goo blog サービス終了のお知らせ 

QT Lab.品質・技術研究室

技術者のための品質工学、品質管理、統計学、機械設計、信号処理を
解説します。

SN比の検証方法

2014-05-25 09:34:42 | 品質工学

 昨日も横浜港への散歩で、巨大な客船を見ることができました。

 『ダイヤモンド・プリンセス』 です。

 

Ncm_0880 Ncm_0884
      赤レンガ倉庫広場から撮影             「象の鼻」桟橋側から撮影

Ncm_0886  
      山下公園から撮影

 『ダイヤモンド・プリンセス』 は三菱重工業 長崎造船所で建造されました。
11万6千トン 全長290mという巨大な船です。
 『世界遺産の地・済州島と台湾周遊10日間』のクルーズの途中だそうです。

 さて、2010年に私が 『産業技術大学院大学』 の客員研究員をしていたときに、
SN比の新たな概念として同大学院の紀要に 『回帰寄与率型SN比』を提案
しました。

 このSN比の特徴は、
1.原理と数式が理解しやすい。
2.Excel のグラフウィザードで結果が得られる 『寄与率:R^2』 だけで計算できる。
3.統計学の回帰の概念との整合性がとれる。

という利点があります。

 田口のSN比との整合性は、再現性が高い実験では要因効果のならびは一致します。
再現性が悪い場合は、多少の違いが発生します。

 両者を検証する方法として、学会誌などに発表、掲載された論文のデータで検証する、
という提案がありました。これは有効な方法だと思います。

 また、数式を制御因子とする方法を考えつきました。こちらも有効な方法だと思います。

 いずれ、SN比の検証結果を報告できると思います。


名著 『実験計画法』

2014-05-13 20:52:25 | 品質工学

 今、会社で検討している課題について参考にするために、横浜市図書館から 『第3版 実験計画法 上』、『第3版 実験計画法 下』(以上 田口玄一)、『実験計画法』(R.A.フィッシャー)を借りてきました。

 品質工学では、感度やSN比を計算するときに、全変動;ST として、入力に対する出力値の個々の値を2乗したものの総和を定義して、これから計算がスタートします。しかし、一般的な統計学では、STは出力の偏差平方和(Syy)を意味しているため、統計学の記述と品質工学の記述が異なってしまっていて、これがかなりの混乱をまねく要因になっています。(私もはじめはおおいに混乱しました)

 しかし、『実験計画法 上』の書き出しからちょっとあとに、田口先生もSTは統計学とおなじ概念で論じています。昔、この本を読んだとき、このあと読み進めていくと、STが出力の偏差平方和ではなく、全変動として記述されるのですが、この記述の変化についてなんら説明がなされていなかったと思います。

 記述や記号標記の解説があれば、混乱は少なくなったことでしょう。これは、私の想像ですが、田口先生もほんとうは、本来統計学でおこなわれている回帰分析に基づいた、「回帰直線に対するあてはまりのよさ(わるさ)」によるSN比を定義したかったのではないでしょうか?しかし、計算量が大幅にふえるため、コンピュータが一般的でなかった当時、計算量が軽減できる「変動」という概念で対応したのではないでしょうか?

 変動の概念を使うとばらつきは回帰分析よりも過小に見積られることはないので、ばらつき評価に対しては大きな問題は発生しない、というのが田口先生のSN比に仕組まれた戦術のように思います。

 以前、産業技術大学院大学の紀要に採録された論文で「回帰寄与率型SN比」という回帰分析をもとにしたSN比の考案とその検証について発表しました。

 この「回帰寄与率型SN比」にご興味をもっていただけた方々と少しずつ研究を進めていく計画があります。 いずれ、紹介するつもりです。


『種の起源』に想う

2014-05-07 20:06:36 | 品質工学

2月の中旬に品質工学会誌の【会員の声】に品質工学のパラメータ設計と進化論の関係、そして、品質工学と学会も『進化』すべきである、という内容の文章を投稿したのですが、先月送られてきた学会誌には掲載されませんでした。

タイミングがわるかったのでしょうか、それとも、内容が編集委員の方々にとって愉快なものではなかったからでしょうか。

まぁ、6月号に掲載されることを期待しますが、私が述べたいことはつぎのようなことでした。(学会誌には800字以内というしばりがあるので、この内容のダイジェストになります。)

「強いもの(チャンピオン)が生き残るのではない。環境の変化に適応できたものが生き残ってきたのである」

チャールズ・ダーウィンが著した『種の起源』を要約するとこのような文章になります。いわゆる『進化論』です。「進化」ときくと、生物が、空間で異なり時間で変化する環境に対応するために、みずからが能動的にその生理・生態・形態を“歩的に変”せしめたようにうけとられがちですが、実際は、“多様性の獲得”と“淘汰による選択”という自然の摂理をうけいれた結果であることが通説になっています。

 “多様性の獲得”は、生殖などの交配による遺伝子(Gene)の入れ替えと、遺伝子のコピーエラーや放射線・化学物質などの外乱による突然変異によってもたらされます。

おもしろいことに遺伝子のプログラムや構造がコピーや外乱に対して脆弱であるからこそ、生物は“多様性”を獲得できるのであって、遺伝子自体がロバストだと、環境の異なる空間への生存領域の拡大や、環境の時間的な変化に対応することできず、遺伝子に組み込まれた情報は伝達される可能性が低下し、いずれは“淘汰”されてしまうことになります。

遺伝子は自身にプログラムされた“絶対に伝達し続けなければならない重要な情報”、つまり、“遺伝子の核”と、それをとりまく“付帯構造”からなりたっていると仮定すると、“付帯構造”を交配や突然変異により変化させ、しかもなるべくたくさんのバリエーションをつくり、それを“空間で異なり時間で変化する環境”というフィルタによって多くの子孫が“淘汰”されても、その環境において生存する個体が残る確率を高める戦略をとり、“遺伝子の核”の伝達をねらっているものと想像できます。

さて、ここで “遺伝子の核”を「製品に期待される機能」、“付帯構造”を「製品を構成している部品・要素=制御因子」、そして、“空間と時間で変化する環境”を「ノイズ因子」と置き換えてみると、ここまでの文章はまさに品質工学のパラメータ設計の第1段階そのものになります。つまり、パラメータ設計とは、自然・社会科学や工学・工業技術にたいする『進化論』の積極的な応用といえます。

ただし、品質工学では“付帯構造”を無秩序に変化させるのではなく、直交表に則ったルールによって“多様性の獲得”をめざしています。そして、直交表に仕組まれたメカニズムを利用することで、“付帯構造”の選択肢ごとの生存性の高さを最小の労力で得るという戦略を採用し「製品に期待される機能」の環境への対応能力の向上をめざします。

設計者にとって、製品を構成する部品・要素・購入品などについて、自身が最適と判断した材料、規格、形状、寸法、グレードを組みあわせたものが、“チャンピオン”になります。しかし、『進化論』では、生き残れるのは“チャンピオン”ではなく、“環境の変化に適応できたもの”なのです。『進化論』を自然の摂理とすると、品質工学のパラメータ設計とは自然の摂理に則った設計法といえるでしょう。

では、品質工学において、絶対に伝達し続けなければならない重要なものとなる“遺伝子の核”とはなんでしょうか。現時点で筆者が考えるに、それはつぎのふたつにつきると考えます。

・ 製品を開発・設計する時点で、その製品が出荷された後、廃棄処理されるまでに社会にあたえる総損失を最小にする。

・ 製品に期待される機能に利用されている自然科学の原理・法則に着目し、その安定性をたかめる手段・方法を採用することで製品に期待される機能の安定化をはかる。

ここで、品質工学自身と「進化論」の関係について考えてみます。品質工学を積極的に活用して成果を出している企業や技術者も存在しますが、まったく理解を得られずに最初から導入を敬遠される、あるいは、導入初動の失敗に懲りて使われなくなる、など“淘汰”されてしまうこともありえます。それぞれの企業にはいろいろな社風、技術水準、経営方針があります、つまり、それぞれ環境の違いがあるのだから『進化論』からみても、これは当然のことになります。したがって、今後、多くの企業で品質工学が採用、活用され繁栄していくためには、品質工学自身も“多様性の獲得”をしなければならないことは自明です。

自分がその所属する企業内で品質工学の導入や啓蒙で苦労しているのであれば、自社の環境に適応できるように、さきのふたつの“遺伝子の核”のために、品質工学の思想、思考、道具をその環境にあわせて進化させることを考えてみてはどうでしょうか。このような方向からアプローチすると、いままでとは違ったながれがうまれ、案外、すんなりと品質工学が受け入れられ、企業や技術の活動に貢献できるかもしれません。

そして、最後にあえていわせていただきますと、品質工学会自体も進化する必要があると思います。現在の品質工学会が「教条的」、「原理的」にみえるのは筆者だけではないでしょう。思想、思考原理までとはいいませんが、企業内での品質工学の繁栄をもたらすために、せめて前述の新たな道具の提案などについて、公平・公正な議論、討論ができる場を学会誌内に用意、提供し“多様性の獲得”を模索していくべきではないでしょうか。

島嶼に生息する在来生物は、その環境で淘汰されなかった生き残りです。そこに激しい生存競争に打ち勝ってきた大陸そだちの外来生物が侵入すると、在来生物はあっという間に駆逐されてしまいます。つまり、島嶼に生息する在来生物は、外来生物というノイズにたいしてきわめて脆弱な存在なのです。現状の品質工学は、ほかの最適化に関する技術や手法(つまり外来生物)というノイズにたいして十分にロバストであるといえるでしょうか。

品質工学会の会員の多くは、品質工学を学問として学ぶことが目的ではなく、自身が企画・構想・設計・製造、そして、品質保証すべき製品の機能を、なるべく、能率と効率よく永続的に安定化させるしくみを得ることが目的のはずです。これが達成できるのであれば、品質工学以外の手法でもよい、と考えている会員も少なからずいることでしょう。

よくいわれているように品質工学は「魔法の杖」や「打ち出の小槌」ではありません。使いどころや使い方を誤ると当然成果に結びつかないこともある。つまり、なんらかの弱点が存在するのは事実です。個人的には、今後、品質工学の弱点にも光をあてた議論がなされるような方向に学会学会を含め品質工学の環境が進化していくことを望んでいます。

この連休中、おなじような意見・意識を持たれている方と議論させていただきました。連休中はあまりこのことについて考える時間がなかったので、これからじっくり考えて纏め上げていこうと思います。


システムの考え方Ⅱ

2014-04-29 09:13:08 | 品質工学

3月17日のブログ 「システムの考え方」 でシステムに入出力する「物質」、「エネルギ」、「信号」の3次元からなる関係をさらに進化させることで、システムに関する思考の整理や品質工学による評価がより明確におこなえる可能性があると述べました。
昨日(3月28日)、この考え方を研究されている先生とおはなしさせていただきました。
システムの良好性を評価する特性として 『変換効率』 をつかうことが一般的です。
しかし、新しい考え方の根源は 「物質不滅の法則」、「エネルギ保存の法則」、「情報・通信に関連する種々の法則」を3次元で評価する、というものです。
さらに進めて考えると、3次元の項目、いずれも「エントロピー」という概念が存在するので、この「エントロピー」が重要な評価特性になる可能性があります。

  今、書くことができる内容はこの程度で、なにをいっているのかさっぱりわからないかもしれませんが、いずれ、少しずつ解説をしていきます。


浜松品質工学研究会

2014-04-26 08:42:08 | 品質工学

昨日(4月25日)、2014年度の浜松品質工学研究会が始まりました。
今期は39名の会員でスタートとなりました。はじめて品質工学に触れる方も多いので
研究会を丁寧に運営していきたいと思います。

今期初めての研究会では、「品質工学のススメ 2014年度版」 で品質工学の概要を
解説しました。初心者の方の品質工学への理解がすこしでも深めることができれば
いいのですが。

この解説のなかでは 「品質工学のパラメータ設計」 と 「進化論」 の関係を重点的に
はなしをさせていただきました。品質工学をまったく知らない方のために制作した読み物を
アップします。昨日はこのなかのギニアワームのはなしにとどめました。

「qe_intro1.pdf」をダウンロード

ファイルを開くとデジタルタイムスタンプの認証処理が始まります。ウィルスではありません。
ご心配なきよう。

しかし、昨日は朝からいろいろなトラブルがおき、損失も発生しました。
でも、ゴールデンウィーク前に厄が落ちた、と前向きに考えることにします。
「逆境こそがチャンスだぜ!」(ピンキージョーンズ:MMCZ)