遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

古染付太古石草花紋小皿(10枚)

2024年01月05日 | 古陶磁ー中国

中国古染付の小皿です。

「南京  皿 拾枚」と書かれた古い木箱に入っています。

今では、なかなか見かけない十枚組。

一枚(中央列右端)に古いニュウがあります。他は、窯疵と虫喰い以外、ほぼ完器です。使用痕は全くありません。大切に保管されてきたのですね。

径 13.5㎝、底径 8.0㎝、高 2.9㎝。中国明末ー清初。

全面に太古石と草花、そしてポツンと太陽が描かれています。

写真では、少し黒ずんだ青色に見えますが、染付の色は、実際は、下の写真のように少し紫がかった明るいブルーです。

薄造りで、爪で弾くと、キンキンと中国陶磁器特有の金属音がします。

不明の裏模様。

高台には砂が付着。

高台内は放射状に削られています。

同じデザインの皿、10枚ですが、よく観察すると、細部は皆、異なっていて、同じ皿は2枚とありません。写真の右上の皿には、2匹の虫が描かれています(10枚の内1枚だけ)。

裏模様も、異なっています。

また、10枚の皿の中には、中央に銘のある物があります。

伊万里でもよく見られる角福。

かと思えば、

角福崩し?

かと思えば、

もう完全に幾何学デザイン(^.^)

このように、10枚の中の3枚に銘があるのですが、それらはバラバラ。銘の入れ方は自由気ままなのですね。

また、すでに見たように、太古石草花紋も細部は10枚それぞれ異なっています。陶工は、その時その時の気分で筆を走らせていたかのようです。いい加減と言えばいい加減、良く言えば自由(^^;  このような奔放さが、明末期に作られた中国陶磁器の魅力を作りだしているのでしょう。

皿の周縁は10枚ともザラついています。上釉に微小な剝れがびっしりとあるからです。

この時期の中国陶磁器にしばしばみられる虫喰いです。

これまで、いくつかの中国陶磁器を紹介してきました。虫喰いに焦点をあててみると、どうやら虫喰いには、大きく2種類あるように思えるのです。それを手掛かりにして、虫喰いといわれる疵がどのようにして生じたのか、考えていきたいと思っています。

 

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古染付暦手盃

2023年09月05日 | 古陶磁ー中国

先日、古伊万里蒐集家Dr.Kさんのブログで、南方系の染付盃が紹介されていました。

例によって後出しジャンケン(^^;)、故玩館にも似たような雰囲気の品があったはず、と探し出したのが今回の品です。

径 6.8㎝、高台径 2.7㎝、高 3.5㎝。中国、明末ー清初。

中国明末と思われる染付の盃です。

器の外側には、暦手とよばれる幾何学的連続模様がビッシリと描かれています。

見込みにも模様が一つだけ。

この盃は、ガラクタ蒐集を始めて間もなく、陶磁器は何を買ったらよいかさっぱりわからないままに、時々、手が届く範囲の物を入手していた頃の品です。

その後、懇意になった骨董屋が、5個揃いならワシが買う、と言っていたところから、それほどハズれた品ではなかったかなと、胸をなでおろした次第です(^.^)

違いのわかる男が、夜半、一人で盃を重ねるにはピッタリの品ですね。もっとも、下戸の私には関係ありません。おまけに、違いのわからない男ですから(^^;

この盃、よくよく見ると、口縁に虫食い状の釉剥がれが、多くあります。

顕微拡大してみると、

火が入った跡があり、釉剥がれが焼成中に起こっていたことがわかります。

古染付といわれる中国明末ー清初にみられるこの虫喰いの原因については、いずれまとめて考えてみたいと思います。

 

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古染付賢人図皿(5枚)

2023年03月21日 | 古陶磁ー中国

今回は、煎茶碗ではなく、染付の皿です。

五枚の皿すべてに虫食いがあります。

高台には、砂粒がパラパラと付着しています。天啓の品によくみられる底の状態です。

口径 14.8㎝、高台径 8.2㎝、高 2.9㎝。中国明末ー清初。

描かれているのは中国の人物です。

この図柄の品は、先回のメダカ紋とは異なり、しばしばみられます。ただ、中国的すぎるためか、日本ではあまり人気が無いようです。私も、黒漆塗の木皿に、この図をあえて描こうとは思いません(^^;

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ありそうでない!?古染付メダカ紋煎茶碗(5客)

2023年03月17日 | 古陶磁ー中国

今回も煎茶碗です。

メダカがたくさん描かれた煎茶碗です。

口径 6.7㎝、高台径 2.6㎝、高 4.2㎝。中国明末ー清初。

小さな煎茶碗で、メダカが数多く描かれています。胎土は、先回の松竹梅図煎茶碗より灰色がかっています。器体も少し厚めです。口縁には銀の覆輪が施されています。したがって、縁の状態が見えませんが、おそらく多くの釉剥がれがあると思います。使う際の口当たりを良くし、耐久性を増すために覆輪がなされたのでしょう。写真では、蛍手のような透明感のある器に見えますが、それほどではありません。

今回の品で一番の目玉は、胴に描かれた多くのメダカです。

五客の煎茶碗のどこをとっても、同じ図柄はありません。メダカの配置が絶妙なのです。メダカたちの向きに偏りがありません。しかし、まったくバラバラかというとそうでもない。自然にバラついているといった感じでしょうか。

実はこの品は、四十数年前、まだガラクタ集めを始めてまもない頃、近くの田舎骨董屋にすすめられて買った物です。当時は、木の物ばかりを求め、陶磁器は避けていました。なんせ、陶器と磁器の区別もつかなかったのですから。私としては、大枚をはたきました。しまった、高い買い物をしてしまったか😥・・・何年か経ち、ようやく陶磁器にも手が出始め、メダカ模様が気になって注意して物をみるようになりました。ところが、どこにでもありそうなこの模様がなかないのです。しばらくして、骨董市でメダカ模様の伊万里焼小碗を見つけました。器には、整列して泳ぐメダカが描かれていました。その後もボツボツと目にするようになりましたが、いずれもメダカたちが揃いすぎで面白味がない。その後、ある骨董雑誌に、少しバラけたメダカ紋の蕎麦猪口が載っていました(記事が見つかりません(^^;)。しかしそうはいっても、メダカたちは、同じ方向に泳いでいます。もっとバラけたメダカ紋は無いのか・・・・あきらめかけていた時、東京青山ハナエモリビルの地下骨董街にあった上品な女主人がやっている店に、私の品と似たメダカ配置の煎茶碗が置いてありました。覆輪は無し。伊万里焼の古染付写しです。しかし、手に取ろうとして思わず引きました・・・値段がハンパでない😵‍💫  この伊万里焼一個で、私の古染付5客が買えるのです。主人曰く、これは伊万里のなかでも稀品です・・・そうか、私のメダカ煎茶碗はこの品の本歌だったのか😊

右も左もわからない駆け出しの頃、騙されたかもしれないと思って買ったバラバラメダカの煎茶碗は、有りそうで無い品だったのですね。

下戸は煎茶で、ビギナーズラックに乾杯🎉🤗🎊

 

 

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景徳鎮染付松竹梅図煎茶碗(5客)

2023年03月15日 | 古陶磁ー中国

先に中国の古染付、魁星図煎茶碗を紹介しました。

今回も、中国の品と思われる煎茶碗です。

口径 7.7㎝、高台径 3.1㎝、高 4.8㎝。中国明時代。

肌理の細かな純白の胎土を使った薄く端正な造りで、絵付けも含めて精作といってよい品だと思います。

先に紹介した魁星図煎茶碗がくだけた絵付けであったのに対して、今回の品は非常にしっかりとした描写がなされています。

梅の花が鮮やかな呉須で描かれています。

反対側には松。

梅と松の間には、

竹と、

太陽(月?)。

松竹梅の図です。

この品は、伊万里焼として売られていました。

しかし、通常の伊万里より薄造りで、特に口縁は非常に薄く、釉薬の剥がれが多く見られます。

また、高台内の銘の書き様も、日本人陶工のそれとはだいぶ異なります。高台の畳付をみると、内と外から上釉ごと胎土をスパッと切り取ってあります。

以上の事から、この品は伊万里ではなく、中国の品、おそらく景徳鎮で明時代に焼かれた物と結論づけました。

口縁には、手で触れないとわからないほど小さな疵からボロボロと剥げ落ちたような疵まで、多くのソゲが見られます。また、上の写真のように、少し盛り上がった箇所もあります。明時代末期の古染付の虫食いと呼ばれる疵とは、少し様子が異なるようにも思えます。

ずっと以前のブログで、底銘に大明宣徳年製とある大鉢を紹介しました。この鉢にも、今回の品と同じように、薄い口縁にざらざらとした疵が多く見られました。また、染付けの呉須も、今回の品と同じように、少し紫がかった鮮やかな青(宣徳ブルー)です。

大胆な推測をすれば、このような陶磁器は、古染付などのくだけた陶磁器が多く生産された中国明末ー清初より少し前の時期に作られた物ではないでしょうか。

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