映画 「Steel Magnolias」 (邦題「マグノリアの花たち」) ※1
1989年公開 ※2
◆ この映画は、
アメリカ合衆国の南部、ルイジアナ州の田舎町の美容室に集う、6人の老若の女性たちが織りなす群像劇です。
洋の東西を問わず、美容室を題材(メインの舞台)にした映画は、ありそうでなかなかない。というのが実際です。
特に、多くのアメリカの映画や、TVドラマの中で登場する美容室は、
「街のゴシップ情報の発信地」 的な、軽薄な意味付けしか与えられていないことが多いものです。 ※3
そんななかで、この映画は、美容室の本質というか、大げさに言えば、「存在意義」にまで迫ろうとする希少な作品です。
公開からもう、四半世紀になろうとする現在でも、
多くの良心的な美容室関係者のこころのよりどころとなっていることに、間違いありません。
そんなことから、今回は、この映画のご紹介をさせていただきます。
◆流行のファッションやヘア・スタイルを研ぎ澄まされた技術でお客様に提供することが、
美容室の当然の存在意義ですが。
美容室が、古くから普遍的に持っているもう一つの側面、
社会的な存在意義についても、
ここで、ちよっと理解していただければ幸いです。
◆この映画は、アメリカの片田舎の小さな美容室を中心に繰り広げられる女性たちの人間模様を描いています。
そして、そこで繰り広げられるドラマのテーマは、ズバリ「命のバトンタッチ」。
大変重厚なテーマです。
さて、まず、この作品で特筆されるべきことは、
ハリウッド映画では珍しい、名うての女優陣による、滋味深いセリフのやり取りが存分に楽しめる、
ドラマ(芝居)が存在していることです。
この作品のオリジナル版が、舞台でのストレイト・プレイ ということだけあって、
人間の生死を扱う重いテーマを、
一癖も二癖もある登場人物たちが、
辛辣(・・・というか、汚い言葉がバシバシ)でありながらも、
ユーモアを織り込んだセリフの応酬で、
・・・人間の一生の奥深さと、その目的を暗示しながら・・・
しんみりと、しかし、前向きにそのエンディングへと導いてくれます。
◆日本では、古くから美容室を「街の奥様方の社交場」とか、「女性たちの社交場」と例えられてきました。
し、今でもその文化は、受け継がれています。 ※4
ところが、この映画を観ていると、 アメリカの片田舎、ルイジアナのビューティー・ショップ(美容室)も、
まさに、同じ役割を担っていることが理解できます。
◆さらにこの映画は、美容室を、「女性が本音でモノが言い合える場所」としてとらえて、 ※5
美容室のオーナー、スタッフはもとより、そこに通う常連のお客様とが、喜びも悲しみも分かち合う、
コミュニティとして描いていることが、特に印象に残ります。
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◆さて、わたしたちの美容室グレープスの本店・スズキ美容室は、創業以来54年を迎えました。
創業以来、ご来店いただいているお客様とは、ご一緒に年月を重ねさせていただいています。
ここまで、ご一緒させていただいているお客様とは、お互いに山あり谷ありの道のりでした。
しかし、50年超という時間の経過は、さすがに重く、
道半ばで、お別れをしなければいけなかった方々もいらっしゃいました。
いま、私たちは、この映画のように、お店のお客様と同じ船に乗せていただいている心境です。
そして、私たちは、お客様と少しでも先までご一緒させていただけるよう、
・・・お客様にとってなくてはならない存在でありつづけて・・・
その船を前に進めてゆきたいと決意しています。
そして、そのためにも
(お客様が集っていただけるに相応しい場所であるための最低条件として)、
美容室の基本業務のさらなる向上と、
新しい業務(訪問美容)の充実に努めてまいります。
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◆飯田でもマグノリアの花が咲いています。◆
ここは、「飯田創造館」。
飯田市内の桜では、もっとも開花が早い地点でもあります。
飯田創造館は、旧・風越高校(飯田高等女学校)の移転後の跡地に作られた、文化施設です。
当店のお客様のご関係では、華道の池坊さんの展覧会が開催されることでもおなじみです。
また、今年の茶道の裏千家さんの初釜が開催された場所がここになります。
マグノリアの花
私たちは、このモクレンをマグノリアと呼ぶことが多いのですが、
映画に登場するマグノリアは、同じマグノリア科に属する、タイサンボクを指しているそうです。
(いずれにしても、花のかたちはよく似ています。)
桜の開花を追いかけるように、飯田創造館のモクレン(マグノリア)は満開です。
飯田創造館前は、「風越窯址」。
ここは、江戸時代後期に、飯田藩主の命で瀬戸から陶芸家を招いて
造られた窯の所在地。
そんな所以からか、創造館では、陶芸教室も盛んに行われています。
※1 映画のタイトル、「スティール・マグノリアズ」とは、直訳すると「鉄のマグノリア」。
ルイジアナ州の州の花であるマグノリアと、気丈な南部の女性の代名詞「鉄の女」をかけあわせています。
「ルイジアナ州の女性達」 を指す、ニックネームが、「スティール・マグノリアズ」ということになります。。
※2 1980年代のアメリカ映画全般の印象とはかけ離れた、繊細な佳作です。
主演は、その後のブレークが華々しい、ジュリア・ロバーツさん。 ※6
※3 これも洋の東西を問わず、そういった評価も、必ずしも間違いとは言えません。
※4 日本映画の中で、美容室が 「街の奥様方の社交場」 として登場するもののひとつとして、
「細雪」1983年(市川崑監督)があります。
美容室が登場する場面は多くありませんが、(とはいえ、歴史的遺産、昭和初期の「電発パーマ」のシーンは、お宝もの。)
やり手の美容室の先生が、常連のお客様(主人公)のお見合いのお相手探しに奔走して、大活躍です。
◆当ブログのアーカイブ ◆ 「映画と着物 ②」 のページも併せてご覧ください。
※5 この作品の原作者(脚本家)は、男性で、実の妹さんをモデルにして、この作品を書き上げています。
男性のシリアスな観察眼を通して、「女性たちの城」である美容室て゛の人間模様を分析して、
このリアリティのある作品を作り上げました。
当然、この映画での美容室の描写もリアルです。
※6 この映画の中で花嫁姿を披露しているジュリア・ロバーツさん。
その後も、多くの作品でウエディングドレス姿を披露され、花嫁衣装のトレンドを左右するほどの存在となりました。