遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

陶胎七宝沈香壷

2024年08月05日 | 陶磁胎七宝

少し寄り道をしました。陶胎七宝に戻ります。

陶胎七宝の沈香壷です。

陶胎七宝としては、大型の品です。

蓋の上には、沈香壷に定番の獅子が鎮座しています。

大きな窓絵の草花蝶紋が前、後ろに配置され、サイドは幾何学紋になっています。

胴径 16.4㎝、底径 9.0㎝、高 35.4㎝。重 1360g。明治初期。

18世紀、ヨーロッパへの輸出品の花形であった伊万里焼の沈香壷を、明治初期、陶胎七宝でリニューアルした物といえますね。

蓋と本体に分かれます。

クリーム色の素地や地を埋めるハート形の植線などからして、これまで多く紹介してきた京焼系の品であると推定されます。

蓋の把手(獅子以外)は、陶胎七宝です。

獅子は、色釉で彩色されています。

 

蓋の内側にも釉薬がかけられています。

一方、本体と接する部分は、無釉です。

蓋と同じく、本体の内側には上釉がかけられていますが、蓋と接する部分は無釉です。

本体の首と肩は、幾何学模様で装飾されています。

胴の窓絵は二種、いずれも草花に蝶の模様です。

サイドは、花の幾何学模様。

陶胎七宝沈香壷が、かつての伊万里焼にならって、ヨーロッパで再び人気を博したかどうか、定かではありません。ただ、明治初期に輸出された陶胎七宝のうち、沈香壷は珍しい部類に入ります。ということは、それほどの数は作られず、人気の輸出品ではなかったと思われるのです(^^;

 

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

陶胎盛上色絵幾何学紋小花瓶(一対)

2024年08月03日 | 陶磁胎七宝

今回の品は七宝ではありません。七宝風色絵陶器とでも呼ぶべき品でしょうか。

裏と表は同じ模様です。

サイドの模様が、二つでわずかに違います(右には赤〇がない)。

 

 

口径 1.8㎝、胴径 4.4㎝、底径 3.0㎝、高 12.2㎝。重 105g(1個)。明治ー大正。

小さな一対の花瓶です。

陶胎七宝のものと同じ、クリーム色の陶土が使われています。

全面に分厚く色釉が塗られています。

このような色釉は、先回の陶胎七宝鶴首花瓶はもとより、錦光山系の色絵陶器や万古焼など、明治期の輸出向陶器に多く使われました。

 

 

しかし、その使われ方は、草花の絵付けなど、ポイントを強調するためのものです。それに対して今回の品は、地も含め、同じような色釉が、全面に使われています。しかも、模様の輪郭を彫り込んでいます。七宝で金属植線による縁取りの代わりでしょうか。これらの事を勘案すると、この品は、陶胎七宝を意識して作られたと思われるのです。

実のところ私は、ネットオークションの写真をチョッと見しただけで、陶胎七宝と思い込み、落札しました(^^;

手に収まるほどの可愛らしい花瓶です。

先日のブログ、陶胎七宝鶴首花瓶に対して、みことさんからコメントをいただきました。「以前NZ人の高齢女性から、violet vaseなる、スミレ用花瓶の話を聞きました。」「花瓶の口の狭さで花を盛るように活ける小さな花瓶のことを指すようです。」「この大きさは過去のものらしく、「なかなか見つからない」ということでした。そして、陶胎七宝鶴首花瓶がviolet vaseに相当するのではないかとのコメントでした。

鶴首花瓶もいいですが、あまりに口が狭く、水の出し入れなどが大変です。むしろ、今回の品の方が、violet vaseにふさわしいのではないかと思いました。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

陶胎七宝花蝶紋中皿

2024年08月01日 | 陶磁胎七宝

今回は、陶胎七宝の中皿です。

これまで見てきたように、陶胎七宝のほとんどは、袋物のような器です。平面的な皿は稀です。その理由ははっきりしません。推測するに、明治初期に輸出する際、諸外国で室内に飾れる器を優先させたからだろうと思われます。立体ものであれば、そのまま置いて様になります。ところが、皿だと立てなければなりません。しかも、そこそこの大きさでないと、飾り映えがしません。そんなわけで、皿の類が少ないのだろうと考えています。

今回の品は、その少ない皿の一つです。

 

 

口径 19.7㎝、高台径 10.1㎝、高 2.6㎝。重 432g。明治初期。

以前に紹介した陶胎七宝小皿と同じく、半陶半磁の胎土です。今回の品の方が、もう少し磁器がかっています。

釉薬は、通常の磁器の釉薬とほぼ同じです。

ズシリと重い皿です。

高台の内側に、微細な砂が付いています。

全面に、細かいジカンがびっしりと出ています。まるでひび焼きのようです。

表面は大きく3つに分割され、それぞれに、花々と二匹の蝶が泥七宝で表されています。

地は、ハート形の植線でびっしりと埋められています。これは、京都錦光山の陶胎七宝の特徴です。ただ、土はかなり異なります。このような品も、京都で作られたのでしょうか。

外周は鍔状になっていて、ここには七宝が施されていません。かわりに、色釉で分厚く、花が描かれています。

右側の白い花の真ん中は、白く凸凹になっています。

これは疵か?

と思い、他の花を見てみたところ・・

貝のような模様になっているではありませんか。

これは、花芯を表しているのですね。

なかなかに芸が細かいです(^.^)

色目もはなやかだし、これなら、ヨーロッパの小部屋を飾るのに良い品だったのかもしれません。

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする