2016年10月12日
さて、一期一会。
もう6年以上前になるだろうか、初夏、茶屋“橋本”でのことだ。
私達が食事をしていると、私達よりは少し年下の短パン姿の夫婦が入ってきた。
旦那さんはがっしりした体格、恰幅がよく丸顔、頭はほぼ禿げあがっている。汗だくで、すわったとたん、おばさんに“冷酒ください”。
“ビールならともかく、この暑いのに酒?”と私自身酒飲みながら、いぶかった。
旦那さんはだされた冷酒をグラスになみなみと注ぎ、それをぐっとあけた。にこにこと。
わたしはいまだかって、あれだけおいしそうに酒を飲む人を見たことがない。
ぶしつけに人を見るのは失礼だから私はちらちらと見ていたのだが、あまりにも飲みっぷりが見事なので、とうとう家内も私もまともに見てしまった。
奥さんが私に苦笑しながら「いやでしょう!」と云う。しかし、別にいやがっているようには見えない。
「いや、あんまりおいしそうに飲まれるので」とわたし。
「この人、峰定寺の茶店でも、缶ビール二本のんでいるのですよ!」
それを受けて「おたくもどうですか?」と旦那さん、冷酒のビンをこちらに差し出す。
「いえ、車ですので」
私と家内は東京から来たというこのM夫婦にすっかり好感を持ってしまった。
“帰りは乗せて帰ろう” 一期一会だ。
二人が来たのは鞍馬、花背を通ってだから、帰りは西回り、常照皇寺を通って、高尾にぬけ、京都に帰ろうということになった。
写真は常照皇寺でのものだ。この時は美山を経由していない。
M夫妻は京都北山によほど感激したのか、その年の秋に、一緒にうつした写真、手作りのケーキ、それと家内へのプレゼントをもって我が家に訪ねてきてくれた。
別の日に、旦那さんはまた常照皇寺に行ったらしい。
「いま車で高雄というところにいるのですが、あの寺、どう行ったらいいのでしょう」というMさんからの電話がかかってきた。
私は答えた。
「では、そのまま北へ進んで周山というところに行ってください、でも周山をつききって北に行ったらだめですよ、日本海に行ってしまいますからね。周山に入ったら大きく右に廻ってください、よくわかる道です、そのまま進んで大きな橋をわたれば正面奥が常照皇寺です」
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