12月9日、阪神の赤星憲広選手が33歳の若さで「中心性脊髄損傷」を理由に引退を発表しました。
赤星選手は盗塁の数だけ車椅子を寄付していたそうです。
直接の原因は9月12日の試合、右中間へのダイビング。
強い衝撃によって、骨に守られた頚部脊髄の中心部が損傷したようです。
中心部に損傷が強いと、下肢より上肢の症状が重くなります。
また脊髄の中心部は血管からの栄養供給も限られており、損傷を受けた場合の回復はかなり難しいとされています。
赤星選手の場合、頚椎ヘルニアの既往もあったため、ダイビングの衝撃を吸収しきれなかったことも要因の1つかもしれません。
本人にとって苦渋の決断だと思いますが、ファンにとっても本当に残念。
後遺症の状態などについては詳しく報道されませんが、気になります。
治療費については球団補償があるのでしょうが…。
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脊髄損傷はその度合により、「完全」と「不完全」の2つに大別されます。
完全脊髄損傷の場合、脊髄が離断を起こした部分以下の弛緩麻痺・感覚および反射の消失、自律神経機能不全がみられます。
不完全脊髄損傷の場合、症状は損傷部位に応じて異なります。
臨床的には以下の症状が多いようです。
・中心脊髄症候群
・ブラウン・セカール症候群
・前脊髄症候群
・脊髄円錐症候群
・馬尾症候群
詳細は
メルクマニュアル オンライン版 が参考になります。
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全国労災病院脊髄損傷データベース によれば、脊髄損傷の原因は交通事故・転落・起立歩行時の転倒・下敷落下物・スポーツ・自殺企図の順。
中心性脊髄損傷の大きな特徴は、頚椎の骨折を伴わないこと。
交通事故後、牽引などの保存療法に効果がなければ脊髄損傷の可能性もあります。
この場合、X線画像には映りません。
臨床症状と画像所見が一致しない場合、MRI(磁気共鳴画像)・PET(ポジトロン断層法)・SSEP(体性感覚誘発電位)・MEP(運動誘発電位)を用いることも。
外傷性頸部症候群(頸椎捻挫、一般的には「むち打ち症」)と診断されたのに、手の痛みや痺れがなかなか改善しない場合は、追加の検査が必要かもしれません。
慢性期にはMRIのT1強調画像で、軟化型損傷をチェックするようです。
後遺障害が残る可能性があれば、神経学的検査(ジャクソンテスト、スパークリングテスト、知覚テスト、反射検査など)や画像診断(X線、CT、MRIなど)等、総合的な検査を早めに受けておくことも重要でしょう。
後遺障害の認定には、客観的な資料(医師の診断書など)が必要となるからです。
残念ながら、自覚症状だけでは認定を受けるのは難しいようです。