遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

漆器で正月

2019年12月31日 | 漆器・木製品

早くも今年は終わりです。一年に一度くらいは漆器で、ということで、明日の準備。

漆器は沢山あるのですが、いざ使うとなるとなかなかピッタリの物がありません。

で、ここ何年かは次のような組み合わせでやっています。

まず、膳。

螺鈿で、日本的模様が控えめに描かれています。

大正、昭和の品だと思います。

10枚組。似たようなデザインがありますが、微妙に全部異なります。

           26.5x27.0x2.7㎝

 

 

四季なのでしょうか?

 

面白い意匠ですが、季節は?

 

金で描いた絵の上に、薄い青貝が貼ってあります。

うーん、和モダン。

 

各自が好きな膳を選びます。

 

取り皿はこれ。シンプルな木皿です。

           径19㎝

幕末くらいの箱に入っていました。元々は10枚だったのでしょう。骨董市で600円でした。今出来の輪島ならその100倍以上。骨董市では、黒色の木皿ならありすぎて、値がつきません。朱色はかろうじて何がしかの値が。仕事はしっかりしているので、使いこなせばコスパ満点。

箱には、「ちゃ津」と書かれています。「ちゃつ」とは、食べ物や菓子を盛った木皿の古い呼び方で、平安時代からあったそうです。底に高台が削り出された、少し上手の木皿です。色は黒や朱がほとんど。「茶津」と書かれることが多いですが、「楪子」と表す懐石皿もあるようです。

 

雑煮用のお椀はこれ(10客)。

      明治  径12.3㎝、高7.7㎝

お椀もたくさんあります(死蔵(^^;)ですが、すこし小ぶりのこの品がもっぱら活躍。

木目模様と貝の渋い絵付けがニクい一品です。

裏側をさりげなく飾るのも、江戸からの日本の粋(^.^)

 

これでできあがり。

さあ、何がのるのでしょうか?

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世にも不思議な皿!柿南京白象嵌梅鳥紋中皿

2019年12月29日 | 古陶磁ー中国

先々回のブログで、柿南京梅鳥紋中皿を紹介しました。

この皿をもう一度、じっくりと見てみました。

先回のブログの呉州手柿釉餅花手梅鳥紋中皿(右)と比べてみます。

非常によく似ています。器形、大きさ、裏面のつくりはほとんど一緒です。

どちらも、柿釉の地に、白泥で花鳥図が描かれています。いわゆる餅花手です。

梅の木に鳥(多分、鶯)がとまった構図もよく似ています。

両者で異なる点をあげるなら、今回の皿(左側)は薄造りで、胎土が右の品のように茶色ではなく、灰白色です。また、柿釉の茶色が深く、全体に均一にかかっています。高台の砂の蒔き方も控えめです。呉州手の中では、上手の造りといってよいでしょう。

 

今回の品をもう少し、詳しく見てみます。

驚くことに、絵模様は、すべて、皿の表面を鋭く削って描かれています。枝の直線部だけではなく、花びらの曲線部も削り彫られています。

削った部分が融解した様子はないので、本焼き後の非常に硬い釉薬面を削っていることがわかります。

 

餅花手の特徴である、白泥を丸点状に置いて、蕾を表しています。

非常に小さな鳥の目(1㎜以下)にも白泥で白点がうたれています。

 

幹の部分は、削った所へ白泥をさしています。

幹の太さや凸凹に対応できるよう、筒描きではなく筆を用いていると思われます。

 

蕾の白点は、いずれもほぼ円形です。白の点は、凹凸が

なく真っ平なものがほとんどですが、丸く盛り上がったものもあります。

真っ平な白点は、表面より少し下へ沈んでいます。

 

さらに、拡大してみます。

   【枝の先端部】        【枝の中央部】

シャープに削られています。

削られた部分の端が筋状に黒くなっています。

表面を薄く削った先端部は、全体が黒化しています。

 

  【表面が真っ平な丸点】     【盛り上がった丸点】

ほとんどの丸点は真っ平で、周りのエッジが少し立っているように見えます。

盛り上がった丸点は、枝先端部の小さな蕾だけに見られます。

 

【幹部】              【先端部】

幹部には、白泥を置く時の筆の起点が見られます。

先端部は、いずれも、薄く削られていて、胎土は露出していません。鋭い刃で、一気に彫られたことがわかります。

 

最期に、右上の大きなほつれを覆う漆を取り去ってみました。

黒く縁どられた円形の部分が現れました。しかも、そこには白釉がさされているではありませんか。白釉部の硬度は低く、簡単に剥がれ落ちます。

 

この丸はほつれではなく、丸く削った部分に白釉が置かれ、太陽か月を表していたのですね。

梅に鳥と太陽(月)。これが、本来描かれた絵だったのです。

 

以上より推定される今回の皿の造り方をまとめます。

①胎土で皿を作り、柿釉、透明釉を施す。

②高温で焼成する。

③皿の表面を鋭利な道具で削り、白泥を入れ込む。

④低火度で焼成する。

削った部分の端が黒くなっているのは、④の操作で柿釉中の鉄分が端の部分だけ酸素と接触し、酸化されたためと考えられます。この時、透明釉は溶けないので、削った部分のエッジは鋭れたさを保ったままの状態にとどまります。枝の先など、上釉部分が浅く削られて柿釉が露出している部分は、彫られた部分全体が黒くなっています。

 

白釉で丸くうたれた蕾の部分は、おそらく、白釉を丸く置いた後、水平に削り取ったのでしょう。象嵌の手法です。その後、低火度焼成されて体積が縮むので、焼き上がりは水平より少し下に白釉平面がきます。一方、枝末端の小さな丸点の白釉は水平に削るには小さすぎるので、上に飛び出たまま低火度焼成されたと思われます。

 

いろいろ見てきましたが、この皿の特異な点は、焼成された柿釉皿の表面を鋭利な道具で削って絵を描き、そこへ白泥をさして作られていることです。この点、通常の餅花手とは根本的に異なります。

先回の呉州手柿釉薬餅花手梅鳥皿のように、通常の餅花手は、柿釉薬の上に白泥で絵を描き、その上に透明釉をかけて、高温で焼成します。

一方、今回の皿の技法は、象嵌の一種です。象嵌とは、金属、木などの素材表面を削り、そこへ他の素材を嵌める工芸技法です。

陶磁器では、中国磁州窯の白、黒象嵌、高麗の象嵌青磁、李朝粉青沙器の三島手などが象嵌の技法を用いています。

しかし、いずれも焼成前の柔らかな器胎を削り、そこへ色土を埋め込んだものです。この品のように、完全に焼きあがった硬いガラス質の表面を削ることはあり得ないのです。

この皿は、金属や木材などと異なり、硬く脆いので、彫りは極めて難しいはずです。しかも、枝部の直線的彫りだけでなく、花びらや鳥の曲線も一気に彫られています。

試しに、彫刻刀で挑んでみました・・・・硬い!!皿には、全く傷がつきません(^^;)

こんな皿を、一体、

誰が、

何のために、

どうやって造ったのでしょか?

 

謎は深まるばかりですが、困難に挑戦した昔人の心意気に敬意を表して、あえて呉州手、餅花手の語は削り、

『柿南京白象嵌梅鳥紋中皿』

の呼称を与えたいと思います(^.^)

 

 

 

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呉州手柿釉餅花手梅鳥紋中皿

2019年12月26日 | 古陶磁ー中国

呉州手柿釉餅花手梅鳥紋中皿(5枚)です。

先回の柿南京梅鳥紋中皿に、非常によく似ています。

普通、呉州(呉須)手と呼ばれている焼き物です。中国南部、福建省、広東省付近で、明末から清初にかけて焼かれた陶磁器群です。漳州窯が代表的窯です。

呉州赤絵といわれる焼き物を中心に、多量の陶磁器が輸出されました。積み出し港の名をとって、「スワトウ・ウェア」と呼ばれることもあります。

この手の焼き物は、中国にはほとんど残っていないと言われています。

呉州手の代表は呉州赤絵ですが、染付だけの青花大皿も大量に日本に入ってきました。

呉須手のなかで、数は少ないけれども、魅力的な焼き物が、餅花手です。瑠璃または柿色の器(主に皿)に、白釉で立体的に草花などを絵付けして焼いた物です。

正月用の餅飾りに似ているから、この呼び名がついたようです。

瑠璃餅花手と柿餅花手があります。柿餅花手の方が、数が少ないようです。

 

        径 15.4-16.8㎝。

5枚の皿の絵には、梅と思われる木と鳥(多分、鶯)が描かれています。わかりずらい絵もありますが、鳥も一匹ずつ描かれています。絵は、少しずつ違っています。5枚のうち2枚の皿には、上方に、丸く太陽(月?)が描かれています。

 

高台には、呉須手の特徴である砂が付着し、粗い素地が見えています。素地は、呉州赤絵など他の呉州手皿よりも、もっと鉄分が多く、柿釉自体と同じくらい濃い茶色です。

 

 

 

 

 

 

よく観察すると、この餅花手皿は5枚とも、白泥で絵付けした後に、透明釉をかけて焼かれていることがわかります。いわゆる釉下彩なのです。

この点が、呉州赤絵との大きな違いです。そのため、呉州赤絵皿の多くは、表面の色絵が、長年の間に擦れたり剥がれたりして薄くなっている物が多いのですが、餅花手のこの皿は、最初のままの状態を保っています。おそらく、呉州赤絵と同じように白泥で絵付けしたとしたら、分厚く色を置く白泥では、上絵付後焼成しても、簡単に剥がれ落ちてしまうでしょう。そのため、釉下に描く方法をとったのだと思われます。

柿色の鉄釉の掛け方は、かなりいい加減です。濃淡が極端であったり、掛かっていなくて素地が透けて見えている部分もあります。

やはり、雑器だったのですね。でも、その点が、詫び寂び意識に通じて、茶人に好まれたのかも知れません。

ものごと、何が幸いするかわかりませんね(^^;)

 

先回の柿南京梅鳥紋中皿との比較は、また後ほど。

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柿南京梅鳥紋中皿

2019年12月24日 | 古陶磁ー中国

ずいぶん昔に入手した皿です。

不思議な皿です。

産地、時代など不明で、棚の奥にしまってありました。

               径 16㎝

薄造りで堅く焼きしまっています。

大きなほつれがありますが、叩くと金属音が響きます。

 

鉄釉の上に、少し茶色い白泥が、イッチンの要領で細やかにかけられて模様を出しています。

梅に鶯?洒落た絵付けです。

 

 

高台内にまで全面施釉がなされています。

高台付近には砂が付着しています。

 

この皿で最も不思議なのは、絵を彫り込んであることです。漆器の沈金に似ています。

しかも、焼成後に鉄釉を削っています。どうやって削るのでしょうか。

その凹んだ部分に白泥がおかれてます。

 

右上の丸いほつれの部分も、よく見ると人為的に鉄釉が削いであります。ほつれではなく、月か太陽を表そうとしたのかも知れません。

 

 

 

どうしてここまで手をかけて作られたのかわかりません。

いずれにしても、手の込んだ上手の皿です。

 

最近、この手の品は、柿南京と呼ばれてきたことを知りました。

これでやっと、白南京瑠璃南京、柿南京が揃いました(^^;)

 

 

 

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ヌートリア柵と倒れた八朔

2019年12月22日 | ものぐさ有機農業

暖冬とはいえ12月末。いつ雪が降るかわかりません。

この辺はそれほど雪の多いところではありませんが、それでも例年、30㎝ほどの降雪が数回あります。

この時に畑の作物を食い荒らすのがヌートリア。

普段でも、そこかしこにたくさんいるのですが、美味しい柿の実がいっぱい落ちているので、野菜には目もくれません。

ところが、雪で地面が覆われると事情は一変。まとまって食べ物が得られる畑へ殺到してきます。朝起きてみてびっくり。夜行性なので、一晩で丸裸。こんな事がずいぶん続きました。

そこで、やむを得ず、毎年この時期に、畑全体を金網の柵で囲います。杭を数十本打ち、そこへ金網を固定してくのです。

 

こんな感じになります。

 

反対側も同じように作業。

 

実際は、まだ金網の固定、穴の補修、そしてヌートリアが攻めてくる水路側の補強をせねばなりません。

 

こんな事ならずーっと囲っておけばよさそうなものですが、夏場の草の管理が大変。

何よりも、囲った中で作業していると、自分が囲まれているような錯覚に陥り、気分的に良くありません(^^;)

モンキーセンターへ行って、檻越しに猿と長時間相対していると、どちらが檻の中にいるのかわからなくなりますよね。あの感覚(^^;)

そんなわけで、年末に設置し、2月に撤去するという面倒な作業を繰り返しているわけです。

 

これで、巨大に育った白菜やブロッコリーは大丈夫・・・・いえ、まだ空からの鳥の攻撃に備えねばなりません(^^;)

しかし、疲れたので、その作業はまた後日。

 

ふと目をやると、あの自分の重みで倒れた八朔の木が。

 

いつのまにやら、びっしりと実っています。

起こそうとしてもビクともしないので、そのままほおってありました。

数百個もなっているでしょうか。

しかし、どれも小さい。大きめのミカンほどです。

やっぱり、倒れた木ではねー・・・・

 

当然、剥いてもミカンなみ。

で、味は?

 

そっ、それが、ウマイーのひとことです。

濃厚で甘い。これまで何十年かで一番の味です。

そういえば、弱った果樹をよみがえらすのに、昔から根切りという方法がありました。ナスの土用疲れにも根を切ると良いといいます。

植物が危機を感じて、活性化するのだそうです。

しかし、これだけのかずの小粒八朔。どうやって食べたらよいのやら。皮を剥くだけでも・・・気が遠くなります。

 

          「倒れても なお実を結ぶ 八朔の冬」

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