気まぐれ徒然かすみ草ex

京都に生きて短歌と遊ぶ  近藤かすみの短歌日記
あけぼのの鮭缶ひとつある家に帰らむ鮭の顔ひだり向く 

短歌人7月号 同人のうた その3

2015-07-18 19:25:47 | 短歌人
襟首にふんわり春が舞い降りるすみれいろした絹のストール
(青柳泉)

静脈の浮く手に雨の気配寄る文月に咲く夕顔の記憶
(梶田ひな子)

兵隊さんと称(よ)ばれぬためにこの吾に為すことありや十歳の孫(こ)へ
(山下柚里子)

一歩づつふみしめ辿る杣道に二人静の花さきてゐる
(庭野摩里)

泣きながら手を引かれゆく幼子は吾かもしれず葉桜の街
(松永博之)

不条理なこの世の外に咲けるかな白木蓮は空のまほらを
(大和類子)

守るものあるは良きこと佐渡百合の球根埋めしけふの三鉢
(斎藤典子)

もうだれも住まずなりたる実家(さと)の庭 檜扇水仙はな咲かすころ
(今井千草)

すこやかな眠り奪わる夢のなか中途半端な善人は来て
(谷村はるか)

母の日に一日遅れて見舞ひたれば特養ホームに<汽車>を待つ母
(大森益雄)

***********************************

短歌人7月号、同人1欄より。