遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

そこまでやるか萬古焼1

2019年02月18日 | 古陶磁ー国焼
萬古焼はいろとりどり

 江戸後期三重県に起こった萬古焼きは、ユニークで面白い焼物です。
 まず、非常に沢山の種類の萬古焼きがあります。
○○萬古、□□萬古、△△萬古、・・・・ざっと数えても20以上あるでしょうか。秋田萬古や江戸萬古も。極端な場合、陶工一人の名前を冠したものさえあります。
 また、技術的にも、装飾的にも多彩で、非常にバラエティに富んでいるので、いろんな面から焼物を楽しめます。


極薄の萬古急須

 独特の臙脂釉が赤土肌に映える美しい急須です。




  ビックリするのは、その軽さです。


 とにかく軽い。紙のように薄くできていて、手で持つとふわっとした感じがします。
 ある女性は、手のひらにのせて持ち上げようとして、お手玉のように空中に放り投げてしまいました。15cmほどでしたから、無事キャッチし、事なきをえました。私たちは、重さを見込んで、無意識のうちに上向きの力を入れているのですね。

 もちろん、摘みがまわります。蓋も薄造りなのですが、蓋、受け口が微妙に円形から歪んでいて、ある向きの時にしか蓋がはずれないようになっています。

 で、こんな事もできてしまう。


 とにかく、薄くて精作です。感覚的には、底を陽にかざすと、日本髪の女性が浮かんでくるコーヒー(紅茶)カップに似ています。美濃や瀬戸で作られた輸出向けのあの品です。私の部屋にもいっぱい転がっていたのですが、どこへいったのか、捜しても見つかりませんでしたので写真は略(笑)



 ○○萬古の印が押されています。○○は読めません。どなたか、ご教示を。

 骨董屋の親父は、「手捻りだ」と自慢していました。確かに、それらしき指跡が沢山ついていますが、これは口や取っ手部分を接合した跡です。本体部にはありません。大体、こんな薄作を生み出す魔法の手をもった陶工がいる?
 この急須は、萬古焼独特の木型を使って作られた品でしょう。この技法は、桑名萬古の特異技です。桑名萬古といわれる焼物には、とりわけ多くの○○萬古があります。この急須は、桑名の○○萬古だと思います。


萬古と兄弟萬古の取り合わせ

この急須に合う碗を捜してみました。




萬古の銘はありませんが、やはり萬古焼でしょう。明治期特有の蓮デザインに、臙脂釉が映えます。

こんな感じのセットになります。でも、茶碗が少し大きすぎるかな。

もう一種類ありました。


 小さな盃です。内側に風雅な絵付けがしてあります。石峯の銘も。手捻りです。
 これは、清水石峯作の温故焼。萬古焼の技法を取り入れ、美濃国不破郡赤坂村(岐阜県大垣市赤坂町)で焼かれた焼物です。ちなみに、その窯は、関ヶ原合戦で徳川家康が陣をはった御勝山のすぐ際にあり、そこから採れる白土と赤土を混ぜて焼いたと言われています。




 さすがに、萬古焼の兄弟窯。急須との相性も抜群ですね。










コメント (4)
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