前回、サンプリング間隔1msec(サンプリング周波数1kHz)で499.9Hzのsin波(緑)と
499.964Hzのsin波(黄色)を32768(2の15乗)個サンプリングした下図の結果を
示しました。
これをFFTするとどうなるか?その結果を示します。
まず、両端は強制的にゼロにする矩形窓という窓関数と、最も一般的なハニング窓でFFTした結果です。
上から499.9Hz を矩形窓でFFTした結果、499.9Hz をハニング窓でFFTした結果、499.964Hzを矩形窓でFFTした結果、
最後が499.964Hz をハニング窓でFFTした結果です。
sin波の振幅は±√2(1.4142)Vですから、実効値は1V になります。
各グラフとも縦軸は0.2V/div で表示しています。
499.9Hzを矩形窓でFFTした結果はスペクトルのすそ野が広がり気味で、縦軸の実効値は0.9V 程度です。
また、それをハニング窓でFFTした結果は、スペクトルのすそ野が広く、さらに扁平でひすみがあり、実効値は0.5V 弱です。
一方、499.964Hzを矩形窓でFFTした結果は、FFTtが尖頭的であり実効値はぴたりと1V です。
しかし、ハニング窓でFFTした結果は少しすそ野が広がりひずみがあり、さらに実効値は0.5V ちょうどです。
これらの結果から、FFTして源信号の実効値が正確に分析できるのは、対象信号を2のn乗個離散的にサンプリングして
その両端がゼロであり、信号の周波数とサンプリング周波数の関係が499.964Hzと1kHz の場合のような特別な関係に
あるときだけです。めがねのように見える観測結果の場合だけです。
ナイキストサンプリングとはただ単純に信号周波数の2倍よりちょっと早い周波数で
サンプリングすればよい、ということではありません。
めがねのように観測するのが本当のナイキストサンプリングです。
ハニングなどの窓関数を使ってもこの問題を解決することはできません。窓関数は、横軸(周波数軸)の情報をなるべく正確に調べるために使います。
つまり、ある信号をあるサンプリング周波数で観測したとき、偶然にめがねのように観測できる周波数成分が存在すればその成分の実効値は正確に計測できるということです。
多数のsin波で構成されている信号の場合、FFTの結果の縦軸の意味は非常に希薄なものになってしまうのです。
次回は、この内容をもう少し深堀してみます。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます