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建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

杭芯出しの落とし穴

2025-04-14 08:30:05 | 建設現場 安全

(実際に反対側に杭を打ったと聞かされた現場は数知れず・・・) 

だが、杭打工事で間違えたのか《杭芯出し》で間違えたのかは判断がつかないものだ。

で間違えたらクイ(悔い)が残る》
なンて冗談でも言いたくないが、単純ミスも起こし易いのがこの《杭芯出し》作業でもある。

建物の荷重は柱から基礎に伝わり、それを支持地盤に伝えるのが杭の役目であるから、
柱の中心(重心)を正確に計算し―――通り芯より5㌢X方向に寄った所が杭芯であり―――

それを中心に一辺1㍍で正三角形状に杭が3本有り―――という微細な図面を『杭伏図』
称し、設計者(構造担当者)の承諾を得る必要がある。

  すると、 
「外壁はタイル貼りだから40㍉外へ柱が大きくなるから、杭の中心は増えた半分の20㍉ほど
ズラして下さい」
という訳の分からない指示を構造計算担当者からもらった事も何度か有る。

 それならば、室内だってモルタルを塗ったりボードを貼ったりして、一本の柱が四面とも
仕上げが違うと、柱の荷重はどの様に杭芯迄伝わるのかは絶対に解析出来っこない。
出来たとしても40㌢の杭を10㍉ズラして《杭芯》とし、そこへ杭を打ち込むくらいだ。

と言っても、地上から巨大な杭打機で、10㍉程度の微調整は施工精度の中に丸め込んで
杭を打つ事に専念する。

杭打についてはブログ《建設現場の子守唄》をもう一度読んで下さい。

―――――

   杭を打つと周辺の地面は杭用に掘って出て来た土やセメントミルクやらで、ド
   ロ沼状態になり、長靴を履いても膝頭迄も届く中での作業である。

   そんな中で「次の杭はどこだ?何処に行った!」
   とヘドロをかき分けて杭芯を  捜すのだからとても10~20㍉の事を言っている
   ヒマはない。 ――― 

 今日、その杭芯になる所に大工が〈少しでも正確に〉と思いながら、杭芯を打って
いる。

 ヘドロに埋ってもすぐ発見出来る様にと、杭芯は約40㌢の鉄筋棒に20㌢位迄は赤ペン
を塗り、更に先端には目印用にハリガネ迄結束しておいた。

 最近では鉄筋棒の先を尖らせ針金まで取り付いている専用の品物も販売されているが、
鉄筋棒は地面にしっかり埋め込んで置いても、杭打重機や杭搬入トラックがその上に乗って
作業し、杭芯は踏みつけられ更に沈んで行く。

 地面に鉄筋棒を垂直に打ち込めなくて5~10㍉傾いていたとて何の問題があろうか。
 打設直前までじっとした杭芯はマレで右に左に時には重機のキャタピラに巻き込まれたり、
鉄筋棒が引き抜けて行方不明になったり、大変な騒動が杭打寸前には起きる。

 それでも杭芯出しは重要な仕事だし、精度を保っていないと、施工中に於いて誤差は拡が
る一方だから、たかが
《杭芯出しだ》
とあなどってはいけない仕事で有る。

 それを大工さんが杭芯を出しているのが当たり前の事だという業界の習慣に疑問が沸く
のは私ぐらいのものだろうか?

 杭の施工中には鉄筋棒がどこにあるのか、足元が泥沼状態の中で重機のキャタピラに
踏まれて移動(ズレル)もあるし引っこ抜ける場合も多々あるものだ。

 杭打設後に杭芯の精度を測ったら20センチ偏芯(芯のズレ)があった場合、打設ミス
なのか、打設前から杭芯位置が間違っていたのかの論争が勃発する。

 大きく偏芯していると基礎を大きくして対処せねばならない。
型枠も鉄筋もコンクリートも増えるのは仕方ないにしても、その余分な工事の発生に伴い
かかった代金が杭打ちの業者の責任だと押し付けているのが・・・現状でもある。

数百万円の請負金額から数十万円の支払いを請求されるのならば、杭芯は自分たちで
出して自分たちで杭を打設しようという業者が未だに存在しない。
言われた所に杭を打つのが俺たちの仕事と構えている。

とにかく杭の偏芯がなければ、杭工事としては合格なのであるから、杭の芯出しにて
間違えていなかった事を工事管理記録として保存しておく事が重要である。

その記録簿の為に私は―――
   毎度の事であるが麻雀仲間の所長にお願いをしている。
     「○○日に君の現場の若手職員を検査に来させてくれよ・・・」
   若手現場監督さんは、杭芯の位置が5センチの違いでも指摘するほどの几帳面さを
   持って検査をしてくれるし、検査立会人として名前が残る事になるのだ。
          私は杭打設施工図(杭伏図)図面を手渡して
       「よろしく頼むよ、昼飯代とバイト代(俺のポケットマネー)もあるからね」
        と軽く肩をたたいていうが、落とし穴を作って検査をさせている。
 
    1時間も経過した頃に
    「所長!1本杭芯が反対側に打ち込んでありました」
    「エッ?」
    と驚く仕草をみせるが、落とし穴としてわざと間違えておいたのである。
              打込み間違いの指摘に加えて「X2通りの№46杭芯が抜けそうです」
             と報告に来たならば、杭芯は間違いなく打ち込まれていると確信できるのだ。
                   ――――――

杭芯は正確だったと第一段階で記録簿を残しておけば、偏芯は杭の施工ミスだと責任の
所在をはっきり出来るだろうから・・・。
 とにかく杭の偏芯がなければ、杭工事としては合格なのであり、杭芯出し作業が完了
したので、明日午前中、杭芯出しの確認作業を実施し、午後から設計事務所に
『杭芯確認立会検査』
のお願い電話連絡も済ませて杭芯出し作業の完了となった。

 







 

 


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