気まぐれ徒然かすみ草ex

京都に生きて短歌と遊ぶ  近藤かすみの短歌日記
あけぼのの鮭缶ひとつある家に帰らむ鮭の顔ひだり向く 

鱧と水仙54号

2020-02-28 01:23:20 | 鱧と水仙
アラビアの地より戻れば秋の庭みしりと草の統べる王国
手にまるく火を囲ひつつ受けわたす人と人セブンイレブンの前
(火を囲ふ 鱧と水仙54号)

水仙号が出ました。
巻頭30首「火を囲ふ」と『花折断層』の書評を載せてもらっています。
特集は「わたしの売りたいもの」です。

襠裲 森田悦子 現代短歌社

2020-02-15 23:38:10 | 歌集
蒔かれたる場所に根下ろす草に似て六十年を衣縫ひて来ぬ

襠裲を仕上げて息ぬきせし日より数日病みて父は逝きたり

早逝せし夫の蔵書にはさまれてはじけるやうな笑顔のわれが

道端の老婦人の売るコスモスの花束に小さく「百円」とあり

待つひとの居るごと購ひしバゲットを抱へて日ぐれの踏切の前

ちりめん山椒 肴にゆるゆる飲みをりぬ何とわたしにふさはしい夜

ひと言も人と語らず過ぐる日は記憶のなかの多くと語る

交尾終へし雄猫けだるく帰る道夾竹桃はあかあかと咲く

信号が青になるまで恋をしぬ弁天町交差点に美青年ゐて

わが縫ひし法衣にしづかに染みてゐむ雪の高野(かうや)の朝の声明

(森田悦子 襠裲 現代短歌社)