西アフリカ、マリ共和国、ドゴン族の穀物庫の扉です。
ドゴン族は、人口約25万人、バンディアガラの断崖と呼ばれる乾燥地帯に居住する人たちです。
断崖の上の大地や下の平原にひっそりと住んでいます。争いを好まない彼らは、宗教的迫害や奴隷狩りから逃れ、このような場所で、外部との接触を断ちながら暮らしてきたので、独特の文化が発達しました。
仮面や家具などの木彫にも、非常に味わいのあるものが多く、アフリカを代表する木彫文化だと言ってよいでしょう。
その中でも、穀物庫の扉は、代表的な品です。穀物庫は、筒型の手造り土蔵で、その上部にこの扉が取り付けられています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/30/da4e4a8131bfd4e7e004a67cb64ab157.jpg)
大きさ、44x67x6.5㎝
、重さ、4kg。
穀物庫の扉としては、大型の部類です。
堅くて重い木からできています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/c5/bd2ab1a960ce94c3b0cf9c972a32c718.png)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/4f/fe9bb3efae5e2bdb986f44f64b8d8dd9.jpg)
かなり分厚い木(8㎝以上)から彫り出されています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/a6/4fd963c43b63169ee4ea5a37d3a258d7.jpg)
裏面。3枚の板を合わせていることがわかります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/1c/c87ee46c4c783f0a4dcb02b239f0b990.jpg)
下部と上部に横木をあて、手造りの鉄金具でしっかりと接合しています。この鉄釘も味わいが深く、全体と調和しています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/ab/97e2f70b3ea457df37c433bc10472d99.jpg)
扉は、ロックできるようになっています。
このドアロックの部分は別に作られ、金具で接合されています。ドアロック部分も独特の彫りがなされているので、この部分だけ売られることもあります。
扉の彫刻を上から見ていくと
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/e7/bc182dc291d1bc31a9f64f0dccaebf1e.jpg)
仮面(カナガ仮面、葬儀の仮面舞踏に使われる)をつけた男たちが、2人の男性に挟まれています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/20/05705212647ed12beaea07f3b09a6ec2.jpg)
女性を表しているのでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/fd/3abd12540f6d0c632bbd4f6430857003.jpg)
男たちとウサギ?の仮面をつけた人物。
最下部には、なにやら物語の場面が彫られています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/81/ac4e5a3b52e88b9cbb6aebdaf1c21c6f.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/6e/bb8defc643c7f4c390736bc0b141481d.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/7a/70db1b01582b4e5db270b981f287148d.jpg)
これは、ヘビ?
ドゴン族は、独特の世界観、宇宙観をもっていて、それがこの扉にも反映されています。扉の彫刻は、彼らの社会に伝わる神話を表していると考えられます。また、様々な災いから自分たちをから守るため、動物や人をモチーフとした精霊の装飾を施したとも言われています。
ヨーロッパやアメリカでは、アフリカの彫刻は人気が高く、コレクターも多くいます。日本では、20年程前、多数のアフリカ彫刻が招来された時期があり、価格も高騰しましたが、その後は落ちついています。
ドゴン族の穀物庫扉は、デザイン的にすぐれていて、壁掛けなどに適しているため人気が高く、バイヤーによって数多くの品が西欧諸国へ渡りました。その結果、ドゴン族の穀物庫の扉の多くが、廃材のアルミサッシなどに変ったと言われています。
なんともやりきれない話ですが、私も一枚持っているのです。
嗤うアフリカ! 嗤われているのは私たちなのかもしれません。