United Minds (Strikes Back)

2013年に解散した電子音楽ユニット、SpiSunのWeblog“United Minds”跡地

今頃ライヴレポート  Cockney Rejects Japan Tour 〔by ラウド〕

2009-02-08 01:55:50 | Music
あれはフランス・ワールドカップが開催された夏のことだったと思う。
友人(当時ヴィジュアル系バンドに所属していた)のステージを観に行った事がある。
僕らのバンドの活動拠点でもあった池袋で行われた、オールナイトの対バン形式のライブイベント。
会場はCYBERだったか、LIVE INN ROSAだったか…。
そこで見たバンドの中に、縦乗り系のビートで観客を沸かせているバンドがいた。
「ああ、やっぱりパンクは良いなぁ…」
当時一緒に活動していた旧友でありボーカリストがそう言ったのだから、あれはパンク・バンドだったのだろう。
僕には凡百のHi-Standardフォロワーにしか思えなかったが…。


それが僕にとって生のパンク初体験だった…はずであった。
しかしその3年後、一人の男との出会いから、その体験がいかにぬるいものであったか気付かされる事となる。
粗い画質のヴィデオの中で、坊主頭の男達がダミ声と荒々しいディストーションギターとドタバタするビートに合わせ、一心不乱に押し合いへし合いを繰り広げている。

何なんだこれは?

その男から借りたCDも、はっきり言って全くピンとこなかった。
正直言うと、嫌悪感すら抱いたほどだった。
果たして、これは僕が今まで聴いてきた音楽と同列に語ってしまっていいのだろうか?
そう思ってしまうほど、当時の僕にとっては衝撃的な体験であったということだ。


その男とは、このブログにお付き合い頂いている方にはもはやお馴染みであろう。
Madness来日公演を共に体験したあのFである。
Fは、出会ったばかりの僕にまずはOiパンクの洗礼を与えたのであった。
英国フットボールカルチャー、パンク、モッズ、スキンヘッズ、スカ、東京の裏道知識、そして数々のアンダーグラウンドな文化…。
その後、僕が彼から受けた影響は計り知れない。
しかしあくまで原点は、このOiパンクであったのだ。

そもそも、Oi PUNKという名称は、コックニー・リジェクツのヴォーカリスト、スティンキー・ターナーの口癖「Oi」をサウンズのライターだったギャリー・ブシェルがいただいて、パンク・ムーブメントの総称として名付けた。ここで言うパンクとは、あくまでリアルなストリートで生まれたパンクのことで、冒頭で挙げたようなものではない。
すなわち『Oi』はコックニー・リジェクツがいなければ存在しなかったということになる。
…ということらしい。

そんなコックニー・リジェクツが、来日するという運びになった。
Fの誘いもあり、僕も参戦決定。何事も経験である。昔はパンクのライブと聞いたら間違いなく敬遠していたであろう僕も、未知のジャンルのライブに触れてみたいという好奇心に素直に従うようになっていた。
10/23(木) 東京 代官山 UNIT
COCKNEY REJECTS(from UK) / COBRA / 雷矢 / SA
OPEN 17:30 START 18:30

ちなみにこの日はちょうど誰かの誕生日だったんだアッー!
その日ぐらいブログ更新してみやがれってんだ、まったく。


さてこの当日は生憎の雨。
とはいえこの日の代官山は熱かった。お洒落な街の空気を蹴り飛ばすドクター・マーチンの男達。
僕は多少気圧されながらも、アンブロの紺の無地のジャージに、ウェストハム・ユナイテッドのアウェー・キット(Rejectsは熱狂的なウェストハムのファン)を着込んで乗り込んだ。
これは僕なりにUKパンクへのリスペクトを込めた、意図的なワーキング・クラス丸出しの格好のつもりだったのだが…Fからは「ダサい」だの「みすぼらしい」だのの酷評の嵐だった。普通の格好をしていけばよかったと後悔する。
これでFが僕のファッション指南役と思う方もいらっしゃるかもしれないが全然そんなことはなく、僕が小洒落た古着をちょくちょく買う事に関しては「調子に乗ってんじゃねぇ」と毒づいてくる。
どうせいっちゅうねん、と言ってはいけない。これも彼を彼たらしめている要素のひとつなのだから。

それにしても、この地を訪れるのは高校時代以来。
田舎から上京して、精一杯めかしこんで緊張していたあの頃に比べると、随分とレイドバックしたものだ。
図太くなったのか、緊張感がなくなったのか…。


会場に着くと、ショウは既にコブラの出番待ちの状態であった。
今回このライブを企画した張本人であり、日本におけるOiのパイオニアでもある。
会社帰りのサラリーマンと思しきYシャツ姿の人もちらほら。シーンの草分けとして息の長い活動を続けてきた証であろう。

いやぁ。しかし音がでかかった。まさに爆音。
ドリンクを渡してくれるお姉さんも、見事に聞き間違えて僕にビールを渡してくれる始末。アルコールはダメだとあれほど…。
Jasonのライブの時に頼んだミネラルウォーターが便利だったので(ペットボトルなので、蓋を閉められるのが非常に大きい)、その経験を活かしたんだけど…あれは聞こえないから絶対勘で渡したね、うん。
でもそれを責めようなんてつもりは毛頭ありません。それだけ音がデカかったんですから。

コブラの印象は、曲は意外とキャッチーなのが多いけれど、根幹がしっかりしているというか、骨太というか。
ここからフォロワーが多く生まれたというのも非常に納得できるな、と。
そんなことを思うと同時に、盛り上がりっぷりにもちょいと圧されていたのも事実。
至近距離でモッシュ&ダイブの嵐。堂々たる体躯の男共が人の並みの上をサーフィンよろしく激しく転げ回る。
ああ、ブーツが当たったら痛いんだろうなぁ…とか、あれズルッと落ちちゃったらどうなるんだろうね…とか、パンクマインドが欠片もないことを僕は考えていた。
しかも、それに女性も加わっていたという…積極的に、最大限にその場を楽しもうとする姿勢は学ばなければいかんなぁ。
僕は怖いからいいけど。


実はコブラは中学生の頃から名前だけは知っていた。『唇にパンク』という漫画の単行本で紹介されていたからだ。
ヨースコー氏の曲はリクルートか何かのCMで聞いたことがある。
先述の漫画では、彼はソロになってからハウスに傾倒したという話だったが…確認出来ないのが残念だ。
コブラはヴェルディのチャントにもなっているそうですね。


そしていよいよRejectsの出番。
入れ替え時間に会場の前方に空きが出来たので僕達も前進する。コブラだけ見に来た人もいたのだろうか。
(写真提供:F)
若干モッシュの波はコブラより収まった感も、その分シンガロングでしょっぱなから大盛り上がり。
(写真提供:F)
僕も加わりたいが、何せ曲を満足に知らないまま参加している。残念ながら体を揺らすだけだったのだが…。
それでも十分すぎるほどに楽しかった。
事実、周りの数多くのウェストハムのキットを着た同志たちもそうしていたのだから、何の問題もあるまい。

やはりというべきか、ウェストハム着用率は高かったなぁ。
僕だけアウェーキットで浮いていたのは内緒だ。Fはちゃんとフィラ時代のホームキットを着ていたのだけれど。

ゲッグス兄弟の弟は聞いていたとおり、しょっちゅうシャドーボクシングをしていた。
兄はその体格通りのハードでぶっといレスポール・サウンドを惜しみなく響かせる。
轟音の洪水に飲み込まれ、捻じ伏せられても、妙な快感があった。
やっぱり改めて実感する。音楽は理屈だけじゃないんだぜ、と。
演者がいかにリスナーを楽しませるか。結局それだけでしょ?
僕はリジェクツの曲は「I'm Forever Blowing Bubbles」(ウェストハムの伝説的チャント)しか知らない。
つまり彼らの音楽を輪郭でしか楽しめなかったのかもしれないけど、それはそれで貴重な経験だと思う。
一言で言えば、非常にエキサイティングな体験だった、そういう事だ。


ライブが終わって外に出れば、雨はまだ降り続いていた。
ライブハウスの前の道路を隔てた路地に立って、興奮気味に帰路につくパンクス達を見ていたら、70年代末の何かが胎動していた時代の空気を吸い込めたような気がした。
一瞬ですけどね。





Set List
(順不同、F提供)

Oi! Oi! Oi!
FLARES`N'SLIPPERS
ARE YOU READY TO RUCK?
POLICE CAR
I'M NOT A FOOL
EAST END
BAD MAN
JOIN THE REJECTS
WHERE THE HELL IS BABYLON?
WAR ON THE TERRACES
THE GREATEST COCKNEY RIP OFF
WE CAN DO ANYTHING
WE ARE THE FARM
BUBBLES
ON THE STREET AGAIN
THE POWER AND THE GLORY

Cockney Rejects - I'm Forever Blowing Bubbles


Blowing Bubbles




















Fから今回のエントリーをあたり、多大なる協力を得たことを感謝。
彼が書いた体験談をそのまま転載させて頂く。



JOIN THE REJECTS

・スティンキーはやたらと「FIRE」を連呼する
・5年前の来日時より太っていた
・BUBBLESの出だしの煽りが現代風にアレンジされていた(あれはWEST HAM UNITEDと言っていたのか?)
・一曲ごとに「ファーストシングル」などと軽く解説する
・シャドーボクシングを繰り返す
・「COCKNEY REJECTS No.1」と叫んでいたのは伊達ではない
・「NEXT YEAR」と言っていたのなら本当に来てほしい
・会場にあぶれるウェストハムのキット
・『Oi』という名称は彼ら(とSOUNDSのライターだったギャリーブシェル)がいなけりゃ誕生しなかった
・当時の荒れ狂った状況は『2TONE STORY』に載っている
・兄貴はUFOからも評価されている(プロデュースもしてもらっている)
・サードアルバムはアビーロード・スタジオに客を呼んでのライブ盤

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3 コメント

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Unknown (F(himself))
2009-02-08 17:25:45
これだけ書いてもらえれば、Join the Rejectsと訴え続けた甲斐もある。
そしてアウェイキットに引け目を感じるなと、一アウェイキット愛好者は訴えたいね。
あと、当日の服装を攻撃したことについちゃ冤罪だ。
Unknown (cloud9)
2009-02-09 01:44:14
”Madness”のライヴは以前ラウド殿の熱いリポートを読んだせいかとても印象に残っています。ちなみに私にとってのパンクと言えば断然”Sex Pistols”です。50代になった彼らは今でも唯一無比の存在だと思います。
Unknown (ミカ)
2009-02-12 10:30:48
>>ニッキー・アイズ
何とか書き切る事が出来た。協力に感謝する。
今年のジェフのアウェーキットは是非ほしいが、再販の予定が立っていないのが辛いな。
攻撃に関してはいつものことだから問題はない。


>>cloud9さん
読んでいただきありがとうございます。麗の件は来月末あたりからになってしまうかもしれません…申し訳ない。
ピストルズも時代を作ったバンドですし、体験しておかなければならないと思っております。

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