「命を守る・人が死なない!防災士-尾崎洋二のブログ」生活の安心は災害への万全な備えがあってこそ。命と生活の安全保障を!

防災の第一目的は命を守ること。「あの人を助けなくては」との思いが行動の引き金となります。人の命を守るために最善の行動を!

防災:身を守る行動〉先進事例のあるイタリアから学ぼう!一般社団法人「避難所・避難生活学会」主催 酷暑期の避難所演習リポート

2024年08月04日 09時23分41秒 | 人が死なない防災

尾崎 コメント: 

防災には哲学が必要です」。

命を守るだけではなく、人権を守るために災害支援があるという感覚が日本に

あるのでしょうか? その感覚が無い限り、災害関連死はなくなりません。

私たちは先進事例のあるイタリアから学ぶべきです。

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1-平成の30年間には、5000人もの災害関連死が出たといわれている。

2-防災の第一目的は命を守ることです。

3-日本の「避難所の運営体制」は、本当に命を守る体制渡したいTになっているのか?

4-避難所運営で命を守るために「健康を守るポイント」は三つあります。
①安心・安全なトイレ(T)
②適温でおいしい料理(K)
③熟睡できる就寝環境(B)

5-イタリアの災害支援から日本は学ぶべきことが多々あります。

6-①清潔で安全なトイレ、②普段通りの適温でおいしい料理、③快適で熟睡できる就寝環境が、発災から48時間以内に整う仕組みが確立されています。イタリア事例。

なぜ、それが可能なのか。国の機関が費用を負担し、各地に、トイレコンテナやキッチンカーなど、国で標準化した資機材が備蓄されているからです。

6-災害が起きると、迅速に国の機関が会議を開催。発災から30分~1時間以内には、関係者が集まり、打ち合わせがスタートします。その後、ボランティア団体に指示が出され、国で標準化した支援システムが動き出します。

7-ボランティア団体は約4000で、人口の約5%に当たる300万人が登録しているといいます。普段の仕事の専門性を生かしたボランティアの在り方が定着していること。例えば、キッチンカーでの調理を引っ張るのはプロの料理人、空調機器の設置は電気工事士が主導していました。社員が災害支援に出動した企業に、国からの金銭的補助もあります。

8-イタリアには災害関連死という概念がないことです。私は行く所、行く所で、「災害関連死はどれくらいか」と質問しました。しかし「あり得ない」と返ってきます。“避難生活を通して一人の犠牲者も出さない”という共通認識があるように感じます。

9-イタリアの防災に携わる方が「防災には哲学が必要だ」と言っていました。命を守るだけではなく、人権を守るために災害支援があるという感覚を広げていきたいと思っています。

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防災――身を守る行動〉 一般社団法人「避難所・避難生活学会」主催 

酷暑期の避難所演習リポート2024年8月4日 聖教新聞

 平成の30年間には、5000人もの災害関連死が出たといわれている。この問題を解決するために避難所環境の改善に尽力する一般社団法人「避難所・避難生活学会」(以下、避難所学会)は7月27、28の両日、大阪府八尾市内の小学校体育館で、酷暑期の避難所生活を想定した1泊の演習を実施した。この取り組みをリポートする。
 

  • 開催に込めた思いとは●

 今回の演習を企画したのが、避難所・避難生活学会の常任理事を務める水谷嘉浩さんだ。八尾市内の段ボールメーカーの社長を務め、もともと防災活動とは無縁。その人生を一変させたのが東日本大震災だった。
 
 あの日、水谷さんは出張先の東京で被災。大阪に戻れず、東京で一夜を明かした。テレビに流れる壊滅的な状況に心を痛め、大阪に戻ると、支援物資でパンパンになった4トントラックを被災地に走らせた。後日、避難所に身を寄せている方が低体温症で亡くなったというニュースを見た。「避難所って安全な場所だと思っていたので全く理解できなかった」と振り返る。
 
 すぐに断熱効果のある段ボールの活用を思い付き、試作を重ねた段ボールベッドをSNSに発信した。
 
 避難所学会の代表理事である植田信策さん(石巻赤十字病院副院長)は当時、宮城県石巻市内の避難所を飛び回り、雑魚寝は低体温症だけでなく、エコノミークラス症候群などのリスクを高めると見抜いていた。人が寝るのに耐えられるだけの強度があり、短時間に大量生産できることなどから、水谷さんの段ボールベッドに目を付けた。
 
 すぐに植田さんと水谷さんは約50の避難所を歩き、一カ所ずつ段ボールベッドの導入を提案していった。しかし、導入事例のないことなどから、ほとんどが門前払いだったという。
 
 水谷さんは震災後、各市町村に段ボールベッドの有用性を説明しながら、個別に防災協定を結ぶ活動をスタート。全国段ボール工業組合連合会も巻き込み、協定を結ぶ地方公共団体や自治体は増えていった。
 

〈〈健康を守るポイント〉〉
①安心・安全なトイレ(T)
②適温でおいしい料理(K)
③熟睡できる就寝環境(B)

 イタリアの避難所運営の取り組みが進んでいると知れば、同志と共に何度も視察に通った。こうした活動が避難所学会の設立につながっていった。避難所学会は「TKB48」を提唱する。これは、①清潔で安全なトイレ(T)、②普段通りの適温でおいしい料理(K)、③快適で熟睡できる就寝環境(B)を発災から48時間までに避難所に届けるというもの。
 
 水谷さんは熊本地震、西日本豪雨や能登半島地震などの避難所を手弁当で回り、段ボールベッドを設置して雑魚寝を解消してきた。植田さんをはじめ避難所学会のメンバーも、TKBに基づいた支援を被災地で推進。こうした取り組みに背中を押されるように、国の「防災基本計画」などにもTKBに沿った修正が行われるようになった。
 
 しかし、そこに法的拘束力はなく、避難所運営は市町村ごとの対応に委ねられている。予算の関係や運営のオペレーションなどの課題が山積し、TKBに基づいた環境改善には、まだいくつものハードルがあるのが現状だ。
 
 水谷さんは「避難所環境の改善を国民の関心事にしたい。今回の演習はそのスタート」と力を込める。
 記者も参加した今回の演習。そこで体験したのは過酷な現実だった……。
 

空調設備なしで生活はできない

 演習会場の最寄り駅となるJR八尾駅に到着したのは、午前11時過ぎ。スマホの地図アプリを片手に会場に向かい歩き出すと、一気に汗が噴き出てくる。この日の最高気温は35・4度。酷暑期を想定した避難所演習という意味では、ベストコンディションだが、不安を覚えずにはいられない。歩くこと約10分。演習会場となる小学校体育館に到着した。
 
 既に多くの人が集まっていた。大阪府や八尾市など自治体の防災担当者、熱中症や防災の研究者、災害医療の専門家ら約70人が、今回の演習に参加することになっている。
 
 館内は強い日差しは受けないが、空気がこもり、外より湿度は高いように感じる。幸い、スポットクーラーや大型扇風機が設置され、暑さに耐えきれなくなった参加者が、入れ替わるように、その前に立っていた。
 
 サーモグラフィーで館内の温度を測定していた参加者によれば、午後3時時点の天井の温度は46・4度。室温は午後2時時点で36度だったという。
 
 水谷さんが「大規模災害時の直後は、クーラーや扇風機も設置できない可能性が高い。とてもじゃないけど生活できる空間ではない」と声を強めれば、参加者からは「空調が使えなかったら地獄」という声が漏れた。
 

演習のスタートは、冷房が効いた教室で座学。夏季避難所の想定されるリスクについて、中京大学の松本孝朗教授、神戸女子大学の平田耕造名誉教授らが講義。避難所学会の植田さんは能登半島地震での支援模様を報告。水谷さんはイタリアの災害支援について紹介した。
 

「アルファ化米」1日が限界かも

 座学が終わり、夕食に。
 「わかめご飯」「きのこご飯」「山菜おこわ」「梅がゆ」「ひじきご飯」の5種類のアルファ化米から好きなものを選ぶ。作り方はシンプル。開封して、プラスチックのスプーンと脱酸素剤を取り出して熱湯を注いで15分で完成だ。
 
 体育館の床に座って食べ始める。「おいしいですよ!」と箸を進める人がいる一方で、「まずくはないが、連日は食べられない。1日が限界」という感想が多く聞かれた。
 
 記者は一口、二口と進んだが、なかなか、三口目が進まず、空腹を我慢することを選んでしまった。近くにあるコンビニエンスストアに救われた。
 

 続いて、シャワー体験。熊本地震や西日本豪雨、能登半島地震などの被災地に導入されてきた株式会社タニモトの組み立て式コインシャワーが2台設置されていた。
 
 シャワーの給水は、能登半島地震の被災地で使用されている株式会社クリタックの浄化装置を使用して貯水槽の水をろ過。水圧も問題なく快適だった。
 

床に「雑魚寝」痛みとしびれ

 午後8時ごろから演習は、就寝環境の検証へと進んでいった。生みの親である水谷さんの解説によって段ボールベッドの組み立てが始まる。手順は複雑ではない。しかし実際の避難所に設営する場合は、床面積を計測し、通路の確保も計算しながら収容人数に応じた配置バランスが求められる。さらに避難者に段ボールベッドの効果を丁寧に説明し、理解を得ながら、設置を進める必要があるという。
 
 これは誰しもができることではなく、避難所に届いても、倉庫に眠ったままになってしまう課題がある。だからこそ、水谷さんは必ず、被災現場を回っていると教えてくれた。
 

 就寝環境が整ったのが9時ごろ。館内の温度計は32度を指していた。主催者から「寝苦しいと思うので、遠慮なく冷房の効いた部屋に移動していただいても構いません」との呼びかけがかかる。参加者のどの顔も疲れ切った表情。中には既に倒れるように寝ている人も。午後11時を回り、消灯になった。
 
 床の上に薄いアルミマットを2枚敷いて雑魚寝を始めた。しかし、背中が痛く、コロコロと寝姿勢を変えるが痛む部分が増えるばかりで、なかなか寝付くことができない。明け方、空席の段ボールベッドに移動。雑魚寝とは比べものにならないほど、快適に感じ、体を休めることができた。雑魚寝した35歳男性は「体のしびれと痛みがひどい。エコノミークラス症候群のリスクがあることがよく分かった」と実感を込めた。
 

 朝食は唯一、ホッとできる場となった。夕食と違って、教室を模様替えした“食堂”に参加者は足を運び、水谷さんが大阪の帝国ホテルのシェフに頼んで考案してもらったアルファ化米のアレンジメニューが有志によって振る舞われた。わかめご飯を使った「サーモンライスサラダ」、山菜おこわからは「焼きおにぎり茶漬け」など。
 
 口にした参加者は笑顔にあふれ、「本当においしい」「これだったら毎日食べられる」と大好評だった。避難所環境の改善の課題に挙げられる「食事」がいかに大事かを如実に表す場面だった。
 

 そして、最後の総括会。チーム別に演習を振り返るディスカッションが行われた。
 今回は停電や断水を設定せず、トイレは通常通り、水洗トイレを使用したが、断水時に水洗トイレが使えない状況を想像しながら話し合う場面も。「間違いなくトイレを我慢する」「夏場は特に臭いが大変なことになる」「想像すらしたくない」など神妙な面持ちだった。
 

 演習は無事故で終了。水谷さんは「得たものをフィードバックしながら、継続して開催していきたい。この実体験を環境改善のうねりに変えていく」と訴えた。1日で終わると分かっていたから耐えられたのかもしれない。この生活に終わりが見えないと心身ともに持たないのは想像に難くなかった。
 
 しかし今も現実に避難生活を余儀なくされている方がいる。
 
 演習から2日後、水谷さんは記録的大雨で被災した山形の避難所に、雑魚寝を解消するために向かっていった。
  
 
イタリアの災害支援――水谷常任理事の講演から●

ハード、ソフトともに国で標準化

 災害支援の在り方が進んでいると知り、これまで何度もイタリアを視察してきました。①清潔で安全なトイレ、②普段通りの適温でおいしい料理、③快適で熟睡できる就寝環境が、発災から48時間以内に整う仕組みが確立されています。
 
 トイレにシャワーも完備されたコンテナが避難所に届き、キッチンカーなども来ます。避難所生活は主にテントで、家族単位で入ることができます。中には簡易ベッドがあり、エアコン設備もあります。
 

テントの中は簡易ベッドなどが整備                         

 なぜ、それが可能なのか。国の機関が費用を負担し、各地に、トイレコンテナやキッチンカーなど、国で標準化した資機材が備蓄されているからです。

 災害が起きると、迅速に国の機関が会議を開催。発災から30分~1時間以内には、関係者が集まり、打ち合わせがスタートします。その後、ボランティア団体に指示が出され、国で標準化した支援システムが動き出します。
 
 ボランティア団体は約4000で、人口の約5%に当たる300万人が登録しているといいます。
 
 視察で実感しているのは、普段の仕事の専門性を生かしたボランティアの在り方が定着していること。例えば、キッチンカーでの調理を引っ張るのはプロの料理人、空調機器の設置は電気工事士が主導していました。社員が災害支援に出動した企業に、国からの金銭的補助もあります。
         

 日本と違うもう一つの特長が、被災自治体の職員が避難所運営に関わらなくても支援が進んでいくシステムが確立されていること。被災地域外からボランティアなどが入ってきます。
 
 これも支援システムが標準化しているからできることです。
 
 日本は1700以上ある市町村で、避難所 運営の在り方はそれぞれ。他地域からの支援が混乱を生んでしまう状況もあります。今回の能登半島地震で支援に訪れた際、被災者に何か欲しいものはありますかと伺うと「希望が欲しい」と言われました。被災者は絶望をされていました。支援の在り方を考える必要があるのではないでしょうか。
  

避難所テントでは子ども支援も

 イタリアで学んだ一番大きいことは、イタリアには災害関連死という概念がないことです。私は行く所、行く所で、「災害関連死はどれくらいか」と質問しました。しかし「あり得ない」と返ってきます。“避難生活を通して一人の犠牲者も出さない”という共通認識があるように感じます。
 
 イタリアの防災に携わる方が「防災には哲学が必要だ」と言っていました。命を守るだけではなく、人権を守るために災害支援があるという感覚を広げていきたいと思っています。
 

 

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