「命を守る・人が死なない!防災士-尾崎洋二のブログ」生活の安心は災害への万全な備えがあってこそ。命と生活の安全保障を!

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「阪神大震災から何を学んだか-日々の暮らし、交流から安全な社会を築く」 室崎 益輝(よしてる)兵庫大学大学院 減災復興政策研究科長

2020年01月24日 10時39分01秒 | 減災・防災から復興まで

「阪神大震災から何を学んだか-日々の暮らし、交流から安全な社会を築く」

室崎 益輝(よしてる)兵庫大学大学院 減災復興政策研究科長

尾崎 洋二 コメント:復興とは再建ではなく、生きる力を取り戻すことです。

「かたち」ではなく、「思い」が大切なのです。--室崎 益輝さんのこの意見に
大賛成です。

真の復興のためには、市民が主人公との自覚にもとづいた新しい社会システムが
必要です。その原点を阪神・淡路大震災の時に官民協働で作り上げたのは貴重な
ことでした。

この原点を2004年、震災が発生した中越地域でも早速取り入れて模範事例を
示したのは素晴らしいことです。

皆で交流の中から意見を出し合い、地域の未来を考えていく。その中で防災を
「隠し味」として確保し、文化として、生活の一部にしていくことが、とても大
切なことと改めて気づかせてくれました。


----以下 聖教新聞 01月23日2020年より要点抜粋箇条書き----


複雑に絡み合う課題

復興の目標と課題は、1-被災からの回復をはかること。2-より安全な社会を築くこと。
3-社会の矛盾を正し改革をはかること。

これらの目標と課題は複雑に絡み合うもので、個々に論じられません。

阪神・淡路大震災では、多くの人々が被災者となり、住宅や仕事を失い、生活の回復
のためには何をおいても、住宅の再建、地域産業の回復に総力を傾ける必要がありま
した。

その結果として、安全な社会を築くこと、社会の改革といった課題は後回しにせざる
を得なかったのです。

例えば地震後、火災で大きな被害を出した地域では、延焼を防ぐ安全なまちを築くこ
とが課題になりましたが、それには大規模な区画整理事業が必要でした。

しかし、それは生活の回復のスピードを緩めることになります。

従って、「火災に強いまち」をスローガンに掲げることはできなかったのです。

一方、倒壊や焼失を免れた地域の復興は後回しにされ、その結果、老朽化した住宅が
残り、耐震化が遅れています。

長期的課題としては、震災後、自然と人間の関係を見直すことや高齢社会に見合う福
祉社会の構築、スプロール開発(都市の郊外に向けての無秩序な拡大開発)の歪を是
正し、コンパクトシティーを目指すことなどが検討されましたが、その多くが現在ま
で積み残されています。


市民が主人公との自覚

しかし、震災復興を通して得られたものも多くあります。
復興の過程で市民活動が盛んになるなか、新しい社会システムが生まれました。

多くのボランティアが被災地に駆け付けることになりました。
最初の1カ月で約62万人、1年間で延べ約137万7000人が駆け付け、のち
に「ボランティア元年」と呼ばれることになります。

支援活動が避難所や仮設住宅での生活支援からまちづくりやコミュニティー支援へ
と発展するなか、被災地に誕生した市民組織やNPOがその担い手となり、地域社会を
復興する主人公は市民一人一人であるとの自覚が生まれていったのです。

行政に対する要請が中心だった市民運動も提案型、協働型に変わり、行政と市民が
協力して取り組むようになりました。

こうした取り組みを補完する中間組織も生まれました。
その役割は、被災者と行政の間に立つ第三者機関として、被災者の生活実態、意見
を把握し、生活復興に必要な政策を被災者と行政の双方に提言することです。

兵庫県では、「被災者復興支援会議」として、当時の県知事の強い思いから設置さ
れましたが、そこには市民団体やボランティアの代表が加わりました。

会議の議論や現場の調査には行政職員も参加し、官民が協働して、復興政策の決定
と実施に当たるなど、新しい社会システムが築かれました。

2004年、震災が発生した中越地域では、阪神・淡路大震災のこの教訓に学び、
中越復興市民会議が組織されています。

災害からの復興を官民が協働してコーディネートする、新しい社会システムの原点
が阪神・淡路大震災にはあったのです。


隠し味としての防災

復興というと、災害等による被害から立ち上がるイメージがありますが、復興とは
新しい社会をつくることであり、災害後であれば、被害を軽減する社会を築くこと
です。

従って事後の復興は、次の災害に対する事前の減災といえます。

復興の中身をどうつくり上げていくか。その時、私が大切だと考えるのは、復興が
防災対策だけにとらわれてはならないということです。

防災は必要条件。だからおろそかにしてはいけない。

しかし安全さえ確立すれば人生は生きていけるのでしょうか。そうではありません。
日々の暮らしや仕事があり、家族のつながりなど、さまざまな要素があります。

安全のためだけに、そのほかを犠牲にするのは難しいのではないでしょうか。
強いて言えば、防災は「隠し味」」として確保していくということです。

災害への備えを忘れてはいけないけれど、地域や人々にとって大切なことは何か-
-「自然と共生する」「互いに助け合い暮らす」等々、皆で意見を出し合い、地域
の未来を考えていくなかで、防災を隠し味として加えていくことが大切であると
思います。

さらには、防災、減災が文化とて、生活の一部になっていることが、復興をより
確実にしていくと考えています。

例えば、家具の転倒による被害の防止策として、家具の固定等がことさら強調さ
れますが、日常的に部屋を整理し、家具の配置を考え、大量に物を持ち込まず不
要な物は減らす。

こうした生活改善の延長線上に家具の転倒による被害の防止策を捉えていくこと
はできないでしょうか。

また、現在、各地で防災訓練、避難訓練が精力的に行われていますが、元々地域
で行われてきたお祭りなどの行事は、地域の人々の結び付きを強め、共に作業す
るなど、防災訓練、避難訓練の役割を果たすものです。

やぐらを組むロープワークは災害時に必要なことでもあるし、皆が食材を持ち寄
って行う炊き出しは、避難所の食事支援の仕組みそのままです。

生活の一部である暮らしの作法を定着させ、コミュニティー内の交流を強め、無
理なく安全な社会を築くことが真の防災文化であると思います。


かたちでなく思いを

災害から復興を遂げた地域に共通することは、地域の人々の意見を聞く仕組みが
働いていることです。

1989年、大きな地震に襲われた米・サンフランシスコの南に位置するサンタ
クルーズという町では、市民が10日間かけて復興への思いや希望を語り合いま
した。

そして、それを絵に描き、復興計画を作り、小さな女の子が発した声にも耳を傾
けるなど、市民が希望を持てる町へと復興しました。

阪神・淡路大震災では、まちづくり協議会がそれを担いました。

復興の土台にあるのは、こうした「意見を言い合える文化」ではないかと考えま
す。

復興を英訳する際、reconstruction ではなく、revitalization を、私は使うよ
うにしています。
復興とは再建ではなく、生きる力を取り戻すことだと考えるからです。

「かたち」ではなく、「思い」が大切なのです。

「こうしたまちで家族と暮らしたい」「この地域のお祭りを残したい」--そう
した思いが、生きていく希望であり、それを取り戻すことが、復興の主眼であ
るべきだと思います。

 

 

 

 

 

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2020-07-18 14:35:42
大学名間違っています

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