建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

大事な1月(2)

2021-01-22 09:44:36 | Weblog

………………………(大事な1月)  (2)………

私の駆け出しの頃は―――

重役さん達は紋付袴の方もいらっしゃったし,会社の名前の入った揃いの法被(はっぴ)で
式に参列され、一人ずつ神棚に進み出て拍手を二つ打って一例し、

『今年もよろしく…安全につつがなく……』

の声が聞こえて来るような『初出式』が厳に執り行なわれるのを見て、背筋に力が入って
来たのを覚えている―――

法被姿と言えばトンネルの貫通式等で、TVに映っていて微笑ましく見える事が多い。

しかし、建築工事では上棟式等にて、作業服姿の職人さん達が見守り、汗が煌めく瞬間の
《めでたい式》の時にヘルメットをかぶった《背広族の白手袋姿》は、服を着たまま水泳
しているような場違いでは……《竣工式でどうぞ…》と思うのは、私の偏見でしょうかね?
今日の初出式では法被姿も紋付袴もいらっしゃらなかった。

一月という一ケ月間は現場にとっては精神的圧迫が強い月である。

「無事故の歳末明るい正月」

のポスターも15日まで掲示板の中央に貼られているし、その間で事故が発生すれば

《今年第1号の事故現場》

と汚名が全支店に通達されて、事故報告書のトップ面を一年間受け持つ現場になってしま
うのだ。

今年初めての安全大会・安全協議会を開催する内容によって、この一年間更に竣工迄の安全
への気構えが職人さん末端まで伝わってもらうべく配慮も一月ならではの事である。

一月の中旬、熱田神宮での安全祈願祭に参列すべく玉砂利道を進みながら、
「新しい年になってもう10か所以上のゼネコンへ《安全祈願祭》に出ています」
と、どこからともなく聞こえて来ます。

協力業者の社長さんは各ゼネコンの「新年安全祈願祭」には必ず出席されて、安全も営業も
しっかりアピールされているのが一月でもある。

私と並んで歩いている社長さん達とは初出式の時に言葉を交わしていたけれど『年始廻り』
の一コマであったから、今年初めて《改まっての話》が出来た雰囲気でもあり、

『お互いに、また、この一年、イイ年でもあるように……』
と念じながら社殿に詣でるのだった。 

一月―――。

この年初めに『3月末竣工現場』の詳細工程を何度作成したものか……

   年度替わりから校舎は必要だ → 入学式典が4月1日。
   店舗開店営業日が4月1日 → もうチラシ印刷が出来上がる頃・・・
   会社創立記念日が・・・ → 新社屋記念パーティ招待状発送済・・・
このような事態は工事着工時から納得の上である。

十二月末までの工程管理が順調であろうとも、年度末竣工にむけて手戻り工事が発生しな
いのか、段取り手配の忘れや打合わせミス(思い違い)があれば残り三ケ月のなかでクリア
せねばならないのだ。

だから、私の書いた総合工程表の通りに『進まない』のか《進めてない》のかを見極めて、
若手現場マンの現場監理能力の《判定基準》の総決算としている。

私の月間工程表通りに進めようとしても、私でさえどうにもする事の出来ない苦しい工程表
だったのが唯一、お正月に作成した《E市の現場》の時であった。

それというのも―――
二月から三月にかけて降雪の連続であるという天気予報が出されて以来、工事完了日を竣工日
の二週間前に設定する私の従来からの方針に、見通しが立たなくなってしまった。

雨ならば対処の方法が分っているが、降雪となると除雪日も当然であるが、積雪が1㎝で
あっても足元の墨が見えないのだから、型枠も鉄筋も組み立てられないし、まして
コンクリート打設は完全に除雪後が条件である。

それよりもどうにもならないのは、名古屋から通常一時間半で走って来られる高速道路が、
雪で通行止めになり一般国道が大渋滞になって、職人さんの車が遅れて出勤したとしても、
一日に何時間ほど現場作業が出来るのか計算が成り立たないのである。

雪の積った朝は水道管が凍って、午前中はセメントが練れないとか、仮設水洗トイレも凍
結解除迄使えず等、貴重な時間が食われてしまうので、更に作業予定内容が少なくなって
しまう。

3月末日まで平日の稼働数が70日あるので、雪の影響を考えなければ何とかなる工程表が
書けるにしても、ここの現場は全く自分の思い通りにならない《もどかしさ》を痛感
させられたのも
《大事な一月》だった。―――

年の初めを祝う時、
『この一年間の現場監理をどうやって遣り繰りしようか……』
と神棚に頭を下げたらもう前を向いて『建設現場の一本道』を進むしかあるまい。

『今年もご安全に・・・』


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偽装建築(2)

2016-02-23 21:19:03 | Weblog

もう少し、この現場を推理をすれば、
《なぜ偽装建築だとバレたのかの部分であろう。

現場で一団となって偽装計画をしていて、余ったはずの鉄筋の材料の隠し方もあるだろう。
トラック数台で運び出す量だから、深夜こっそり隠せるような単独犯でないから……だろう。

それよりも、抜き取った鉄筋の材料と手間代相当分をゼネコンが独り占めして、協力業者へ
は実質取り付け分の支払いをして、差額分は『儲けた』と皮算用したはずだ。

鉄筋は少なく組み立てたが労務費は正規の手間代を支払うほどゼネコンは間抜けではない。
協力業者の親方は職人さんへ支払うべき手間賃が減れば、隠し事は手ですくった水同然で、
こぼれ落ちた水が熱湯になって湯気にまでなったのである。
覆水盆に返らず、こぼれた水とは建設業界の信頼の源であり、それを失ったのだ。

耐震設計強度の偽装問題で、確認検査の審査期間が長くなった。
公的機関を増やして設計図や構造計算をいくら厳重にチェックしようとも、施工の段階で
間違えていましたと言い訳を通すつもりの偽装がどこかに潜んでいる、と私なら追及する。

パソコンソフトからのデータを捏造して、検査機関を騙してまで建物を創ろうとするゼネコン
に対し、仮に構造設計者が協力しても、構造計算者に見返りはほとんどないものだ。

鉄筋の重量が減った場合に、減った材料分の購入代と手間賃の何%が構造計算者の懐に
潜るならば、倒壊寸前の限界値まで計算、あるいは偽装計算をしたくなる誘惑に負けるだろう。

構造計算者は設計料の何%が構造計算代金とか、計算書の枚数が契約金額の対象になって
いるから、現実は鉄筋が増えても減っても、損得がなく、むしろ頁数が増えるように文字を
大きくしたり文字間を拡げたり工夫して、計算書を見栄えよく作成しているものだ。

つまり構造屋さんは偽装計算にはメリットがないから、どうでもイイ事であると言える。
それでもゼネコンから強制されたと言えば、そのゼネコンから二度と仕事が廻って来なくなる
から、真実も言えずに、計算した本人が全ての罪を被るしかないのだろう。

どこかからの圧力で計算式は偽装されたまま行政審査へと進むのである。

審査する側の人は構造計算のプロではないから、一級建築事務所の印のあるぶ厚い
計算書をチェックしながら間違いを発見するのは無理だと見越していて、
バレモトの偽装工作を指示するのは悪質行為である。

チェック機関を二重にして、審査回数を増やすのが悪いとは言わないが、審査合格が総て
ではないし、その通りに創っているか迄を検査しなくては、折角の計算書が無駄である。

《手抜き》工事と言われ続ける建設業に、背広組の机の上の出発点から偽装が始まっている
時代になり下がってしまっては、建設業のイメージアップはなす術が無い。

《築く》という目前のものだけを見るから、周囲に気づかないのである。

《儲ける》という計算と引き換えに、信用を失うのである。

《創る》という使命があれば、手抜きも偽装も関係無い言葉である。

   ………若手現場マンは何を目標に、この業界を泳ぐのであろうか・・・。

≪建設現場の玉手箱≫より抜粋

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偽装建築(1)

2015-11-05 10:49:58 | Weblog

杭データ偽装で建設業の信頼が一気になくなってしまったが、
杭工事に限らず見えない所(特に鉄筋量)で検査合格させている本音をつづっているので紹介しよう。
偽装建築(1)

………………………(偽装建築)…………
何とかして建設業界のイメージを向上させようとしているのに、とんでもない言葉が
マスコミに書かれて、三面記事を騒がせている。
《手抜き》と言う文字を使うのが最も多いのが土建業となっていること事態、
許せないのだが、手抜き以上に悪どい言葉である《偽装建築》について、
怒りを覚える。

ゼネコンがISO取得認定だとかで浮かれていつつ、又、TQCだのVEだのと綺麗な
言葉を使っていながら、真反対な評価で一気に信用を落としてくれた。
どこにその根源があるのか、ニュースキャスターの読み上げる報道に答えは出て来ない。
設計ミスではないならば、施工ミスであり《手抜き》と何ら変わりがない。

それも、名の通っているISO認定のスーパーゼネコンで偽装建築の発覚事態である。
だから、二番煎じの下手な現場芝居が出てきても、驚きもしなくなった。

偽装建築物である事が、工事途中で気がつかないほどスーパーゼネコン(S建設)の
建築技術が堕落したのなら、ここで話は終わらせる。
「鉄筋量が間違っていたまま工事したのが途中で分かった」
と全く責任を感じていないゼネコンの背広組がいるのに、驚きだ。

《子守唄》《風来坊》にも躯体工事中の配筋検査がいかに大切であり、現場監督が
大変苦労しているかを、しつこいくらいに伝えたし、この本でも述べている。

缶コーヒー並みの太い鉄筋が百本以上も少ない事が、言われるまで
気が付かない訳がない。

高層(45階建)建物で途中の階(30階)まで繰り返しコンクリートを打設して
鉄筋の少ないのを隠していたのは、監理者と請負業者がグルになっていて、
簡単に偽装出来たと言う事だ。

職人気質としては、設計図から柱の主筋を《抜き盗る》考えは絶対にしない。
何故ならば、鉄筋職人さんは鉄筋を組み上げた重量がそのまま賃金の
起算になるのである。
給料を少しでも多くもらうには1本でも多く組みたいものであるし、手を抜いた本数分は、
手取りが下がるのだから、それで喜ぶ職人はいないでしょう。

それなのに、どうして耐震偽装になったのかだ。
なぜ、耐震偽装建築の原因追及をしないのかだ。
それでもISOで国際品質認定の取得なのかだ。

監理者及び構造設計監理者を騙したままの配筋検査を、数回繰返せるほど、
現場の監理者に隠匿技術があるとは思えない。

設計図では1つの柱に直径5㌢の極太鉄筋が22本並ぶ事になっていて、実際には
20本の鉄筋が立っていて、数名いる官庁検査官の中で誰も気がつかない訳がない。

配筋検査の前には鉄筋担当者が組み立て完了写真として報告する為に、壁も柱も
コンクリートで隠れる部分は総て写真を撮るように命ぜられる事もしばしばある。

スーパーゼネコンだから代表的な柱を数本撮影しただけだったかもしれない。

それでも、写真撮影したのは、多分、若手技術員(出向社員)の仕事であり、
極太の鉄筋の本数を確認しないでシャッターを押すまでの度胸はない筈だ。

だが、途中までの各階の工事記録写真は撮影済みであり、本来ならば完成図書の一部
として提出すべき筈のものが、間違った本数の写真そのままであるとは思えない。

写真を見て少ない本数だと気がつかないまま工事を進める事は考えられない。
工事写真は後日クレームが出た場合証拠にもなるし、証明にも使うのだから現場監理上、
写真の内容はその都度チェックを入れるものである。
また、そういう決まりをISOで品質管理手段にマニュアル化しているものだ。

配筋写真の撮影は設計図と見比べながらの作業であるから、現場慣れしていない若者である
ほど、几帳面に太さや本数や間隔を確認して1枚の提出写真が完成できる。
折角の写真でも鉄筋が重なって映っていて、本数の確認にクレームが出れば大変な事になる。
その大変さを知っている若者が、写真撮影時に数量不足に気がつかない訳がない。
気がついていたのは若手だけではあるまい。

柱の鉄筋は下の階の鉄筋と「圧接」という継ぎ手をして上へ、上の階へと伸びて行くのだから、
圧接の職人さんも圧接本数が少ないのに気がついていた筈だ。
明らかに施工者側が一団となって仕組んでいながら、間違えたと頭を下げる問題ではない。

「補強しますが、耐震には問題がない」
と詫びる様子もなく答えているが、問題がなければ最初から少ない本数で設計した筈だ。

万引きがバレたのでお金を払い、買えば罪が消えるとでも思っているらしい。
偽装建築物を創っておきながら、創った人が「補強したら問題がない」なんて説明を、
誰が信じられるのかだ。

もう少し、この現場を推理をすれば、
《なぜ偽装建築だとバレたのか》の部分であろう
                 (偽装建築その2へ つづく)

 

 

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エッセイ第4弾(竣工)

2015-05-12 08:14:32 | Weblog

福本 悟美(現場現場の応援団長)から建設現場のエッセイ《建設現場の万華鏡》のご案内。

《建設現場の子守唄》から《―風来坊》《―玉手箱》《―万華鏡》に至る建設現場シリーズ四部作が竣工(完結)し、リリースとなりました。《もの創り》に励んでいる人達へ、若者に夢を描きかなえさせる為に、《建設現場の子守唄》から20数年来の喜怒哀楽をこめての『エッセイ』となりました。

 各シリーズの出版の度に、感想の手紙や応援の便りに感激しながら、よくぞここまで書いて来れたモノだと自分ながら驚いている次第です。

 夢中で原稿を書いていた頃を想い起こせば―――

《建設現場の子守唄はワープロ時代で、下手な文章でも綺麗な文字で残せるから、
              自己満足だけで印刷し、紙ファイルに綴じていたものがフトした事から製本となった。

《建設現場の風来坊は自費出版できると言う気構えが強く出て、筆は進まなかったのに加えて、
              出版とリストラが重なり、頒布活動と人生設計が狂ってしまった。

《建設現場の玉手箱ではリストラによって背負っていた看板を降ろせたので、登場人物に
              名前(仮名もある)を載せて、現場の様子をリアルに伝える話題を載せた。

文章を整えながらキィボードでカタカタと文字を打つのは、いつも深夜 の作業だった―――

 それぞれの本に私の《こだわり》を綴りながら《建設現場の子守唄》出版からもう20年も経っていても、建設現場の話題に事欠かないのは建設現場に未練があるようで、後ろ髪を引かれる思いが断ち切れない自分がいる。

  ワープロ入力をしていたのがいつしかパソコンの時代になっていて、カタカタと音を聞きながら想い出を回顧していると、当時の人達に囲まれている気分になり、楽しいひとときでもある。

 《建設現場の万華鏡では起承転結の『結』がまだ有りそうなもどかしさの一滴から、建設現場を
             違った角度(というより強烈な私の偏見)で見た姿に、どの様な反応が現われて
             来るのか…となって芽吹いたようだ。
しかし、もう対応する馬力は残っていない。

《もの創り》に熱きメッセージが伝わり、継承されていく事を念じつつ・・・

         

 《建設現場の万華鏡》
                           申し込み先(福本 悟美)  Mail: boochiki@d1.dion.ne.jp 
                            TEL&FAX 052-303-7098  ¥1600 (税込)+送料¥200ー

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解体工事(2)

2013-10-23 12:48:46 | Weblog

         解体工事(2)

1週間もあれば壊せる工事は過去、何度かあったものの、大型の建物を壊すに
は事前計画が必要であり、工事期間中に起こりうる問題や近隣対策等について
は、解体業者の意見を聞いて情報収集し、安全対策を重視した工事計画書を
先ず作った。

 屋上に解体重機を吊り上げるには80㌧レッカー車をどこに設置するかと言えば、車道を使うしかない。

 警察から道路使用許可は降りるだろうが、夜間・早朝の交通量の少ない時間を
指定されてもやむを得ないし、深夜便の運転手さんに通行止めをさせないように、迂回路の交差点ごとにガードマンで誘導する気遣いも忘れなかった。

 解体建物の周囲は足場を建物よりも3㍍は高い所まで設置し、少しでも埃の飛散防止になるようにして、養生シートも二重に取り付ける事にした。

 屋上の床に4㍍角程度の穴を空けて、8階の床面に重機を降ろしてから屋上面を壊しながら順次下の階へと降りていくのである。
 重機で解体する状態は恐竜が建物を噛み付いては吐き出すような仕草であり、埃は舞い上がり、時には恐竜の鳴き声らしき音も出て振動も相当ある。

 柱の根元を鋏で切ったようにして引き倒して、倒した柱をコンクリートと鉄部に
分けるのだが、昔の建物であるからコンクリートは現在のように堅くないと思って
いたのは甘かった。

 部材の細い鉄骨がしつこいほど入っていて、コンクリートにヒビが入っても人間
の頭より大きな塊のままで鉄骨から切り離せられなくて、一向に破砕作業は進ま
ない。

 噛み砕き専用に二廻り小さな重機を搬入して、場内は倒れた柱と壁を壊したコンクリートガラが8階に山積みになって来たが、もう屋上の床はなくて8階は全て炎天下にさらされている。

 屋上の床面を壊したガラと重機の重さでこの8階の床は何㌧まで耐えられるか
計算すれば、
「完全にアウト」
の答えが出ると言って、作業計画の変更を伝えに構造計算の担当者が来た。

「冗談じゃない!」
「古い建物でありコンクリートも強度が低いハズだし、構造計算では・・・」
「計算式の判定基準が違うのでは?」
計算書を開くまでもなく、私はきっぱりとはねつけた。

 合衆国の貿易センタービル倒壊のように、上階が崩れた荷重で順次下の階が
崩れて行く事を眼にしているが、解体困難な建物を今、苦労して壊しているのに、
簡単に倒壊する訳がない。         続く・・・

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解体工事 (1)

2012-10-22 14:02:16 | Weblog

 ………………………(解体工事 その1)…………

 

 コンクリートの建物の耐用限界が来たのではないが、地下1階地上8階のビルの解体工事を監督する事になった。

明治時代の建物には希少価値があり文化保存の為に解体にマッタがかかる場合もある。

これから壊す建物の2階までは壁は石貼であり、特に玄関の入り口を飾ってある石は、
「オブジェとして展示出来るようになりませんか?」
と解体工事中に上手に切り取って保管し、解体後に建てる建物の庭に旧建物のシンボルを残しておきたいセンチメンタリズムがオーナーさんから出た。
「昔の職人さんの手仕事だから、上手に切り取れないかも知れませんが、一応……」

 解体するに当たって、この建物の設計図が保存されていた事に驚いた。
 
地下室があったせいで、戦争時にも倉庫で眠っていたので助かったようである。
 
昔の設計図だから縮尺は当然『寸尺』で書いてある。
 
1階の高さが8尺5寸5分が何㌢であろうと、解体するのだから細かい計算はいらないが、何となくセンチメートルに換算してみたい気分にもなるものだ。
 職人さんと言わず、図面と言わず苦労した工事であろう事は、想像出来る建物である。
 
解体しながら壊れた断面を見て当時に想いをはせても、宇宙の彼方を見ているようで先達の苦労の底までは分からない。

 言える事は、生コンクリートもレッカー車もない時代に、78尺7分の高さまで(約24㍍)も鉄骨を繋いでコンクリートの建物をよくぞ建てたものだと、感心する。
 
材料は担いで運び、人から人への手渡しであるのは分かるが、敷地全体にある地下室を創るのにどうやって土を掘り出したか、掘れば水が湧き出るから水を汲み出すポンプはあったのだろうか、山留は丸太と板で地盤の崩れを防止したのだろうか………等を先輩に聞いても、どうも納得しかねる話しか返って来ないのである。

 柱の中に軸として鉄骨がある事から、この建物を創る意図は相当な頑丈さを想定してある事がわかるし、戦後室内改装して事務所として最近まで使っていても、設計図には防音室・録音室の名称が記入してあり、軍需関連に関係があった建物には間違いなかろう。

 鉄骨の柱と梁もH鋼はまだない時代であるから、75㍉のアングル材(L型)を抱き合わせてTの字にボルト締めしたものが、部材の骨である。
 
これをW字の連続したような型にして柱の四面に立てて、周囲を鉄筋で巻いてからコンクリートを打ち込んであるのだ。

 昔の職人さんの汗苦労の塊まで、壊しているようである。

 建物を創る職業を私は選んだのであるが、本格的に解体する現場に巡り合えたのは何か因縁があったのだろうかと、新築工事にはない心の叫びが毎日聞こえて来るようだった。

 1週間もあれば壊せる工事は過去、何度かあったものの、大型の建物を壊すには事前に……

******** 解体工事(2)へ続く********

 ***************************************************************
   建設現場エッセイシリーズの案内 

     《建設現場の子守唄》 ¥1400- (税・送料込)
    《建設現場の風来坊》 ¥1500-            3冊同時申し込みは
    《建設現場の玉手箱》 ¥1500-           ¥4000-(税・送料込)

   問合せ先 (有)アンダンテ総合企画
        〒454-0962 名古屋市中川区戸田4丁目1605-1
            Tel&Fax 052-303-7098                       -              sbk 090-8550-4599
            E-mail:andante2@d2.dion.ne.jp
  **************************************************************

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ISOが何だって(3)

2010-11-05 08:54:10 | Weblog


                       
建設現場でのISO
を振り返れば…。
自分の会社専用の品質管理マニュアルを作ったものを認定機関が審査する
だから、建設会社によって骨子は同じとしても申請文書内容は全く違う
のだか
ら、ISOの取得の内容濃度もバラツキがあるまま認定されており、
建物機能
の品質は誰も判断出来かねるのだ。

つまり、ISOを必死に現場でやっていても、コンクリートのヒビから
雨水
の侵入を防ぐ事すら考える必要もなくて、自社の都合による監理状
況を文書化
しただけで、どこに品質保証が出来る言えるのか

「雨が漏らない事を保証出来ます」
と言うならば建設業界への品質保証と思えるが、認定機関は技術力の保証
しない、との一言で品質保証の定義を論じ終わる。

世界で使うもの、例えば建設重機などはどの国でも性能を考慮して、
品質保
証システムの基準で工場にて製品を創るから、国際基準の評価と
して工場に対
しISO認証取得の御墨付きがあっても当然である。

くどいようだが、重機の能力品質が保証されているのではなくて、その
工場
の書類監理システムがISO認証なのである。

本社工場が取得しただけで、各支店まで共通に認証されたのではありません。
日本にて、しかも建設業に於いて、小さな現場事務所に於いて品質保証
マニ
ュアル通りに品質を監理するよりも、建築協会の《施工監理指針》
通りの完成
品にて《品質確保の保証》と言えるものだと私には思える。

「ISOは品質システムの規格内容を重んじ、品質そのものが良質のも
のであ
ると認定するものではない」と私なら結論付ける。

そうなるとISOの認証を取得した会社は優れた品質で《建物を創る》
と言
うのは間違いである

建設工事の工事事務所毎にISO認定申請が基本であろうが、
申請から認証
まで2年間は必要であるから、建設現場ごとに申請は
まず出来ません。

その代わりに本店・支店にISO品質監理部を設置して、管轄工事事務
所総
てにISOを行き届かせるのであるが、工期のない突貫の現場や現
場事務所の
設置も困難な狭い場所での工事現場にまで、稼動現場を漏ら
さずに一定のマニ
ュアル遵守を求められるのがISO認証取得の宿命で
ある。

日本で《最初のISO認証取得ゼネコン》との栄誉を頂いた会社には敬
意を
表しますが、現実を考慮すれば建設現場にISOを導入出来ても、
成果は出る
のだろうか?
ゼネコンの看板にISO認定取得を世間に誇示しながら
現場の監理がおろそかになって見えなくなるコンクリートの中の
鉄筋の太さや本数を間違えたスーパーゼネコンの
でさえ
ISO認証を即刻、取り消しにはなっていない。

建物を築く上での品質審査ではなくて、書類記載内容を整備出来れば
それがISO国際的なもので、認証合格であるという事ならば…。

建設業界にてISO認定取得を競い、最良の建設技術力が整備されたか
の如
くに世間に御墨付き的な公表をするのは、如何なものでしょうか。

建設業界の中ではISOがもたらした結果が明確でないから、やっても
無駄
とは言わないが、マニュアル通りに創れる『設計図』も必要ではな
かろうか?

設計図通りに創るのが施工者の使命であり、その通りに創ればいい
だけなの
に、何をもって品質認証のシステムが必要になるのか今一歩、
分からない。

私は建設業のISOに対して、反対している訳ではありませんから、成果
をあげている会社があれば
、学習に伺おうと準備しているからである。

   《続く》・・・コメント待ってるからね~

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ISOが何だって(2)

2010-09-23 17:54:00 | Weblog

ISOとは強制された品質監理でなく、自社で作った品質マニュアルに沿って品質監理をするのだから何ら困難は無くて、取得出来れば何度審査を受けようが不合格になる事は先ず有り得ない。

「ISOを取得するのは品質のよい建物を創る為」
普通ならば思えるし、その為に厳しい施工基準を創るのならば建設業のレベルアップになるのだが、ISOにはこのように創れとの《品質精度》の決まりがない。

品質管理としてとにかく《システムマニュアル》を整備・維持するのが重要
なのである。

だから品質管理システムの名目のために、建設現場で机に向かって書類作り
が増大している。
精度が悪かろうが手順が違おうが、現場巡察に出て監督する時間を短く
してまで書類を作って、建物は職人さんに任せていても、品質管理を
認証されることに必至になっているのだ。

簡単に言えば、創る精度の技術基準ではなくて、契約条件とか下請け業者の
選定方法とか記録を何時チェックしたのか、記録保存を細分化して綴じる方法まで文書で決めている。

例えば、ISOに於いては現場事務所に施工体系図を表示せねばならないと言い、元請から矢印付きで一次下請け、更に孫受け(二次三次請負)の協力業者を線で結んである表が掲示されている。

行政から三次以下の下請けを制限せよの通達の中で、実際に建設業は多層請
負であり、四次下請け以下の会社から来る職人さんもかなり多いし、現場は職人さんが何次目の会社になるのかを黙認しながら仕事をさせている。

請負体制をありのままに表示すると都合が悪い部分はISO文書といえども、
最初から記入しない。

認定機関が審査するのは認証申請会社が作った文書だけであるから、四次下
請けを省略した文書であっても問題はなく(バレる事)もなくて品質認証は格のままである

又、建設現場事務所へと何度も転用している書類ロッカーの鉄扉を、室内から中の物が分かるように透明ガラス扉に取り替えるのは許せるが、ISOファイル(背幅5㌢の大型ファイル)の背表紙にはファイル見出しを書いて順番をつけて順序よく並べる事まで義務付けして、品質の良い建物が出来る手順にはほど遠い部分に非常にこだわっているのである。

 日本にはJISという立派な製品の基準があり、建設仕様書も数年毎に刷新発行され建設業者で取り組んで来た品質の確保があるではないか。

日本国土で建設するものに国際品質保証のシステムを求めて、良い建物とし
て機能保証するための認定書ではないのに、ISO認定取得に向けて文書を創り、現場の監理がおろそかになって鉄筋の太さや本数を間違えた所長さんのでさえISO認証を即刻、取り消しにはなっていない。

顧客のニーズに対応と言うけれども、一体だれがその品質保証とやらの恩恵
に預かっているのだろうか?

ISOを取得するのは、認定機関から審査合格すればよいだけであって、国
際品質といいながらも日本で認可されても必ずしも世界でそのまま認めてもらえるとは限らない。

自分の会社専用の品質管理マニュアルを作ったものを認定機関が審査するの
だから、建設会社によって骨子は同じとしても申請文書内容は全く違うのだから、ISOの取得の内容濃度もバラツキがあるまま認定されており、建物機能の品質は誰も判断出来かねるのだ。

つまり、ISOを必死に現場でやっていても、コンクリートのヒビから雨水
の侵入を防ぐ事すら考える必要もなくて

  《続く》・・・

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ISOが何だって(1)

2010-08-26 23:44:14 | Weblog

  ISO が何だってんだ・・・の巻

建設業界にも訳のわからない単語が、しかもローマ字で看板文字が多くな
ている。
現場内のポスターを見渡せばTQC・KY・VE・5K・5S・・・等あ
るなかでも最近はISOが頻繁に現れるようになって来た。 私も建設
現場にいてISOを少しかじったのであるが、ISOを導入しても恩恵が
あったとはどうも思えないままである。

確かに、工場に於いて製品を創る場合ならば、ISOの威力は認められ
るが、建設業界では実際に必要なのか、建設現場でISOとは一体何を
するのか……少し考えてみましょう。

そもそも建設業のISO(以下9000Sは略)とは、
「建物の質をどのように良くするのか」
「建物は人の手で創り出す」
という技術的な品質検定基準項目が無いまま、ISO認証取得の為に
《マニュ
アル書類作り》に忙殺されている。

建物を創るのに、鉄筋一本の品質よりも書類の一頁を充実させる事に
神経を
使うISOは《顧客のため》という大義名分が品質の第一目的な
のである。

「顧客のニーズに応えるように、品質管理をマニュアル化する…」
この一行がまったく建設現場に、職人さんの腕にマッチしていない。
VEならまだ分かる、設計変更とでも言えばもっと分かる。

ISOを今更説明するまでもないが、品質管理システムの体系が国際的
に通
じるかどうかがISOの根本であるから、建築物自体の機能・品質
《確保》
のテーマはお呼びではない。

柱がどんなに傾いていようと一切問わないで品質認証なのである。
(傾いていたらこのように検査して記録を残します)という書類が整っ
ていれ
ば、第三者の認証機関に合格するのである。

建築屋は建物を創るのが商売なのだから、技術力を示す事なく、世界に
共通
するかの如くマニュアルを作っても、どう活用するのかが見えない。

認証機関による審査を受ける建設業者としては「書面審査」「事前調査」
「実
施調査」へと3段階の審査(あくまで文書審査)をクリアすれば
ISO取得
企業になるのである。

認証取得が出来たら建築現場が一律によくなる…とは定かでない。
認証を取得しても半年毎に維持審査と3年毎の登録更新もある。

維持審査と言っても、品質認証のマニュアル通りに記録を残しているか、
まり、申請した内容の文書管理記録がなされていればISOとして
満足であり
実際の建物にヒビが入っても雨が漏っていても品質保証機関
の審査範疇以外で
あるから、ISOの取り消しにはならない。

柱の鉄筋の設計図数量が少ないまま、工事記録の写真は完備し、
コンクリートを数階(期間にして3ヶ月)打ちながら配筋検査官も
現場監督もミスったマンションに品質が確保出来るのか?


「構造的には余裕のある範囲だから大丈夫」と背広組がTVで言い訳を
言っていたが、余裕があるほどの構造計算書ではプロではない。
景気の悪い時期に赤字覚悟で受注した物件に余裕のある鉄筋量が、
設計図に書いてある筈はない。
(安全率限界の為に挑戦にパソコンを使うのに)。
品質を落として建設業界のイメージを失墜させてもISO品質の認定
機構から、不合格・認定剥奪の話も聞こえて来ない。

強制された品質監理でなく、自社で作った品質マニュアルに沿って品質
監理
をするのだから何ら困難は無くて、取得出来れば何度審査を受け
ようが不合格
になる事は先ず有り得ない。

 《I.S.Oが何だって》 その2へ続く・・

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責任逃れ(3)

2010-07-17 15:58:09 | Weblog

手直しをしたくても、補修する為の受け金物(下地)が入っていないの
を知っているし、入っていなければ補強が出来ないし、他の方法で取り
付けるにしても4階まで足場を架設せねばならないし、ゼネコンは
クレームの処理をする気がなかっただけである。

それでもゼネコンは責任をAさんに押し付けるのか!

その為に、幼い命が二つ、未来の夢とともに天国に行ったのである。
両親の悲しさに触れなくとも、ゼネコンに全責任を負わせたくなった。

弁護士さんに伝えるように、社長に言いました。
Aさんは自分の判断ではなくて、作業命令で取り付けて、工事代金を百%
頂いている。
と言うことは、ゼネコンは契約作業を総て認めた事であり、取り付け不
備にはならないから、Aさんの作業に問題も責任もない。

作業当日の安全日誌をゼネコンは保管しているから、当日の安全衛生責
任者(協力業者)全員に集まってもらって、現場作業状況を証言しても
らうように、呼びかけましょう。

多分、ゼネコンはその日誌を公開したがらないから、裁判官に、
「隠し事をしていないならば公表してください」
と申したててみましょう。

安全に作業させて工事監理をゼネコンがしていたかハッキリさせる事が
先決である……と。
最初からクレームを伝えてあるのだから、入居者の使用によるミスで
はない。
***********************       ********************
2階までに取り付け可能の手摺を3階以上に現在も取り付けてある
責任は誰にあるのか。

設計図より違ったメーカーの手摺が取り付けてあるならば、
誰が変更を許可したのか。

許可した品物を施工図通りに取り付けず、完成検査を合格させた責任は
誰が負うのか
***********************       *********************
言われるがままに仕事をしたAさんと金物店の社長に損害賠償を求める
理由は、最初に警察官に一言謝った調書があるからである。

その時の警察官の取調べに対し、
「私は、ゼネコンから言われた通りに、作業しただけです」
とはいかなる場合でも、下請け業者とすれば言えないものだ。

 このように責任追及されるのなら、職人さんは、
「ノーコメント、ゼネコンに聞いてください」
と警察への答えかたを、覚えておかねばなるまい。

建築現場の仕組み、特にゼネコンとの請負の業界事情を弁護士さんに
先ず理解できるように、
後日、社長と弁護士さんと再度、相談会を
設けた。
とにかく、Aさんとその金属金物会社宛てに損害賠償を争うの
ではなくて、ゼネコンを司法の場に出すように、弁護士さんに
お願いしたのである。

協力業者としてはゼネコンに対して言いたい事を我慢するのは慣れて
いる。
しかし、訴訟の場に出る限りは、真実も現実も明確にする必要がある。

明確にする事によってゼネコンから出入り禁止になるだろう。
それは自分が正しかった事であり、責任逃れをするゼネコンに見切りを
付けたとしても、ゼネコンから今後得るものは何もなく、自分が失うも
のも何もない。

同じ見切りを付けるにしても、信念を貫いた結果なら又、道は開けて来
るものだ。
開き直るのではなくて、堂々と訴訟に対処して、納得が行くまで耐える
覚悟を願った。

「建物を創るという事は、完成したら終わりではないのだ」
と常々言うのであるが、竣工後の保全がなおざりになっているのも、
現実であろう。

工事期間中は竣工に向かって時間との戦いになり、とにかく完成させる
だけの仕事になれば、
完成すれば完全燃焼になり、
建物を「使う」という使命に対処できる余力がないのである。

 「自分の心血を注いで創った建物には、何年経っても愛着があるものだ…」

と今更ながら思っている。

ゼネコンに当然、責任問題は及んだ事を伝え、この話は終りとします。

************************************************
・・・コメント待ってるからね~。

 

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