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国難防ぐ「縮災」の提唱-激甚化する災害へ、知恵を出さなければ負ける :河田 恵昭(よしあき)関西大学安全研究センター長

2019年12月18日 12時11分42秒 | 減災・防災から復興まで

 

 国難防ぐ「縮災」の提唱-激甚化する災害へ、知恵を出さなければ負ける
  河田 恵昭(よしあき) 関西大学安全研究センター長

 

尾崎 洋二 コメント:私は大きな災害があるたびに、日本にも米国にあるFEMA
(フィーマ:Federal Emergency Management Agency :アメリカ合衆国連邦緊急事態管
理庁)のようなものが必要だという思いを強くしています。
 
 この点河田氏は、災害が起きる前から日常の防災対策を進める「事前防災」と災害
後の速やかな復旧・復興によって、被害全体を少なくすることを目的とした、省庁を
つなぐ防災省の設置を訴えています。

 地球温暖化によって日本における災害も、多発・激甚化しています。
  また南海トラフ地震や首都直下地震も予想されています。

 このような時代だからこそ、河田さんの主張する時間軸とコスト感覚を取り入れた
「縮災」の考えが広く私たちに浸透しくことを切に願います。

-------------以下 聖教新聞12月12日2019年-要点抜粋箇条書き--------


無視できない風水害

 日本では、過去1500年の間に平均して15年に1回、死者がおよそ1000
人を超える巨大災害に襲われてきました。

 その長期的サイクルは変わっていません。
 そのなかで一番多く発生しているのが洪水氾濫であり、30回も発生しています。

 昨年の西日本豪雨では、250人以上が亡くなり、今年の台風19号でも100
人近い尊い人命が失われました。

 国土交通省が進めてきた治山・治水事業によって被害拡大を防止してきた面もあ
りますが、現在、それを上回る外力が地球温暖化の影響によって働いています。

 丘陵地や田畑の宅地化、舗装道路の拡張などの都市化によって、河川に流れ込む
水量が激増し、水害の多発・激甚化も進んでいます。

 従って、これに応じるだけの対策が必要となっているのです。

 風水害を含めて、日本には、被害の大きさに気づいて、初めて対策を実施すると
いう姿勢が根っこにあります。
 したがって、防災対策は後追いで、災害対策基本法は原型復旧が基本です。

 これでは、地球温暖化に伴って、年々多発・激甚化する災害に対応できません。

 その点では原型復旧ではなく改良復旧を基本とする米国の例が参考になります。

 例えば、高潮被災地の復旧・復興では、家屋等を土地ごと買い上げ、住民に転居
を促し、諸事情で移転したくない住民の防護には、100年に一度の高潮に耐えら
れる海岸堤防を造成。

 それで守れない氾濫の被害に対しては、ピロティ形式(1階部分を駐車などに利
用する建物の形式)の住宅建設を住民に義務付け、その一部の経費を公的に負担し
ています。

 より強い社会へ改良していくという発想がそこにはあります。

 
事前防災と早い復旧

 縮災とは、災害が起きる前から日常の防災対策を進める「事前防災」と災害後の
速やかな復旧・復興によって、被害全体を少なくすることであり、防災や減災には
なかった時間的ファクターが加わるのが特徴です。

 復旧・復興が遅れれば、経費はかさむことになりますから、コスト感覚と言い換
えられるかもしれなません。

 被災した際、どのような復興を目指すのか、住民の基本合意をもとに事前復興計
画をつくっておく。
 
 そうすることで、災害直後から復旧・復興をスタートさせることができます。

 防災・減災対策に特効薬というものは存在しません。災害の種類、被害の規模、
被災者の状況はさまざまです。

 こうしたなか、対策をいくつも組み合わせることで、多様化する価値観にバラン
スよく対応することにもつながります。

 縮災は「Disaster Resilience」を日本語に訳したものですが、Disaster 
Resilience では、National Resilience が重要な役割を果たすと考えます。

 ところが、日本では、National Resilience が国土強靭化と訳されたため、縮
災は、国が進める取り組みであるかのように考えられてしまいました。

 しかし、National Resilience は、政府から家庭までの共同体(コミュニティ)
での人間活動を指します。

 従って、縮災は、国民に直結した各組織全体で協力して進めるものです。
 その主役は国民一人一人です。


偏見を正す教育こそ

 日頃から行っていない取り組みは必ず失敗します。
 だから、縮災の取り組みも住民レベルで災害文化として定着させていくことが大
切です。

 それには教育が必要です。
 人は経験によって賢くなるけれども、経験したことのないことは失敗します。

 昨今の台風、豪雨災害はそのことを示しています。

 中学校、高等学校の日本史の授業では、日清戦争の戦死者を約8000人を超え
る、約2万2000人が犠牲になった明治三陸津波については詳しく教えられるこ
とはありませんでしが。

 こうした歴史教育の偏りも正しつつ、教育によって防災文化を根付かせていくこ
とが大切です。


省庁をつなぐ防災省を

 多発・激甚化する災害に対し、各省庁を連携し、強い調整力で事前対策から復興
まで総合的に進める防災省のような組織が必要だと考えています。

 例えば、国交省が進めてきたダムの建造や管理も、経産、総務、厚労、財務省な
ど各省庁の関係者が加わって協議する場を防災省が設定することで、一つの省庁で
は気付かなかった防災の観点が生まれることになります。

 公共事業の多くが省庁の縦割りで進められてきましたが、被害が多様化する災害
対策事業では、それを横につないでいかなければなりません。
 
 その役割を担うのが防災省です。

 私たちと災害は知恵比べをしているのであり、知恵を出さない方が負けるのです。
 

 

 
 
 
 
 

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