●日本の常識は世界の非常識
①学校は行かねばならぬという常識……アメリカにはホームスクールという制度がある。親が
教材一式を自分で買い込み、親が自宅で子どもを教育するという制度である。希望すれば、州
政府が家庭教師を派遣してくれる。日本では、不登校児のための制度と理解している人が多
いが、それは誤解。
アメリカだけでも九七年度には、ホームスクールの子どもが、一〇〇万人を超えた。毎年一
五%前後の割合でふえ、二〇〇一年度末には二〇〇万人に達するだろうと言われている。そ
れを指導しているのが、「Learn in Freedom」(自由に学ぶ)という組織。「真に自由な教育は家
庭でこそできる」という理念がそこにある。地域のホームスクーラーが合同で研修会を開いた
り、遠足をしたりしている。またこの運動は世界的な広がりをみせ、世界で約千もの大学が、こ
うした子どもの受け入れを表明している(LIFレポートより)。
②おけいこ塾は悪であるという常識……ドイツでは、子どもたちは学校が終わると、クラブへ通
う。早い子どもは午後一時に、遅い子どもでも三時ごろには、学校を出る。ドイツでは、週単位
(※)で学習することになっていて、帰校時刻は、子ども自身が決めることができる。そのクラブ
だが、各種のスポーツクラブのほか、算数クラブや科学クラブもある。
学習クラブは学校の中にあって、たいていは無料。学外のクラブも、月謝が一二〇〇円前後
(二〇〇一年調べ)。こうした親の負担を軽減するために、ドイツでは、子ども一人当たり、二
三〇マルク(日本円で約一四〇〇〇円)の「子どもマネー」が支払われている。この補助金は、
子どもが就職するまで、最長二七歳まで支払われる。
こうしたクラブ制度は、カナダでもオーストラリアにもあって、子どもたちは自分の趣向と特性
に合わせてクラブに通う。日本にも水泳教室やサッカークラブなどがあるが、学校外教育に対
する世間の評価はまだ低い。ついでにカナダでは、「教師は授業時間内の教育には責任をも
つが、それ以外には責任をもたない」という制度が徹底している。
そのため学校側は教師の住所はもちろん、電話番号すら親には教えない。私が「では、親が
先生と連絡を取りたいときはどうするのですか」と聞いたら、その先生(バンクーバー市日本文
化センターの教師Y・ムラカミ氏)はこう教えてくれた。「そういうときは、まず親が学校に電話を
します。そしてしばらく待っていると、先生のほうから電話がかかってきます」と。
③進学率が高い学校ほどよい学校という常識……つい先日、東京の友人が、東京の私立中
高一貫校の入学案内書を送ってくれた。全部で七〇校近くあった。が、私はそれを見て驚い
た。どの案内書にも、例外なく、その後の大学進学先が明記してあったからだ。別紙として、は
さんであるのもあった。「○○大学、○名合格……」と(※)。
この話をオーストラリアの友人に話すと、その友人は「バカげている」と言って、はき捨てた。そ
こで私が、では、オーストラリアではどういう学校をよい学校かと聞くと、こう話してくれた。
「メルボルンの南に、ジーロン・グラマースクールという学校がある。そこはチャールズ皇太子
も学んだこともある古い学校だが、そこでは生徒一人ひとりにあわせて、学校がカリキュラムを
組んでくれる。たとえば水泳が得意な子どもは、毎日水泳ができるように。木工が好きな子ども
は、毎日木工ができるように、と。そういう学校をよい学校という」と。なおそのグラマースクー
ルには入学試験はない。子どもが生まれると、親は出生届を出すと同時にその足で学校へ行
き、入学願書を出すしくみになっている。つまり早いもの勝ち。
●そこはまさに『マトリックス』の世界
日本がよいとか、悪いとか言っているのではない。日本人が常識と思っているようなことで
も、世界ではそうでないということもある。それがわかってほしかった。そこで一度、あなた自身
の常識を疑ってみてほしい。あなたは学校をどうとらえているか。学校とは何か。教育はどうあ
るべきか。さらには子育てとは何か、と。その常識のほとんどは、少なくとも世界の常識ではな
い。
学校神話とはよく言ったもので、「私はカルトとは無縁」「私は常識人」と思っているあなたにし
ても、結局は、学校神話を信仰している。「学校とは行かねばならないところ」「学校は絶対」
と。それはまさに映画『マトリックス』の世界と言ってもよい。仮想の世界に住みながら、そこが
仮想の世界だと気づかない。気づかないまま、仮想の価値に振り回されている……。
●解放感は最高!
ホームスクールは無理としても、あなたも一度子どもに、「明日は学校を休んで、お母さんと
動物園へ行ってみない?」と話しかけてみたらどうだろう。実は私も何度となくそうした。平日に
行くと、動物園もガラガラ。あのとき感じた解放感は、今でも忘れない。「私が子どもを教育して
いるのだ」という充実感すら覚える。冒頭の話で、目を白黒させた人ほど、一度試してみるとよ
い。あなたも、学校神話の呪縛から、自分を解き放つことができる。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩
司
子育て随筆byはやし浩司(163)
①学校は行かねばならぬという常識……アメリカにはホームスクールという制度がある。親が
教材一式を自分で買い込み、親が自宅で子どもを教育するという制度である。希望すれば、州
政府が家庭教師を派遣してくれる。日本では、不登校児のための制度と理解している人が多
いが、それは誤解。
アメリカだけでも九七年度には、ホームスクールの子どもが、一〇〇万人を超えた。毎年一
五%前後の割合でふえ、二〇〇一年度末には二〇〇万人に達するだろうと言われている。そ
れを指導しているのが、「Learn in Freedom」(自由に学ぶ)という組織。「真に自由な教育は家
庭でこそできる」という理念がそこにある。地域のホームスクーラーが合同で研修会を開いた
り、遠足をしたりしている。またこの運動は世界的な広がりをみせ、世界で約千もの大学が、こ
うした子どもの受け入れを表明している(LIFレポートより)。
②おけいこ塾は悪であるという常識……ドイツでは、子どもたちは学校が終わると、クラブへ通
う。早い子どもは午後一時に、遅い子どもでも三時ごろには、学校を出る。ドイツでは、週単位
(※)で学習することになっていて、帰校時刻は、子ども自身が決めることができる。そのクラブ
だが、各種のスポーツクラブのほか、算数クラブや科学クラブもある。
学習クラブは学校の中にあって、たいていは無料。学外のクラブも、月謝が一二〇〇円前後
(二〇〇一年調べ)。こうした親の負担を軽減するために、ドイツでは、子ども一人当たり、二
三〇マルク(日本円で約一四〇〇〇円)の「子どもマネー」が支払われている。この補助金は、
子どもが就職するまで、最長二七歳まで支払われる。
こうしたクラブ制度は、カナダでもオーストラリアにもあって、子どもたちは自分の趣向と特性
に合わせてクラブに通う。日本にも水泳教室やサッカークラブなどがあるが、学校外教育に対
する世間の評価はまだ低い。ついでにカナダでは、「教師は授業時間内の教育には責任をも
つが、それ以外には責任をもたない」という制度が徹底している。
そのため学校側は教師の住所はもちろん、電話番号すら親には教えない。私が「では、親が
先生と連絡を取りたいときはどうするのですか」と聞いたら、その先生(バンクーバー市日本文
化センターの教師Y・ムラカミ氏)はこう教えてくれた。「そういうときは、まず親が学校に電話を
します。そしてしばらく待っていると、先生のほうから電話がかかってきます」と。
③進学率が高い学校ほどよい学校という常識……つい先日、東京の友人が、東京の私立中
高一貫校の入学案内書を送ってくれた。全部で七〇校近くあった。が、私はそれを見て驚い
た。どの案内書にも、例外なく、その後の大学進学先が明記してあったからだ。別紙として、は
さんであるのもあった。「○○大学、○名合格……」と(※)。
この話をオーストラリアの友人に話すと、その友人は「バカげている」と言って、はき捨てた。そ
こで私が、では、オーストラリアではどういう学校をよい学校かと聞くと、こう話してくれた。
「メルボルンの南に、ジーロン・グラマースクールという学校がある。そこはチャールズ皇太子
も学んだこともある古い学校だが、そこでは生徒一人ひとりにあわせて、学校がカリキュラムを
組んでくれる。たとえば水泳が得意な子どもは、毎日水泳ができるように。木工が好きな子ども
は、毎日木工ができるように、と。そういう学校をよい学校という」と。なおそのグラマースクー
ルには入学試験はない。子どもが生まれると、親は出生届を出すと同時にその足で学校へ行
き、入学願書を出すしくみになっている。つまり早いもの勝ち。
●そこはまさに『マトリックス』の世界
日本がよいとか、悪いとか言っているのではない。日本人が常識と思っているようなことで
も、世界ではそうでないということもある。それがわかってほしかった。そこで一度、あなた自身
の常識を疑ってみてほしい。あなたは学校をどうとらえているか。学校とは何か。教育はどうあ
るべきか。さらには子育てとは何か、と。その常識のほとんどは、少なくとも世界の常識ではな
い。
学校神話とはよく言ったもので、「私はカルトとは無縁」「私は常識人」と思っているあなたにし
ても、結局は、学校神話を信仰している。「学校とは行かねばならないところ」「学校は絶対」
と。それはまさに映画『マトリックス』の世界と言ってもよい。仮想の世界に住みながら、そこが
仮想の世界だと気づかない。気づかないまま、仮想の価値に振り回されている……。
●解放感は最高!
ホームスクールは無理としても、あなたも一度子どもに、「明日は学校を休んで、お母さんと
動物園へ行ってみない?」と話しかけてみたらどうだろう。実は私も何度となくそうした。平日に
行くと、動物園もガラガラ。あのとき感じた解放感は、今でも忘れない。「私が子どもを教育して
いるのだ」という充実感すら覚える。冒頭の話で、目を白黒させた人ほど、一度試してみるとよ
い。あなたも、学校神話の呪縛から、自分を解き放つことができる。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩
司
子育て随筆byはやし浩司(163)