伊予の江山焼
愛媛県伊予市で焼かれた江山焼です。
楽焼き小皿12枚それぞれに、絵と名所、名物が描かれています。
この手の皿は、京焼きの定番ですが、京名所?いまさら、とういう感じですね。
それに対して、地方の名物を素朴ながら一生懸命に描く・・・・・こういうの、私は個人的に好きです。
共箱には、「伊豫名勝 歌絵皿 伊豫国三津浜 江山造」 、内側には、「昭和九年」と記されています。
伊豫の松山名物名所
紫井戸の片目鮒
小かきつばた
うすずみ桜
道後のゆ
三津のあさ市
ひのかぶら
十六日の初桜
高井の里のていれぎ
伊予かすり
音に名高き五色素麺
吉田さし桃
どうやら、この品は、伊予松山のお座敷唄、伊予節の皿ですね。
♪♪~ 伊予の松山 名物名所 三津の朝市
道後の湯 おとに名高き五色ぞうめん
十六日の初桜 吉田さし桃こかきつばた
高井の里のていれぎや 紫井戸や
片目鮒 うすずみ桜や 緋のかぶら
ちょいと 伊予絣 ~♪♪
江山焼は、明治中期から昭和前期まで、伊豫郡中町湊町(現在の伊予市湊町) の陶芸家、槇江山(万延元年ー昭和11年)によってつくられた焼物です。
江山焼の制作年は不明の品が多いのですが、今回紹介した絵皿は、共箱に昭和9年の記名があり、江山、最晩年の作と言ってよいでしょう。
全国に点在する、こういった個人窯は、趣味人、道楽者、大旦那のお遊びといったものが多いのですが、江山焼はどうでしょうか。
江山は、 伊藤博文、東郷平八郎、秋山好古、伊予松山藩主久松勝成、高浜虚子、下村為山、河東碧梧桐らと交友があったと言われています・・・・・・・有名人に取り入った俗物か?
江山は無欲恬淡で誰からも好かれる人物で、クリスチャンでもあったと言われています。
一時は、東京に窯をもち、板谷波山にロクロを指導したほどの腕をもっていたようです。
卓越した技能の職人で人格者・・・こんな人物像が浮かんできます。
槇江山、実に興味深い人物です。
最後に、疑問が。
この伊豫名勝絵皿の箱には、「伊豫国三津浜 江山造」と書かれています。三津浜は、現在の松山市三津浜。同じ伊豫国とはいえ、江山の窯があった伊予市とはかなり離れています。
最晩年には、三津浜にも窯があったのでしょうか?
どなたかご教示を。