気まぐれ徒然かすみ草ex

京都に生きて短歌と遊ぶ  近藤かすみの短歌日記
あけぼのの鮭缶ひとつある家に帰らむ鮭の顔ひだり向く 

短歌人7月号 同人のうた その3

2014-07-12 00:15:59 | 短歌人
音ひとつなき連休をままごとのごとく人参小さく刻む
(曽根篤子)

ふっくらと身を包みいる桜闇見上ぐるあたりの闇が匂いき
(水谷澄子)

おみやげにと言いて幼が入れくれし籠のどんぐり時に鳴らせり
(立花みずき)

ひとりきり橋下徹が笑ひをり余白ばかりの看板の中
(西台恵)

金箔の少し剝がれし仏像の頬の親しもあかるき御堂
(人見邦子)

「やなことは忘れるなっしー」経文の抑揚にて聞く朝方の夢
(北村望)

土曜日の夜の公共放送に『ロング・グッドバイ』見るこの国の憂愁
(藤原龍一郎)

すべて無にしたき夜のありわづかなる酒に酔ひつつ行つたり来たり
(宇田川寛之)

食べて寝てトイレ済ませてまた眠るわが老犬にあい似るわれか
(橘圀臣)

いちめんに毛玉付きたるセーターを着てゐし冬も昭和の記憶
(菊池孝彦)

****************************************

短歌人7月号。同人1欄より。


短歌人7月号 同人のうた その2

2014-07-08 20:56:40 | 短歌人
片付けし冷蔵庫のなか明るくて春雲のような卵が並ぶ
(木曽陽子)

十年をともに暮らしし自転車のベルを鳴らせり最後のベルを
(関谷啓子)

遅ざくら名残りの花もよきかなとぽんと黄色き雨傘ひらく
(三井ゆき)

「いろはす」の水をひとくちわが飲みてふたりの娘をおもふなりけり
(小池光)

開店と同時にひとりが吸われゆく新装の「髪切家やまぐち」
(川田由布子)

まんさくとふめでたき名もて咲く花の黄のいろ淡くちさきも床し
(蒔田さくら子)

花水木のしろき花咲く道あればひぐれの足はどこまでもゆく
(高田流子)

金曜のゴミ出しの日は空き缶をからから笑わせ階段下りる
(川島眸)

缶詰の白桃の甘きしたたりをなつかしみつつ咳の夜ひとり
(松圭子)

薄闇に和蝋燭などおもはせる京都タワーの明滅を見き
(原野久仁子)

****************************************

短歌人7月号、同人1欄より。

短歌人7月号 同人のうた

2014-07-06 00:36:12 | 短歌人
長身の弟が屈みて祈るときキリストの背が幻に見ゆ
(有沢螢)

抽出しを開けて閉むるときかぎりなくさびし 神よそこに居らるるか
(酒井佑子)

仙台のさくらの季を病み籠りすこしく父はしろくなりたり
(洞口千恵)

サイレンが鳴り終はつても願はくはきみのゐる天(そら)どこまでも晴れ
(橘夏生)

「大丈夫」なる語が不意に気になりて膨らみやまぬ違和の感覚
(高野裕子)

薔薇の花さくおうちより赤ちやんの泣き声きこゆうれしきものを
(岡田幸)

かなしむとき人は泣かぬよ知るからに微笑む一人をとほく見まもる
(金沢早苗)

合歓の花うすべにいろの刷毛はきて死は近づきぬねむりのごとく
(大森浄子)

沸く乾く炊くを知らせる家電器の音を平成の調べと聞きぬ
(杉山春代)

あかご泣くこゑはめざまし赤瓦ひくくのせたる家のうちより
(佐々木通代)

****************************************

短歌人7月号、同人1欄より。

先月の半ばより、以前のブログ「気まぐれ徒然かすみ草」に、私自身が入ることができなくなりました。いろいろ試しましたが、上手く行かないので、こちらで再出発します。内容は、以前と変わりません。よろしくお願いいたします。