前回 真のナイキストサンプリングとはどのようなものか?を説明しました。
そして、真のナイキストサンプリングがなされていないと、FFTして得られた
周波数とパワーの情報は正確ではなくなる、ということも説明しました。
また、窓関数の性質についても少し説明しました。
今回は、多くの方(その中にはFFTを指導されている方も)が誤解している内容について
紹介します。
一般的に、なにかを観察するときには、なるべく細密に調査する、つまり、分解能を
高くして観察したほうが、観測対象の特性や状態をより詳しく把握できます。
FFTの場合もそうでしょうか?
前回のようにサンプリング間隔を1〔msec〕(サンプリング周波数:1kHz)でメガネ型の
サンプリング結果となるsin波の周波数は499.969481Hzです。
この周波数の1/4程度の周波数は約125Hzですから、125Hz程度のsin波を同じ
サンプリング間隔でサンプリングすると、499.969481Hzの4倍の観測密度になります。
こちらのほうが、より正確に観測対象信号の特性をとらえることができそうですが ・・・
信号の開始点と終点がゼロになるような125Hzに近いsin波の周波数は
124.9732963Hz になります。
上のグラフの左側最上段が1msecのサンプリング間隔でナイキストサンプリングできる
499.969481Hzのsin波を2の15乗(32768)個サンプリングした結果です。
左側2段目は1周期を4倍の観測密度でサンプリングできる124.9732963Hzのsin波を
2の15乗個サンプリングした結果です。ともに実効値は1V です。
それぞれのグラフの右にはその信号を矩形窓でFFTした結果を表示しています。
真のナイキストサンプリングができている499.969481Hz のsin波をFFTした結果の
スペクトルのピーク位置は499.9695Hzで、ピーク値は1.000V と、正確に波の
特性をとらえることができています。
しかし、124.9732963Hzのsin波を矩形窓でFFTした結果のスペクトルはすそ野が
若干広がっています。そして、スペクトルのピーク位置は124.72534Hz、ピーク値は
0.974V となって真のナイキストサンプリングができている信号の観測結果よりも
若干精度が悪くなっています。
観測密度を高くしても、波の特性は正確につかめるわけではありません。
メガネ型のサンプリング結果になったとき、もっとも正確にその波の特性を把握できる
のがFFTという信号処理です。
左側3段目は両者の信号を足すことで合成した信号です。
その右はこの合成信号を矩形窓でFFTした結果です。二つのピークはそれぞれの
sin波をFFTして得られた結果とぴたりと一致しました。
つまり、複数の異なる周波数のsin波を合成して得られた信号をFFTすると、もとの
単独のsin波をFFTした結果と一致します。
左最下段は合成信号のスタート部分の拡大、その左は合成信号の500Hz付近の
FFT結果のスペクトルです。
次回はメガネ型以外のナイキストサンプリングの特徴について紹介する予定です。
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