50歳を超えたマレーシア人なら誰もが知っている、しかし誰もが口を閉ざして話さない、1969年5月13日のことを。
「噂を広めてはならない」。
と英語・マレー語・華語・タミール語の四言語のスタンプが押された手紙が静かに映し出される。
10月、みんぱく上映会ではマレーシアの先住民「オラン・アスリ」周辺の森林伐採や自然破壊、マレー化政策の行き詰まりを描いた映画と思って観はじめた。ところが、本編途中に前述の手紙がもう一度映し出されると、513事件の目撃者や投獄された者、焼き討ちの被害者など様々な証言で当時をあぶりだしていくのだった。顔を出せず音声も変えられての証言もあれば、マレー系でありながらリベラルな証言もあり、「人種」を超えての国家の在り方を考察させる痛々しい真実の物語であった。
12月、シネヌーヴォの特別上映では上映後にラウ監督はじめ、信田氏、盛田氏のトークがあった。
ラウ監督の話で印象に残ったのは after1969…, sensitive topic…, not discuss things, getting better Malaysia.
物語はEnglish(世界共通語)ではじまり、中国語やマレー語が混じり、最後にオラン・アスリ語(少数民族の方言)の民話で終わる。大きな潮流の中消えかけていく小さな世界を表したという。事件当夜から静かにたたずむ樹木は、いまや都会雑踏の中で忘れ去られた証言者として当時と変わらず生い茂る。その樹木に巣くう鳥達のさえずりが耳に残る。そのサウンドはオラン・アスリ達や513事件の犠牲者の魂が集まっているように聴こえるのだ、と語ってくださった。
マレーシアの黒歴史、語り続けることの大切さ 私達はいつまでも忘れてはならない。
The Tree Remembers / 还有一些树
2019年 製作・台湾 撮影・マレーシア 89分
監督:ラウ・ケクフアット Lau Kek Huat
2020年12月
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