萬古焼はいろとりどり
江戸後期三重県に起こった萬古焼きは、ユニークで面白い焼物です。
まず、非常に沢山の種類の萬古焼きがあります。
○○萬古、□□萬古、△△萬古、・・・・ざっと数えても20以上あるでしょうか。秋田萬古や江戸萬古も。極端な場合、陶工一人の名前を冠したものさえあります。
また、技術的にも、装飾的にも多彩で、非常にバラエティに富んでいるので、いろんな面から焼物を楽しめます。
極薄の萬古急須
独特の臙脂釉が赤土肌に映える美しい急須です。
ビックリするのは、その軽さです。
とにかく軽い。紙のように薄くできていて、手で持つとふわっとした感じがします。
ある女性は、手のひらにのせて持ち上げようとして、お手玉のように空中に放り投げてしまいました。15cmほどでしたから、無事キャッチし、事なきをえました。私たちは、重さを見込んで、無意識のうちに上向きの力を入れているのですね。
もちろん、摘みがまわります。蓋も薄造りなのですが、蓋、受け口が微妙に円形から歪んでいて、ある向きの時にしか蓋がはずれないようになっています。
で、こんな事もできてしまう。
とにかく、薄くて精作です。感覚的には、底を陽にかざすと、日本髪の女性が浮かんでくるコーヒー(紅茶)カップに似ています。美濃や瀬戸で作られた輸出向けのあの品です。私の部屋にもいっぱい転がっていたのですが、どこへいったのか、捜しても見つかりませんでしたので写真は略(笑)。
○○萬古の印が押されています。○○は読めません。どなたか、ご教示を。
骨董屋の親父は、「手捻りだ」と自慢していました。確かに、それらしき指跡が沢山ついていますが、これは口や取っ手部分を接合した跡です。本体部にはありません。大体、こんな薄作を生み出す魔法の手をもった陶工がいる?
この急須は、萬古焼独特の木型を使って作られた品でしょう。この技法は、桑名萬古の特異技です。桑名萬古といわれる焼物には、とりわけ多くの○○萬古があります。この急須は、桑名の○○萬古だと思います。
萬古と兄弟萬古の取り合わせ
この急須に合う碗を捜してみました。
もう一種類ありました。
小さな盃です。内側に風雅な絵付けがしてあります。石峯の銘も。手捻りです。
これは、清水石峯作の温故焼。萬古焼の技法を取り入れ、美濃国不破郡赤坂村(岐阜県大垣市赤坂町)で焼かれた焼物です。ちなみに、その窯は、関ヶ原合戦で徳川家康が陣をはった御勝山のすぐ際にあり、そこから採れる白土と赤土を混ぜて焼いたと言われています。
さすがに、萬古焼の兄弟窯。急須との相性も抜群ですね。