建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

原価管理の本音は

2024-08-05 07:41:05 | 建設現場 安全

十二月  一日(金) 晴れ   

師走。
ついに十二月だ。
建築業界は十二月末の竣工が一つのピークだ。

区切りとしての年末か年度末かに竣工日が集中する。
新しい年から新しい建物でという日本人の固執してしまっている考えに、古いこの業界が押し
切られている訳だ。

昨日現在出来高は94%だ。
もう終わったも同然だが『追加工事の金額』を決定させるのが(近日決定)私の責任仕事の
一つだ。
今月には追加工事の支払いが一部出て来るのだから、ここ1週間以内には決める見通しだ。

Kビルの竣工は1月だ。
今月の中頃には竣工検査を―――と気合を入れ始めた所へ、
官庁検査関係は1月になってから行うので、年内に業者の自主検査を済ませる様にネ」
とA設計事務所より連絡が入った。

今、室内は4階迄床カーペット貼りが完了していて、上履きスリッパで作業している。
クロス貼りは6階施工中でもう少しで完了だ。
クロス貼りの完了した部屋には、設備工が電気のスイッチや空調のカバーを取り付けている。
設備担当のK君とH君もこれからが《本番》だ。

各室には鍵が掛かって……アレッ?掛かっていないヨ。(工事期間様の仮鍵のままだ)
これ明日、即、手配の確認だ。

塗装工事も終了していて、傷がついた所をもう一度チェックして仕上げると終わりだ。
(やり残しているものは―――)
と昨日からそればっかり頭の中が空回転している。

こういう時は契約書を見るに限る。
その中の見積書(請負契約書)だ。
一式という所(項目)はパスしても、各工種毎に内訳明細がある。
 例えば雑工事の場合―――
         避難ハシゴ2台、消火器B型8本、鍵ケース1ケ、各階案内板、室名札、黒板、
         掲示板、郵便受け、タオル掛け、旗竿・・・。
取り付ける物も結構あるものだ。
他に外構工事では―――。

今日は安全大会の日だ。
昼食時に場内にいたのはEV工、設備工と片付け人夫で合計しても8名の淋しい大会だった。

今年もまた12月後半は労基署の『歳末特別パトロール』が実施(来場)される。
Kビルはまだ一度も立ち入り検査を受けていないので、今月は来場がありそうな気配が濃厚だ。
15日からは
「無事故の歳末、明るい正月」
の垂れ幕を掲げて一年を締めくくるのも例年通りだ。

今年の師走はアンダンテ(歩く速度)で現場を過ごし、新年を迎える事としよう。

十二月  八日(金) 晴れ

全く現場とは関係ないけれども、今日は太平洋戦争開戦の日だ。
この日があって8月6日、原爆の日があって、戦争が終わった・・・と未だに思っているのは、
私が広島人だからだろうか。

《平和である、自由である》
という事は何をしてもいい事だとは思えない。

自分勝手に行動して、それが自由だという考えを教えたのは誰だ?
日本国憲法を自分の本棚にも入っていない日本人に、自由、平等を語る資格はない。
「勉強して出直して来い!」
と今日はヤケに堅い話になった。

というのも、これは朝、通勤途中のFMラジオのDJが、アシスタントの女性に、
「今日、8日は何の日か知っていますか?」
「巨人軍〇〇選手の誕生日です」
と自信満々に答えた時からムカーッと来た。

DJの方は戦争の話をするつもりで問いかけたのに、何と言う無知な女性よ。
(しゃべ)る事がプロにしては暦からの空気が読めないのでは
「一発で失格」
だネ情けない。

この平和、自由は降って湧いたものではない。
これを何とも考えていないから、楽な方へ楽な方へと若者も、日本人も、人間も(ついでに
私も)流されている。
やはり、歴史というもを通して、過去の人達の人生を通して、今日がある事を気づいて欲しい
のだ。

 寺院建築をみても平安時代にはその時代、鎌倉時代にもその時の息吹があり、戦争で無にな
ったものも有り、そして復興しての今日だ。

 今、我々が創っている建物、これが何百年後に有るかどうかも分からないが、残っていれば
我々の訴えようとしたものを形として現せるだけに、
《平和を守らねばならない》と私は叫ぶ。

ピラミッドは誰が作ったんだ?名もない人が王様の為に作った物でさえ、私は見学に訪れた
い欲望でいっぱいだ。
我々だって何かをこの地球に残せれば幸せだと思いませんか。

さて、本日の本題。
定例打ち合わせで(追加工事金を決定して頂いた)というよりも、
「△△△万で決めて来たけどいいね」
「ハイ!」
としか答えられない、簡単な一発回答の即決だった。


 頭の中で多少ソロバンの珠が動いたけれども、ここから50万~100万の増額願い話をして
もみみっちい。
これで儲けるつもりは当初からないのだし、予想金額最低ラインより少し上だったので
OKしてしまった。
(背広族は1円でも多く決めてもらえと当然のように言うて来るのだが・・・)

 もう1ヵ月の内でさほどのチョンボでもしない限り、予定外の出費さえなければ、一応私の
工事原価監理能力を疑われずに済む筈だ。

原価監理(予算書益金+〇%アップの儲け)は企業秘密として、建築業界として儲かったと言う
時代はオイルショック前迄だったのかも知れない。

見積書の中でも直接工事費に材料費、これだけで請負金の何10%も出て行ってしまう。
そして残った部分から、諸経費として仮設工事費、現場経費、安全監理費、支店経費を差し
引いていくと、引く金額が無くなって(純益そのものが0に近づく)
『赤字だ、赤字だ』
と騒ぐ場合も多々ある。

見積書の最後の項目に諸経費一式△△△万と書くと、その金額だけを見て、
「安くせよ、何で諸経費がそんなに……これがお前さん所の儲けだね」
と、さも分かっているような事を言う監理者もいる。

経費を全額残しても仮に10%なら、使わなければ10%は儲かりそうな計算も成り立つが、
使わずに仕事(建物)が出来るモノではない。

実施予算書の純益目標値から0.5%は益率の良化をする様に努力はしているが『現場四監理』
中で工程、品質、安全の後に原価監理が続いていては、まだまだ未熟者なのだ、この私は。

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高架水槽設置と方丈記

2024-07-22 08:30:16 | 建設現場 安全

十一月 三十日(木) 晴れ

今月で一気に完成した気分になったのは、外部足代(あしば)が無くなったせいだろうか。

 建物周辺もさっぱりした感じになっているけれど、花壇の立ち上がり壁コンクリート打設
とか立体駐車場の排水管等の埋設工事もあり、まだまだ地面が落ち着く迄には日数がいる。

 今月を振り返ってみるまでもなく、来月のカレンダー「最後の一枚」12月を開いてみた。
 年末に祝日が一つ増えているし、ボーナス、忘年会、クリスマス会、二日酔い予定の日等
遊ぶ事や楽しい事が沢山ありそうだ。
―――年末休暇、お正月休みも目の前だなあ……。来月のこの頃は正月気分だろう―――
但しKビルが予定通りに出来上がっていればの話だがネ。

足代の材料も予備分を残して返送終了した。
引き続いて今度は仮囲いを解体する。

今までは道路使用許可を受けて車道へ1mほど飛び出していたのが、スッキリとして来た。
しかし、竣工迄は不用心なので、簡単なネットフェンスで仕切りを作った。
背を伸ばせば敷地の中が見える位だが、道路の境界線より内側に一応設置した。

まだ敷地内はアプローチ(道路~正面玄関)に床石貼り工事を残しているし、交通災害に
お互い関わり合いたくない。
この簡単なフェンスで現場内作業時には安心して仕事が出来るが、強風で倒れはしないかと
一抹の不安はあるので、建物から控えを十分に取り付けておいた。

朝の6時からM店舗でも世話になったT組の45㌧大型のレッカーが、入口に座っている。
交通量の少ない時に、屋上へ《分電盤》《高架水槽タンク》を荷揚げの為だ。

レッカー車自体は敷地内に入っていて問題はないのだが、搬入トラックが半分歩道に飛び
出してしまう。
警察で一応許可は受けているものの、第三者への交通の流れを悪くすると事故の誘発原因に
もなりそうで、早朝に荷上げを行う計画としたのだ。

(わずか)40分のレッカー作業時間だけれどガードマンさんにも半日作業補償、つまり半日
分の賃金を支払っての作業だが、もったいないがやむを得ないと言う気持ちにさせられる。
このレッカーは8時には他の現場へ「お早うさん」と何気なく出勤するのだろうね。

屋上へひとまず置いてある荷物は『重量物運搬工』という専門業者で設置する。
コロに載せたり滑車で吊ったりして《物理の原則》がここにあると思える位に、理屈抜きの
方法で作業を行うのは、人間の知恵と言うものだろう。

しかし、いつもの事ではあるが、高架水槽の荷揚げや設置の度に、
(これは何とかならないものだろうか)と思う。

昔から高い所にありデッカイ『高架水槽』だけれども、最近は小型化にある程度なって来て
はいるものの、建物の外観上から奥の方へ追いやられていて、おまけにスペースも狭い。

デザイン的に丸い物やステンレスの物、塗装を施したものもあるけれど、風格のある建物に
見せる場合は塔屋を囲って「外観に現さない」場合が多いが、
しかし、このテッペンを誰が気にして見ているのだ?――と私はいつも思う。

タンク自体もいいデザインだと私には思えるが……。 
設備工もたった一個の物体の為に荷上げ方法で悩むのだ。
レッカーが設置出来ないと、本気で(ヘリコプターで持って来ようか?)と考えてしまう。

私はまだヘリコプターで搬入した経験はないけれど、現実には時間の問題となろう。

そうまでして、高所で辺ぴな所に設置する必要はどこに原因があるのだ?
設計図面通りの位置の為か、それとも建築基準法の斜線制限をのがれるためか―――。

建築とは『建て築く』という精神を忘れて、デザイン、法律に走り過ぎていませんか?
これらは創る側の勝手な言い分だと思えるでしょうが、このタンク一個の為にどれだけ日本
国内で建築業者がムダな事を行っているか迄考えるのは、私位のものだろうか。

官庁の『○○館』の建物ならいざ知らず、一般建物でも屋上にデザインを要求しますかね。
『税金のムダ、土建屋の儲け』のバランスを保っているのなら、私も黙っていよう。

民間の建物の場合、タンクを隠す壁の高さ(建物の最高部)さえ同業他社のビル建物より10㌢
でも高い、高くしろ(この市内では最高だ)と競っている企業もあるくらいだしね・・・。

―――方丈記、曰く―――  
       「たましきの都のうちに棟を並べ甍(いらか)を争へる、
                 高き卑(いや)しき人のすまひは、世々を経て尽きせぬものなれど、
          これをまことかと尋(たず)ぬれば、昔ありし家はまれなり・・・」

 

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足代解体完了・資材搬出

2024-07-08 08:02:14 | 建設現場 安全

十一月二十一日(火) 晴れ

とうとう足代解体が完了した。

6月に組み始めて5ヵ月間も使用していた訳だ。
安全パトロールの前には手をかけて自主点検をおこなっても色々と指摘事項を受けて、是正
しながらの足代も全て無くなった。

足代解体を始めたのが10月30日だったから、20日間も『解体中』を引きづっていたのだ。

 途中で防水工事(2階の屋根、3階の屋根)が終わる迄足代組立を残したり、荷上げ用の
ピアットを残したり、階段室吹き付け用にも一部残していたが、吹き付け工事が終わって
クリーニングも済んで、やっと今日で解体完了となった。

足代を解体して同一部材毎に無造作に置いてあるものの、どこを通るのだと言うくらいに、
場内は整理整頓の文言が失われている。

(11月末日迄に足代の解体完了が出来れば……)
という当初の工程表からは大幅アップになっている。

これでもし軽天工事が今月2週間現場を空けていなかったら、もっと早く決着が付いていた
けれど、これは今更言えない。

足代解体の材料も3分の2は返送済だ。
大切に使ったつもりなのに不良品として修繕費を取られたり、送った数量と受け取った数量が
食い違ったり、帳簿の記載より多く返した事となる物もあったり、無くなったモノとして処理
された物もある。

この『資材台帳』はどの現場でも最後迄書き込むと、収拾が付かなくなる事が多い。
資材を受領している期間は予定数と納入数の比較が出来るけれど、返送し始めると一向に責任
が持てないのだ。

現場ではトラックに積み込む時、運転手や人夫、F君等で返送資材を数えながら積むけれども、
果たして数が正しいのかどうか確約(責任が持てない)出来ない弱みがある。

(最終的には機材センターが数量チェックするのだから任せるしかない・・・)
と、トラックを送り出す。

 こういう現場からのトラックが、機材センターへ門限時刻の16時到着を目指して発進し、
滑り込む。
受け入れ側はどの車がどの現場の品物だったのか迷って当たり前になると思う。

そこまで読んでいるのだから、私は責任を持って数をチェックして届けているつもりだが――。

『同じ会社の資材だから、ドンブリは一緒だから』
とも思えるが、各々現場では足代のコストプラン(予算)を守っているのだから、大幅に
悪化するとマズイ。

機材センターが他の現場へ間違って受領書を送って
「片方は無くなって片方の現場は増えた」
では、本来有り得ない話だが、それが不思議とあるし、多いものだ。

 返す時に50本毎束にして送った筈なのに一束分がない(他の現場伝票へ混ざった)となると、
こちらは50本損失(消耗紛失)換算になってしまう。
それなら運賃かけて運んでも紛失となるのならばスクラップ屋から鉄くず処分代と入金した方が
「お互いに得だ」
となってしまう。
極端に言えばだけどね。

足代を解体する順番にそのままトラックに直接積み込む方法もある。
解体した材料を借り置きするスペースの無い時には、車道にトラックを停めてよく行うけれど、
これもトラック積込から発送時間までの作業時間代がかかり、コストアップになる。

しかし、解体がせっぱ詰まった工程の時では、出て来る順に荷台に載せて搬出して
有効に積もうという考え』
さえ無くなって「とにかく片付けろ」になってしまう。

突貫工事ではこういう所で一気に運搬費の赤字が生じてしまう結果になるものだ。
(4トントラックに3トン半で荷台が山盛り姿になって搬出すれば・・・)

今まで足代そのものに注意を傾けていたのに、解体して一つの部材になると散乱し、踏んで
通っても平然としたヤツもいる。
これには私は文句を言う。

手こそ合わさないにしても《毎日無事であれ》と祈っていた足代及び足代上の作業の部材なのに、
『終わってしまえば知らん顔』
では私の腹の虫はおさまらない。

整然と束になって借りた物を、束にするでもなくゴチャ混ぜで返して
「数をチェックしてヨ」
と言う神経も私には理解しかねるものだ。
(返送する時は、束にする(数量の荷札を付けて)位の心配りは必要だ)

 私だって中にはどうしようもなくて、混載車を作る場合もあるけれど、それが当然だとは決
して思っていない。
ゴメンナサイの一言を必ず添えて連絡する様にしているつもりだ。
まあ、人それぞれが材料に対しての考えもあるので、以上は『私の一人言だ』と解釈してい
いけれども、現場員としては忘れてはならない事だと肝に銘じていて欲しい。

Kビルの足代が無くなって、1階周辺もスッキリした。

場違いの感じのする《非常灯》が吊るしてある1階は、物置兼用の休憩室になっているので
外からは見えない様に、取り敢えずは窓に目の高さまでのシートを掛けておいた。

これから『外構工事』いわゆる建物周辺の仕事がある。

 たて樋の接続、花壇、電柱、電気の引込み等は足代がある時には作業出来なかった部分で、
どうしても足代解体後に行うダメ部分の仕事だ。
それに立体駐車場がある。
これを組み立てるにもスペースが必要だし、本管接続設備用の埋設管の仕事もある。

足代材料を完全に搬出してから場内整地・花壇・植樹・舗装を行う仕事もある。
足代解体して一ヶ月で外構工事完了、引渡しが普通だ。
12月20日の自分勝手な竣工目標も妥当な線と思っている。

 

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義理・人情・浪花節の世界

2024-06-24 07:51:19 | 建設現場 安全

 十一月 十五日(水) 曇り

6階は今日から軽量天井下地組に、軽天工が戻って来る打ち合わせだったにもかかわらず、
私との約束をスッ飛ばしてくれた。

「なんとか火曜日迄・・・水曜日からは必ずという社長の言葉を信じた私がバカだったのか、
甘ちゃんだったのか」
とイヤミを軽天工の今井君に直接言った。

「2週間前に私に『どうしてもあっちを片付けろ』
と△△工事部長(神の声)から言われて、1週間助けて下
さい所長、必ず借りは返すから・・・」
と頼んだのは誰だったのだ。

 多分、予定通りに進んでいない現場へ応援に行くのだから、Kビルへ戻って来るのも
少しは
遅れるだろうと予想していた私だが、1週間のつもりが、さらに1週間も遅れるとは
思いも
しなかった。
(その発端が当社からの神の声であったにしてもだが)

そう言えば今月初めからずーっといないンだ、軽量天井下地組屋さんは・・・。

11月も中旬になっている。
室内は軽天工次第で、仕上げの先頭工事(室内間仕切り)が止まったまま、こっちにも
ケツに火が点(つ)きそうな雲行きとなりそうだ。

私の胸は言っている。

  (職人達を手放したお前がバカだ                    うんバカだったョ
  (M店舗でつい先月、自分がピンチの時、誰か助けてくれたかい?    誰も・・・)
  (文句は言えども、手助けに人を廻してくれたかい?        誰一人も・・・  )
  (だのにお前は何故人の所へ、手助けに人を廻したんだ?    困っていたからネ)
  (ヤサシイからか、バカかアホかそれともオヒトヨシなのか?      オヒトヨシ・・・さ

自分の現場だという殻(から)に閉じこもっていると、職人達を手放なさなかっただろうけれど、
間内でどうしてもと言われれば―――この辺が私の甘い部分、性分、ヒトガイイのだろう。

情けは人の為ならず
何時かは必ず自分の為になると信じ、
GNN精神(義理、人情、浪花節)日本人の魂を
まだまだ持ち続けていたいのです、私は。

十一月 十七日(金) 晴れ   

まだ『吹き付けタイル工事』が階段室の天井に残っている。

外部足代(あしば)が無くても階段吹付けの作業は出来るけれど、この部分のみ足代解体は残
しておいた。足代=完全に整備された足場)
(吹き付け塗料がタイル貼りした所に飛び散ったら、またクリーニング用に再び足代がいる)
という予想の基で残しただけだ。

既に解体した足場材料の片付けが残っているし、今続いて足代解体しても、搬出が間に合
わない
から、この間隙をぬって吹き付けを行う事にした。

 当然今なら外部足代があるから作業性はいいし、安全でもある。
 昨日の雨で少し躯体が
湿っぽいけれども、養生が終わる頃には乾いていて、吹き付け
工事は出来そうだ。

冬場の下地乾燥不足気味の吹き付け工事から思えば、よっぽど条件はいい。
今日は下吹きとし、明日、最悪でも明後日迄には吹き付け工事の完了だ。

 吹き付けが始まるとシンナーの香り(匂いと言うより臭い)が漂い始めた。
 シンナー遊びのどこが楽しいのかよく分からないけれど、気分のいい匂いじゃあない。
頭がクラクラする前にゴメンだね。
今日は無風状態だから匂いもしつこい。 
「風に乗って(臭(におい)もろとも)飛んで行けえー」

昔、丁度隣が銀行で、暖房のリターンからシンナーの匂いが流れ込んで、営業閉店後呼出し
を頂
いた事もあった。
別にシンナーを振りまいたのではなくて、吹き付け工事を早朝から日没迄、
目一杯行なった
結果だった。

 こういう近隣迷惑工事は1日4~5時間迄の作業にしておく必要があるね、これからは。
この銀行内にシンナーが入り込むという事は毒ガスも吹き込められるのでは・・・とミステリアス
な事を考えたものだ。

 アガサクリスティの世界に私が入ったら、
 〔放送スタジオの様に完全密室ではないこのZ銀行を、空気を使っての犯罪は可能
だろうか……犯人は昔、軍部の毒殺計画秘密組織の一員で・・・〕―――冗談。

 現実に戻れば「吹き付けの塗料が車に付いた」とクレームの付けられる事がかなりある。
この手のクレームには土建屋としては実に弱い。
新車、中古車、廃車寸前の車であろうとユーザーの怒りは凄(すさ)まじい。
常日頃ワックスを掛けている車ならば簡単に取れるのだが、そういう人の車は工事現場へ
は近づけて駐車しない。

移動をお願いしても、
「どうせもうすぐ下取りに出すから……」
と言った人に限って、
「塗料が付いた、何とかしろ、下取り価格が下がったら責任を・・・」と騒ぐ。

「だから最初に言ったでしょ、建築屋を甘く見たらいかんぜよ!」
とタンカを切ってみたいなあ。

とにかく
「済みません、済みませんでした」
と頭を下げてガソリンスタンドへ持って行く。

手洗いしてワックス掛けをして、時にはコンパウンドを使って吹き付けを取り除く。
1台や2台ならいいけれども、100mも離れた所からでも、5台目、6台目と数珠つなぎの如
く出て来た時もあった。

もっと悲惨だったのは、隣が新車のディーラーだった時だ。
新車に付いたので………これを口実に
3台分世話(購入者紹介)してくれませんか》
と頼まれて以来、M社の車を私は毛嫌いしている。

先のAマンションでも1台が
「車に付いていたので……」
と吹付完了数日後にクレームが出て、ワックスを掛けてきれいに落とした経験をした。

「車を洗いに持って行きますから・・・」
「これから乗って出て3日後に帰って来ます」
それは大学生の車で、何とスキー場から帰ったままの状態(泥汚れのまま)で、
「付いた塗料を落としてくれよ、ボディに傷つけない様にね」
と言われて、この位の神経しかこのS大学は、この大学生はと思うと情けなくなった。

それでも私は「済みません」と頭を下げてクリーニングだ。

「バカヤロウ!土建屋を―――なめたらアカンぜよ!!」 

こんど会ったら言ってやろう(夏目雅子風にネ)。
松本ナンバーのJT君。

しかし、よそ様の持ち物に汚れを付けたのは全面的に私共の過ちですので、申し訳ございま
せん。
以後、注意致しますので・・・皆さん許して下さいね。

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天の声と神の声が舞い降りて

2024-06-10 08:39:14 | 建設現場 安全

  十一月  十日(金) 晴れ

オーナー夫妻それにA設計事務所のA所長も来られて、定例打ち合わせ会が始まった。
 ところが、所が、大問題『天の声』を聴く事態が発生してしまった。

「手すりがアルミ手すりだ。丈夫な物にするので、ステンレスで作る話をしていたが……」
とA所長から《突然》の発言だ。

(設計図通りだぜ、施工図承認欄には承諾の社印が押されてあるのに、何でまた―――)
と理性を失い欠けてしまった。

 何故・ナゼそんな大事な事を設計図に書き違えて、今日まで過ごしていたのだ。
設計図を書く以前の打ち合わせ(決まり事)」
なんて話を、私は知る由(よし)もないヨ……だった。

手すりは意匠(デザイン)的に取り付けてあり、緊急事態の避難時のみ、ここを通るがステ
ンレス製品でなければならないという絶対理由は、別にこの際関係ないと思う。

 取り替えろったってもう外部に変更製品を取り付ける作業用の足代はないし、今から
即作っても1ヶ月は軽くかかるし、困ったも
のだ。
こういうクレーム(天の声)が監督屋泣かせなのだ。
施工図も承認図も、かつて打ち合わせして取
り付けた事そのものが、何とかの一声で
コロッと替えざるを得ない事態が発生する。

M店舗でも致命傷寸前の塗替えを言われた様に、今回も対策に悩む問題となった。
A設計事務所のA所長の脳裏にくっついているオーナーと1年以上も昔の話し合い
の線に対して、どこま
でこだわるかがポイントだ。
設計図には当初(工事計画時)には書いてあったらしい。
それが工事契約時、予算オーバー
で色々とムダらしき所を『削る打合わせ』の時に、
アルミに変更したのが事の真相だった。

 私の手元にはA設計事務所から頂いた今の最終設計図と請負金見積書が有る
だけで、ステンレスなんて
文字も《抹消の二重線》さえ見当たらないものだ。

「取り替える事はしないけど何とかならないかね? 
絵に書いたモチを食おうと言う相談だが、幸いにもアルミで作ってあるのだから、着色
は可
能だ。

 ステンカラーで窓枠・カーテンウォールをオーダーしているのだから、この平凡な
手すりにス
テンカラーを塗装して、外観上は同一部材に見立てようと提案した。

―――この塗装が風雨に晒(さら)されて何年持つかの自信はないけれども、人がふん
だんに触る場所の手す
りではなくて、外観上の飾り用の手すりだけに、4~5年はもつ
だろう。
塗装が剥(は)げたら下地のアルミ
部分が見えるだけの事で、その頃には別に手すりに
対してのみ《目が行く事》もなくなってい
るだろう、最悪再塗装も可能だし―――
と勝手な解釈で、設計事務所及びオーナーに納得させるべく説明をした。

もう、一方的にこちらの考え
『これしかない』
という口調で、相手を飲み込んでしまった私
の独演場だったが、この説得力エネルギー
は一体何だったのだ・・・?

会議室で聞いていた人達も、(それしかないネ)という気になって、オーナーに、
「所長の案で大丈夫ですヨ」と口添えがあった。
私はA所長の立場が……と気が気ではなく、とにかく時を動かさねば―――。

固まっている訳には行かず、何とかピンチを切り抜けたものの、改めて手すりを遠く
から眺めていて、
いい事をしたのか、その場凌(しのぎ)の悪い事をしたのか―――
分からなくなって来たのが正直な心だ。

オーナーが帰られる時に手渡そうとしていた「取下げ金請求書」を危うく忘れる所
だった。
頭の中が目まぐるしく動き、口もとどまる所を知らず(我をも忘れ欠けている)と察した
子が、さり気なくオーナーの奥さんに渡していたのを、車のドア越しに見た。

「N子サンキュウ、明日、昼飯オゴってやっからね」
「土曜日だから給食もないし、子供連れてくるわよ、………パパは土休かなア・・・」
「なヌッ?N子はパパと土休をすると思ってたから言ったのに」
「聞いたからね、明日のしゃぶしゃぶを予約するわ―――ルンルン」

十一月 十一日(土) 曇り

(今日迄、軽量工事は空けさせる)
神の声が聞こえていた。
この2週間、丁度大型スーパーの開店直前と重なってしまい、竣工直前でケツに火が
(つ)いて
いる現場へ軽量工事(木の代わりに軽量鉄骨で間仕切りをする→不燃下地の為)
会社の命令によって引き抜かれ
て、Kビルは6階が《手つかず》の状況になっている。

この軽量工が不在の為に、Kビルで助かったのは設備工のH君だ。
 一気に6階迄、軽量天井下地と壁下地組を施工する私の工程表に対し、設備ダクトの
工場製作
が間に合わない。
 軽量工事の前に天井裏に空調用のダクトを吊り込むには、徹夜作業を強いられる所
だった。


それにしても総合工程表からは、かなり急ピッチで工事が進んでいて5階迄は何とか
(しの)いでいた配管工も

『6階では応援部隊を要請しなくては……』
とあせっていた時に、軽量工がプッツンとなったのだから、正直言って助かっただろう。
顔に書いてなくても、足取りを見ていたら分かるものだ。
余裕からか、こちらの腹を読んだ上での質問が来た。

「所長、軽天工さんはいつから(戻って)来ますか?」

あの現場はまだ《ケツに火がついている》という情報をいち早くキャッチしていて、当分、
(水曜日迄)は来ないだろうとH君は読んでいる。

「私達一応6階迄配管工事が終わったので、軽量天井下地が終わりそうな頃、又来ます。
明日か
らチョット空けます(休みます)」
「仕方ないね、ここでボーッとしててもネ……他で稼(かせ)いでおいでよ」
「いえ、連休して―――家族旅行します。今までずっと休んでなかったから・・・」
「いいねえ、私も連れてってよ………冗談、冗談」

 しかしモノは言ってみるものだ。
「大分助かっただろう、この2週間は・・・」
「お蔭さんで……ネ」
「余分なお金(突貫経費)が出て行く筈だったんだろう、その分御馳走しろよ」
「じゃあこれから行きますか?」
となって、本来なら私が出すべきマネーを設備のH君に肩代わりさせてしまった。

ついでにいつものメンバーのK君、F君、N子で近くの『中国料理店C』へ行き、
ファミリ
ー・フルコースをご馳走になった。
(食った、食ったが今は正しい表現)

「ゴメンね―――仕事が延びたので先に食べててネ」
とN子が土休のパパに電話している。
(なんて奴だ、今日に限って・・・)
とパパに恨(うら)まれているだろう、私は。

私、そんなに人の奥様を働かせてはいませんよ。
悪いのは誰だ?やっぱり私?………かナ。

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左官工事を応援しよう

2024-05-27 08:28:02 | 建設現場 安全

 十一月  七日(火) 雨        

 昨夜の雨がまだ降り続いている。通勤途中から、
(また開店休業かなあ)
 と、根性が薄れていく頼り無い出勤だったが、8時半頃に左官工が8名も集合して来た。

「何事だ皆んなで?ヒヤカシか?」
「雨で予定していた所がダメ(作業中止)になったので、Kビルへ来たヨ」
と言う。
と言うのは3人位でコンスタントに毎日仕事をしてくれれば、全体の工程の流れもよくなるの
に、
思い出したかの如くに(気まぐれ的に)現れては手際良く(?)職人を集中し、2~3日仕事をし
てはまた
御無沙汰(他の現場が主要な手持ち工事)のメンバーだからだ。

今日も全く電話一つもなく、予定のない打ち合わせ場所に突如と『殴り込み仕事』だ。
今日は全
員で階段室を徹底的に完成させる事を約束した。
 雨には関係なくて、たまたま今日はKビルに職人の数
が少ないので、この際階段室の左官
工事と吹付タイル下地を一気に終わらせる事にした。

 今までのKビルでの左官工事としては、階段防水モルタル塗りとバルコニーの床防水モル
タル
塗りが主工事で、後は「直押さえ」と「打ち放しの補修」だ。
 コンクリート直押さえという仕事は作業時間から考えると、単価の安い部類に入るだろう。
やはりモルタルを練って鏝(こて)で仕上げるのが左官屋さんの工事としては、仕事らしい仕事
だろうと私は思う。

 ―――余談―――(左官工事について)―――――

   建築工事の中で器用さを一番持っているのは、左官ではないかと私は思う。
       左官工事とはモルタル(セメントに砂と水)を練って壁を塗る、床を塗る位
       しか思えないが、躯体(コンクリート)の補修迄面倒見ているのも左官工だ。

    左官工といえども、鋸(のこ)も持っているし、トンカチも、コンクリート釘も
       水糸も、下げ振り・差しガネ・墨壺までもが必需品だ。

    ここで一枚の壁、柱にモルタルを塗るとしよう。
   コンクリートをチェックすると7㍉中央が膨らんでいたり、上下で5㍉ズレ
      ていたりもする。
       通り(一直線の部分)が『斜めにまっすぐ』の場合もある。

      これらの表面を垂直・水平にするには―――と計算すると頭がハゲる。
     左官の世話役が下げ振りを降ろして「ここは20㍉塗ろう」と決める。
     モルタルの厚さで調整するしか方法はない。

    コンクリート面にジャンカ(す、豆板)があって、そこを斫り取って、補修
     ンクリートを注入する為の型枠を作ってくれるのも左官工だ。

   躯体コンクリートは仕上げラインより幾分控えて作り、後からモルタル
   で詰めて仕上げ面を調整してくれるのも左官工だ。

   タイルを貼り付ける下地調整(コンクリート面からタイル仕上げ寸法を
   引いた(除いた)所迄塗りつける)、直押さえ後の傷穴の補修、大工が 
   型枠材搬出用に開けた 穴の処理………等、実際にどうしてこれが
   左官仕事なのか、左官工に補修させ るのかが、全く分からないまま
   に左官工に頼んでいる。
   
   当然こんなモノは左官工事契約内には含まれていない。
   見積りのやり様がないし、どれだけ手間がかかるものか想像も予想も
       出来ない。

     『常傭』といって一日一人当たりの賃金を決めて、かかった出面分を
      支払う。

      だが常傭仕事は遠慮させてくれと言う。
   他にいくらでも本業の仕事が有るのだ。

    クロスを貼る、あるいは直接ペンキを塗ったり、タイルを貼ったりす
     ると言 っても、その仕上の精度が指摘されると、下地調整の不備の
     せいにされる。
        ペンキの場合は左官のコテの波が横からの光線で見える場合も
     ある。
   モルタルが収縮してクラックが入り、モルタルが浮いた状況になって、
    叩くと ポコンポコンと軽やかな音(実際は聞きたくない音)
がする場合には、
  薬液を注入してくっつける。

   これが全て左官工の責任だと言う人もいるけれど、決めつける訳にも
   いかない。
 
   コンクリートからシャレた(?)出っ張りを作っていても、最終的に大き
  さ
と通りを揃えるのは左官工だ。
      水平器とか下げ振りを使い、時には部分的に斫(はつ)
り取ってでも
  仕上げよう と努力するのだ。
       
    また左官工の一番の腕の見せ所は、階段室のボーダーだろう。
    階段は角度
があり各段は同じ高さを保ち、角にはRが付いている。
    手すりがそこから
立っているし、ステンレスの手すり柱とか階段溝
      などがあると、もう最悪パニック突入だ。

   ボーダーのみならず、左官工事そのものを肉体的に換算すると安い。
      モルタルをネコ車一杯分作ってみると体力消耗の度合いが良くわかる。
   そして
運搬して、ネコ車一杯でどれだけの仕事が出来るかという事
   を考えても、この
肉体労働+器用さを要求されている左官工は、
   大変な作業といえる ものだ。
     

   おまけに、おまけにこの左官工事は造作材とかサッシュを汚す。
      ネコ車で運
搬中に仕上がった所を傷つけるとか、車輪の跡とかモル
   タルが付着(つい)たとか、壁
を塗る時に落ちたモルタルが床材に
   シミをもたらす事は昔の「泥土壁塗り時代」の常識そのままである。
       だからキラワレ者
の一番手にあげられているのも事実だ。

         だから、左官工事を無くそう、減らそうと『乾式工法』を取り入れる
   設計事
 務所も多くなって来た。
         しかしこれは表面しか見ていない人の発想で、現場は左官工に
   よって躯体か
 ら仕上げへの《橋渡し》がなされているのを、忘れない
   で欲しいものだ。

    私だって、豪華住宅の設計または監督を任されたら、汚れる作業
    としての品
物は極力避けると断言出来る。
     私、別に左官工の息子でも親類縁者に左官工がいる訳では決して
    ない。

        「左官に頼むと金がかかるので、お前が直しとけ」
     と先輩所長さんの《いいつけ》を守っていた頃から、左官工に色々
    と助けて
もらっている(今もって)私の完全な『偏見』なのかも知れない。――――――

とにかくKビルは今日の左官工の集中工事で、階段室の吹付工事の予定が、来週には今日
塗っている下地の乾燥次第で可能
というメドがたった。
早速吹き付け工(S塗工店)の水野君に打ち合わせの電話を入れた。

「昨日見た時は何もされていなかったので、まだ段取りしていませんが・・・」
「なにボヤッと見てるの、もう明日で吹付下地補修終わりだよ」最後には、
「来週の終わりには、吹付タイルは完了だからね……いいね」

今日は「雨降り日」の作業としては成果のあった一日でもあった。

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命綱の使命・役割(Ⅱ)

2024-05-13 08:08:12 | 建設現場 安全

命綱の使命・役割    ――― つづき―――

鉄骨工事、これには絶対必要だ。
親綱が無いと柱に直接巻き付けても墜落防止を心掛けるのは、危険性を肌で感じられ
るからだ。
だからと言う訳ではないけれども、弋(とび)さんが墜落したというのは滅多にしか聞かない。

鉄骨の上でボルトを締める時、安全ネットが張ってあっても危険を感じられるの
で、鉄骨
の上では誰もが用心して(気を引き締めて)作業する。

命綱の着装・使用の問題ではないのだ。
《気持ちの問題》が大きいと私は思う。

この鉄骨の上にスレートとか折版(せっぱん=トタン板の様なもの)で屋根を葺(ふ)
業種の職人さんは比較的、墜落事故に遇いやすい条件は揃っている。
でも、屋根の上には命綱を固定し引っ掛けておけるモノ(親綱類)は何も無い。

それでも万一事故が発生すると、
「命綱を着装してなかった、使用していなかった」
を理由のトップに掲げている。

だから今後の対策として
「命綱を着用しよう」
と結論を書く。
これで墜落事故が無くなれば、万々歳だ。
空を飛べない限り『猿も木から落ちる』と言うではないか。
(この場合意味が違ったが、落ちると言う事をいいたいのだ)

命綱に頼るよりも、落ちる穴を落ちない様にフサグ事が先決なのは、皆承知
なのだ。
屋根の上ならここを通りなさいという専用通路を作る。
マンホールの蓋(ふた)は鎖付きとして、必ず蓋を閉めておく。
人が落ちそうな所はネットを張る、
スキマは塞(ふさ)ぐ、手すりは必ず取り付ける―――。

全て結構な事で重要項目だ。
安全勉強会ではイイ答えを出して、合格点をも
らっているのに、現実は危険が・・・。

建築現場を知ってか知らずか、5Kの中の一つ(危険のK)が言われているのが、
気に掛かる所なのだ。

安全、安全と常に言っているのは、裏を返せば危
険がいっぱいに思える様だ。
だが、やる事をきっちりやり、不安全行動を各々
が自覚すれば、事故はかなり
防ぐ事が出来ると、皆も思っている事だ。

とにかく、現場内の安全監理は終わりがない位に、やるべき事が多い。
これを、
『統括安全衛生責任者』
という腕章を巻いた、現場最高責任者は
「全
て毎日、最大もらさずチェックしなさい、事故が起きると全てあなたの責任ですよ」
と含みを持った任命書(現場辞令書)を、所長は頂く。

時には業務上過失致死の容疑で、警察に手錠出頭になる場合(出頭の責任アリアリ)は
『社長代行してる所長なんだよ』
と言う意味の任命書なんぞ、私は欲しくない。

《落ちる》から対策を考えるのか《落とさない様に》対策を考えるのかの、
発点によって、安全に対してのチェックも変化して来るのではないだろうか。

「命綱を着用させていたが本人が使用しなかったので墜落したのだ」
と責任の一端を逃れる様な監理、命綱着用、墜落防止注意の指導、看板の掲
では意味は無く、安全監理だとはとても言えない。
事の本質は、
『危険な所を作らない・放っては置かない事だ』と言ってみた。

いとも簡単な結論だが、墜落事故だけは首から縄をかけて(この場合命綱を
付けてが正解かな)でも、起こしたくない。

何も高い所からの危険だけでなく、たったの1メートルでも、後方へ倒れる
と(プロレスのバックドロップ)になって、
『1メートルで《イチメイ(一命)》取る』
事にもなりかねない。

特に脚立とか梯子を使って、簡単な作業でしかも比較的低い所こそ、思いも
よらない重大災害が待ち受けている。

ここでも、ひとたび事故をおこすと『命綱』が論ぜられるものだ。

実際、脚立の上で命綱をどの様に・・・しろと・・・だ。
『命綱の有効活用』が決めてなのだが、結論は出ない。

有効に使おうと前向きに考えれば、現場では常に命綱を先ず着装し、重くて
も腰に巻いて仕事をする。
(最近は両肩にタスキ掛け(命綱2組)するように指導もしているよね)
イザという時に身を守る事が出来る感覚を持ちたい。

命綱の重さを感じれば、墜落の怖さを予知できると思える筈だ。
重いから、低いから、引っ掛ける所が無いから、あれば仕事にならないから
等の言い分を聞いていたら、結局は
「着装したくない」
という事を前提にして、安全
を語っているとしか、私には思えない。

私自身、命綱を付けて設計図を脇に挟んで現場内を巡察するのは『矛盾』を
感じるし、正直言っ
て嫌いだ。

現場の決まり、会社の決まりなのだから―――という押し着せのも
のだからか、
命綱に対する恩恵を受けていないからかで、考えの別れ道だね。

鉄骨工事の現場なら、擦り切れる位まで使うほどの命綱だから、本来の使用
目的に合った安全教育でいいと私は言いたい。
我身を守ってくれる『綱』だもの、行動に於いて『命綱』に感謝しよう。

―――命綱を『語る道具』にして欲しくない……これが私の結論だ――――

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命綱の使命・役割

2024-04-30 07:58:00 | 建設現場 安全

 『命綱』を本音で・・・

安全について語ると語り尽くせない程、難しい問題があり過ぎる。
『安全第一』と分かっていても出来ない事も有り、無駄に思える様な事や
矛盾している事で
も形式(書類管理)だけの為?にも、安全にしなさいと
いう内容のものも有る。

安全にと設置したもの(手すり等)が仕事をする上で邪魔になる場合もある。
一度事故が起こるとすぐに原因を厳しく追い求められる。
要は起こった後でワイのワイのと言ったって、事故が起きた事はどうしよう
もない事なのだ。

何故手を打てなかったのか
とも言うし、
「本人(被災者)の不注意による
ものだ」
とも言える場合だって、労災扱いには紛(まぎれ)もない。

痛いのは本人もさることながら、現場は支店を通してさらに労基署からも、
厳しい警告をうける。
これはかなり現場としては痛手だ。時間的ロス、施主へ
の信用失墜、とにかく
事故は起こしたくないのは、皆の願いだ。

単純作業で日常の慣れから安心しきった所でも、本人の不注意によるという
事故がおきる場合が多い。

安全パトロール、安全活動を実施して危険なカ所の指摘は色々と言える。
言った本人が他の現場で自分の言動(行動)に責任を持って、指摘されない
様に仕事をしているかは、問題だ。

―――今日は『命綱(安全帯)』について話てみよう――――

高所作業には命綱を着用しましょう(着用させろ!)」
とパトロールでは指摘する。
現場の者全員それは良い事だと分かっている。
だから、協力業者の社長さんは必ず命綱を作業員全員に渡す。
現場も一応予備迄置いてある。
現場で作業中に
使っているか、いないのかでなくて、腰にブラ下げて
あれば万事OKなのだ。

重い命綱を腰に巻いていないと、
「現場では命綱を着用する事の遵守項目違反
として、親方が呼出しを食う事
にもなりかねない。

持っていればそれで安全と言うものでもなかろうに……と私は正直に言う。
『裸の王様』
じゃああるまいし、オカシイ、納得出来なければ自分の意見を言
うしかない。
意味のある命綱の装備に私はしたいのだ。

 「命綱を先ず着装しましょう」
という事で、その為には現場内へ入る時から全員着用しているかをチェックした所
で、墜落防止と何の関係があるのか分からない。
高所からの墜落事故防止の為に必要なのが命綱の役目である。

朝礼時、ラジオ体操を行いながらも命綱を義務付けている事に、疑問を感
じる
現場代理人は私だけだろうか。 
   
安全教育に於いて、
『高所とは?』
と聞くと「2m以上の所」と答える。

 「命綱を腰に巻きつけたものの、これを引っ掛ける所はどこにあるのだ?」
と言う質問が、必ず出る。
重たい命綱を腰に巻いて、屋上のはき掃除をするにも、地上2m以上の所な
ので必要なのだと言う。
建物が高くても、作業者が屋上に立てば,一階や室内を掃いているのと何も
変わらないと私は思う。

座敷ほうき片手にちり取りを持って掃き掃除をするのに、命綱は必要か?だ。
命綱をどこに引っ掛けて掃除をするのかについて問えば、
 「これは決まりだから………」 
との返答だ。
こう答える人は何の自覚もポリシーも無いのかと聞きたいけれど、安全責任者と
しては『不要です』とは発言出来ないのも、無理はない。

場内は『保護帽と安全帯着装の事』と大看板を掲示してあるものの、高所作業
でなくても墜落とは関係ない室内でも重装備での作業で安全なのですか?

外部足代(一般的ビティ足場)上で巾が90㌢~120㌢ある所で、外壁タ
イルを
貼る・塗装工事等の仕事でも
「命綱を使用しなさい」
と指導する。

足代の外面はスジカイが入り、ほこり飛散防止用のシートもあり、更に内側
(建物の仕事をする側)には手すりがあってもだ。

時には手すりがあると作業が出来にくい場合もあり、一旦外して作業を行う時
もある(現場黙認)が弋工は足場
組立図通りに組んでいる。

型枠工、左官工、タイル工等の外部作業者が外したままの手すりを、弋工が
再々取り付けては《また外された》の繰り返しで現場は何時も悩んでいる。
取り付け責任者の弋工の人数に対して、外す人の何と多い事か……。

外したらなぜ復旧しないかというと、
「明日もそこで俺達は仕事をするのだから―――」
と明確な答えだ。

「それなら、手すりの代わりにロープを張って命綱を引っ掛けろ
とムキになると、
 「命綱をしてたら作業半径1mだし、動きにくい。足代と外壁の間隔は30㌢
未満あって、そこにもビティ一段置きに墜落防止棚があり、落っこちそうに
ないし、
 『今までに落ちた事』なんか一度もない!」
 と経験論で正当性(着装不要論)を述べる。

(全く同感だ)
と私が感心していたのでは、
 『安全監理が甘い、何とかさせろ、他の現場では皆やっているのに・・・』
とお叱りをこうむる。さあ困ったネ。

(かわら)屋根の様に先の尖(とが)った建物の場合、親綱(命綱取り付け用の
ロープ)を張
ると、屋根瓦は葺(ふ)けない。
瓦を葺くのに、親綱ロープを張った住宅屋根の現場も見た事も無い。
親綱を固定する柱の代わりの物も無い。
下手すればロープを屋根端に飾ったままで作業している場合もある。

親綱を張ったものの、命綱はどこに掛けるんだ?
ニワトリが先か卵が先かの論争
に似ているね。 
                                                             ~~ 続く  ~~

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建物からも息吹を・・・

2024-04-15 08:12:46 | 建設現場 安全

十一月  一日(水) 曇り  

 月初めは気分的にもスッキリと仕事を行いたいものだ。
今日は東面の足代解体を行う。
昨日の雨でタイル貼り面が少し泥ハネを受けているので、弋も土工も私も皆で雑巾を持って
出て、タイルに着いた汚れと雑巾跡を拭き取った後、足代解体の指令を出した。

場内放送でも、
「足代解体を行います。南、西面の出入口を使って下さい。東、北面は封鎖します」
とかなり連呼した。
朝礼の時も言ったのだけれど、やっぱり見物したがる職人もいる。

人の仕事を眺めるだけの余裕?もないのに、トイレに行ったり、車へ荷物や道具を取りに出
入りする度になんとなく見上げて、なんとなくウナづいているものだ。

 今日は通行人、特に第三者には関係ない所なので、ガードマンも場内の職人達を見ていれば
いいのだから、随分と気楽そうに立入禁止のロープ前を、行ったり来たりして旗を振っている。

時折カラカラカラといって小石かモルタルのガラかが落ちて来る音が聞こえる。
昨日掃除していた分、大きなゴミは落ちて来ないので、弋工も気分良く足代解体を進めている。

足代解体も二日目となると、私もつきっきりで見ている必要もなくなった。
今日で足代解体は丁度半分が片付いた恰好になった。

今月の中頃に本設のエレベーターが動く様になれば、足代解体を全て行える。
荷上げもその
6人乗りエレベーターでクロス、カーペット類を運ぶ事としよう。

仕上げ材料の決定が遅れているものは、早急に結論を出して手配確認だ。
折角決めた物がM店舗の様に《製造中止》では洒落にもならないので、明後日迄には手配を
確認しメーカーへ直接話をしてみよう。

とにかく今月の主要工事としてはタイル貼り、ピアット解体、ガラス、軽量天井下地組、天
井ボード貼り、左官工事それに足代の最終解体だ。
以上は全て確実に完了させるつもりだ。

11月末で出来高目標は95%だ。
10月度より1ヵ月当たりの仕事量はダウンだが、足代解体が完了しない事にはかかれない
仕事も全工事の一割はある。

室内工事は100%完了のつもりで頑張るけれど、床工事は十二月中旬の竣工検査直前を完了
としよう。
簡単に工程表と安全大会の資料を作ってみた。

昼休み時間に月例の安全大会を開催した。
朝礼の時に集まりが悪くなっている現在、職人一同が顔を揃(そろえ)るのも、こういう催物の時
位だろう。
昼食の休憩中には各自の車に入ったり、喫茶店へ行ったり、各階で日なたぼっこをしてウトウト
とするる人もいて、仕上げ工事の人々の休憩時間は《孤独を好むスタイル》が多く感じられるネ。

私も屋上へ行って一人『フルート』を吹いている事もあるこの頃だし―――躯体時期のあの
汗臭さの中での喧騒(けんそう)が、懐かしいものと感じられてきた。

安全大会の中で、
「今までの無事故無災害記録を継続しよう」
と皆で確認しシュプレヒコールを上げた。

足代上の仕事がなくなるので、重大災害の発生率は下がるのだし、ここまで来て横着作業
火災事故を起こす事は絶対にしてはならない様に、皆で確認を行った。

 十一月  四日(土) 晴れ  

「今日は天気がいいのでお爺ちゃんとお婆ちゃんを連れて、現場を見させてもらいに伺いたい
のですが、如何でしょうか?」
とオーナーから連絡が入った。

オーナーのご両親はかなりの御高齢だが、お元気だ。
現場の中をゆっくりと見て頂いた。
昔建てられた時のマンションと比べられては、
「良くなったものだ、良くなったものだ」
と感心される事しきり。そして外の景色を眺めては、
「いい所だ、いい所だ」
と自画自賛されていた。

「昔わしらが子供の時分、ここら辺はなーんにもなくて、イモ畑のなかを駆けずり廻っていたも
のよ。もう80年も前の話だがね。変わったなあ―――。ここに鉄筋コンクリートのKビルを建
てるなんて、考えられもしなかったもんだ・・・」
Kビルの最上階から窓越しに、景色を眺めてそう言われた。

テナント入居者さんが仕事に間が出来たり、お客さんと話が途切れたら、眺めの良いビルから
道路を走る車を見て
いても結構楽しめる。
(ここの交差点は事故も多いので、目撃者にもなれるよ。)

足代解体して建物が見えている部分では、じっくり眺められて、
「いい色だね、綺麗にタイルは貼ってあるし気に入った。これで入居者が決まればめでたし、
めでたしだネ」と言われた。

「1階と2階はどうしてまだ仕上げてないのかネ?」
これはオーナーがその説明をして下さった。そして、
「ええか、シロウトが口を出してはイカン、余分に銭を出してでもいいもの創ってもらえよ、
ええナ○○!」
と、お爺ちゃんがオーナーに言われているのを聞いて、
(全くだ、その通り!)
 私はそう叫びたい心境だった。

 お歳の分だけ苦労も多かっただろうし、言われる事もマトを射ていられて私の緊張もほぐれ
始めている。

何だか好きになれて話が合いそうな雰囲気になって来た。

「建物の『定礎』の文字をお父さんの直筆で
とお願いした。

「その通りに石に文字を彫り込みますから、この位の用紙に書いて下さい。後日頂きに参りま
すから」
と私も久々にスマイル気分だった。

 黒御影(くろみかげ)石に文字を彫り込むのだが、一応の既製品はあるものの、やはり建物に
関係のある方の直筆が記念になって良いものだ。

「もう人に見せられる字が書けないし、残しておくものは建物だけで結構ですから、看板はそ
ちらで作って下さい」
と申し出られた。大変残念だったけれど、
「それでは・・・」
と承った。
確か90歳は軽く越えているとお聞きしていたが『元気だなあ』と感じ、恐れ入ったものでした。

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建物外観 披露開始

2024-04-02 08:44:36 | 建設現場 安全

  十月 三十日(月) 晴れ 

今日から足代(あしば)解体第一歩に入った。
 弋(とび)工、ガラス工、サッシュ工、クリーニング工が揃(そろ)って初めてカーテンウォール部分
の足代
が解体出来るという厄介(やっかい)なものだ。

建物の南面は全面ガラスだけれど、部分的に足代倒壊防止用にガラスを入れてない。
室内から足代を引っ
張っている壁繋(かべつなぎ)パイプを除去してサッシュをその部分に嵌(は)めた。
 ガラスを続けて入れて、シ
ールコーキングを打ってクリーニングしながら、足代を最上段からまず
一段分解体して下りて行く。

今までハヌケになっていて窓からの雨の吹き込みの心配も、これでもうなくなった。
もう二度と足代を組む事の出来ないガラス面が6階から現れて来る。
このガラスは熱線反射
だから、光線によっては鏡になるという今流行のものだ。

ほんの僅かな面積の足代解体ではあるが、とにかく屋上の方から姿を表し始めたのだ、Kビ
ルが……今、やっと・・・。
昼からはオーナー夫妻も設計事務所の中島さんも来られた。
遠くから、近くから眺めては、
「出来ましたねエ・・・」
と感無量だ。

 メッシュシートで覆(おおわ)れていた顔が現れて、喫茶店のママさんも、マスターとも話題豊富
なって来た。
単なるビルだと思い込んでいた人ほど「あっと驚いたよ」と言ってくれた。

「所長、いつも見てたけど、出来ましたねエ……」
Kビルでは契約が出来なかったT金属の竹内社長からの電話には、声が詰まってしまった。
(皆、見ていてくれてるんだ、気にしていてくれたのだ・・・)
 この建物の評価もこれから出て来るから、気を抜かないで頑張らねばならないと思う。

高圧線のすぐ横で曲面壁に足代を組立てて「感電事故」倒壊防止」に夢に迄うなされていた
のも、これで無事終了だ。
この気持ちの良さは何だろう。
今日はほんの一部分の解体だったけれど、明日も引き続いて東面から北面コーナー迄解体す
る。
明日からは弋工とタイル工で解体は出来る。

タイル工は足代解体時には大忙しだ。
足代と外壁面を繋いでいる『足代繋ぎ金物』を除去したら、その部分にすぐタイルを貼って目地
を詰めてクリーニング迄してしまわねばならない。
その間弋工は解体を止めている。

壁繋ぎの処理の為にタイル工は解体時には必ず待機せねばならない。
足代が倒れない様に引っ張っている金物跡を処理して、一段ずつ下りて来るので足元は大丈夫
だが、この壁繋ぎをはずすと足代が一瞬動く(足場が倒れる)感じがする。

弋工に「早くしろ」とせかされながら、タイル貼りとその処理に追われるタイル工は、モタモタしてる
と弋に足代解体を先行されてしまうから、必死だ。

弋工とタイル工の連繋、コミュニケーションが悪いと、どうしてもタイル工の負けになってしまう。
弋工は威勢がいい(大声で合図)し、タイル工は(黙って壁に向かって)の仕事であり、おとなしい。
職種によって、こうも性格が違うものかと呆れてしまう。

足代解体中その周辺にはトラロープを貼って、立入り禁止の看板を建てるけれど、室内から
ヒョッコリ出て来るヤツがいる。
足代上から物こそ投げないにしても、不安定な所で作業している弋工から見れば、下で
チョロチョロ人間が動いていたら、気になって仕方がない。

「馬鹿やろう!下に来るな!!」
弋の大声が響く。

私はガードマンを設置して、通行人には車と上からの落下物に対して注意を促(うなが)しているが、
わざわざ近づいて内を見たがる人もいる。
人間は《探究心旺盛な動物》なのだろう。
(悪く言えば野次馬根性丸出しなのだ)

立入禁止の看板があるだけで、入りたくなる衝動を覚える人もいる。
とにかく、足代解体中は石ころ一ケ落としても、当たる事があるのだから、お引取りを願う
のだが、次から次へと覗き(見学)に来る人が絶えなかった。

「そんなに珍しいモノですか?」と私。
「今まで隠れていたものが、見えると気になりますヨ」
(なーる程、超ミニスカートの女性が現れれば、男性は顔迄《脚迄かな》しっかり見るのと同
じで、気になる部分が間近に見えると更に全てを見たくなる好奇心か、欲望なのか―――)

 Kビルの足代組立で一番悩んだ部分が解体された。
だが一気に解体作業が出来ない(他の職
種とのからみ等があり)全ての足代が解体完了に
なるのは早くて11月20日頃だろう。

早速防水工に足代解体状況を連絡し、
「明後日から三階屋根の工事だよ」
と打ち合わせをした。

足代がなくなり、事務所からの展望が良くなった。
逆に国道からも室内の様子が丸見えだ。
ブラインドを取り付けなければ、事務所でコーヒーを飲んでいるのも丸見えだ。
《オフィスで仕事をしている》という気分を味わう事にしよう。
この場所は贅沢な現場事務所になってしまった。

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