWOWでも放映されました。
●ノーマンズランド★★★★★ 2001年 スロヴェニア・フランス・イタリア・ベルギーなどの共同製作
ボスニア戦争の最前線の壕の中に迷いこんだセルビア兵とボスニア兵の奇妙な心の交流と対立をからめ、死体と思われ体の下に地雷を仕掛けられた戦友を救おうとするがどうにもならないボスニア兵のチキ。戦争の無残さ、愚かさ、人と人とがわかり合えない切なさを描ききり、2002年アカデミー外国語映画賞、ゴールデングローブ賞など、数々の賞に輝いた名作です。茶猫おすすめの一本。
●ライフイズミラクル★★★★ 2004年 セルビア・モンテネグロ、フランス、イタリアの共同製作
鬼才エミール・クストリッツァ監督。セルビア人のルカは徴兵にとられた息子を捜しだすため、ムスリム人の女性を交換のための捕虜とし、奇妙な共同生活が始まります。やがて二人の間に恋が芽生え・・。人生の不条理と希望と苦悩をユーモアを交えながら描いた作品。「アンダーグラウンド」で唖のイヴァンを熱演したスラヴコ・スティマツが主人公を演じています。
●サラエボの花 ★★★★ 2007年 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、クロアチアなど共同製作。
サラエヴォでひっそりと暮らす母と娘。思春期を迎えた娘は、父が戦争で戦死した英雄と教えられていましたが、あることから戦死者リストに自分の父親の名前がないことを知ります。自分の出生の秘密と、隠し通さなければならなかった母の過去を知り、自暴自棄になり母に反抗する娘。ボスニア戦争の影と悲劇、そこからの人間の苦悩の再生を、女性の視点から描いた佳作。地味ながら、心に沁みる一本です。
2006年ベルリン国際映画祭のゴールデンベア賞など、数々の映画祭での受賞作品。日本では岩波ホールで公開されました。
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