次に目が覚めたら言うよそれまでは一葉の舟に満たすあかるさ
図書館の出窓に重ねられたまま眠る楽譜のよう春の日は
祈りとは家族映画に怯むときゆびのすき間に挟まれるゆび
菜の花を食めばふかぶか疼くのは春を紡いでいる舌の先
見なかったことはなかったことですかシャンパングラスの花の彫刻
書きかけの手紙に伏せて眠るときだれかを待っている雨後の森
夏帽子いつか呼ばれて振り返る向こう側には来世があるの
半年は死ねないように生き延びるために予定を書く細いペン
生活の中に輪ゴムを拾うとき憎しみのほんとうにかすかな息吹
若いひとと軽くくくられクロッカスわたしはわたしのために笑った
(田丸まひる ピース降る 書肆侃侃房)
***********************************
未来短歌会の田丸まひるの第三歌集『ピース降る』を読む。
書肆侃侃房のユニヴェールというシリーズの一冊。
感覚的で繊細なことばに込められた詩情を愉しむことのできる歌集、とでも言おうか。歌そのものを読んで楽しむ歌集である。お洒落で切ない。作者の経歴や実人生などを歌から想像するのは、野暮というものだろう。ざっと読んで、十首を選んだが、もう一度読むとまた新たな発見がありそうだ。
http://www.shintanka.com/univers
図書館の出窓に重ねられたまま眠る楽譜のよう春の日は
祈りとは家族映画に怯むときゆびのすき間に挟まれるゆび
菜の花を食めばふかぶか疼くのは春を紡いでいる舌の先
見なかったことはなかったことですかシャンパングラスの花の彫刻
書きかけの手紙に伏せて眠るときだれかを待っている雨後の森
夏帽子いつか呼ばれて振り返る向こう側には来世があるの
半年は死ねないように生き延びるために予定を書く細いペン
生活の中に輪ゴムを拾うとき憎しみのほんとうにかすかな息吹
若いひとと軽くくくられクロッカスわたしはわたしのために笑った
(田丸まひる ピース降る 書肆侃侃房)
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未来短歌会の田丸まひるの第三歌集『ピース降る』を読む。
書肆侃侃房のユニヴェールというシリーズの一冊。
感覚的で繊細なことばに込められた詩情を愉しむことのできる歌集、とでも言おうか。歌そのものを読んで楽しむ歌集である。お洒落で切ない。作者の経歴や実人生などを歌から想像するのは、野暮というものだろう。ざっと読んで、十首を選んだが、もう一度読むとまた新たな発見がありそうだ。
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