工業製品で『クレーム』が発生するメカニズムについて書いてみます。
設計者がそのもてる工学的知識と創造力、そして、情熱をそそいで設計し、試作、量産試作と十分な検証・評価をおこない、生産技術担当者が品質の安定と生産能率を追求して設計した工程と生産設備をつかって生産し、工程内、工程間、出荷検査などの品質管理という関所を通過して出荷された製品が、市場にでて予想もしない早さでトラブルを起こし、クレームが発生するのか?について考察してみました。
まず、複数の個体で寸法や機能が理想値からランダムにずれが発生している状態を 「ばらつき」 があるといい、設計者を含め技術者はこのことばをよく口にします。
しかし、自分の仕事に傾注すると、「ばらつき」 に対する意識が薄れる傾向にあることが多いのではないでしょうか。
設計者は部品の寸法や機能について公差を定めたり、その範囲を確認して購入品を選択したりします。このとき、公差の集積を計算し、場合によっては公差解析を実施して設計段階で設計不良にならないか、などを確認をします。私も含めて設計者が「ばらつき」を気にするのはこのときだけになることが多いのではないでしょうか。
生産技術の担当者も設計段階では自身が設計する工程や設備について「ばらつき」を気にするのですが、その工程や設備はいったん完成してしまうと、そこからの成果物自体についての「ばらつき」に関する意識は薄れてしまいます。
一方、つねに「ばらつき」との戦いにさらされている品質管理担当者は、当然、製品品質の「ばらつき」におおいに注目しています。しかし、どうしても、製品自体の品質の「ばらつき」に対する注意や意識であり、ほかの技術者ともども、その製品が使われる市場での環境や使われ方に関する「ばらつき」についてはほとんど気にとめていない場合が多いのではないでしょうか。
「ユーザーは、製品の使い方については驚くほど想像力がはたらかず、使い道については恐ろしいほどの想像力を発揮する」というのが30年以上技術職に携わってきた私の感想です。
唯一、製品品質と市場での環境や使われ方の両方の「ばらつき」を意識しているのは品質保証にかかわる技術者だけかもしれません。しかし、製品品質の「ばらつき」の大きさはある程度把握できているかもしれませんが、市場環境や使われ方の「ばらつき」の実態はほとんどつかめていないことでしょう。
過去の経験などから
「ひどい場所で使うお客さんがいてさぁ ・・・」とか、
「ひどい使い方をするお客さんがいてさぁ ・・・」 などと口にすることはあっても、その状態やひどさのレベルについて明確に言及することはできません。
したがって、
「これくらいひどい環境やひどい使われ方の経験があり、このひどさは正規分布で●シグマくらいだから、設計マージンはこれくらい必要だよ。」などと設計情報として設計者にフィードバックすることもできません。
では、クレーム発生のメカニズムと、なるべくクレームが発生しないための戦術についての情報を、次回紹介いたします。
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