建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

生コン打設のハプニング

2023-05-23 07:36:54 | 建設現場 安全

七月 十四日(金) 晴れ       

 昨日が打設予定日だったけれど一部変更が発生して、順延した3階のコンクリート打ちだ。
 今回もコンクリート打設中にハプニングが発生してしまった。

 10時頃、突然ポンプ車の故障に見舞われたのだ。
車体の中のフレキシブル圧送ホースが裂けてしまって、まさにパンクした恰好になった。
生コンの出荷はストップ出来るけれど、運搬中の車と現場で待機中の一台には困ったものだ。
工場出荷より1時間以内に生コンを打ち込んでしまう原則から外れそうだった。

協力しあえる所は土工も左官も手伝ってポンプ車の応急修理だ。
「昨日の雨で車両の点検はしていたのに………」
今更ボヤいても始まらない。
生コン打設にポンプ車は通常1台であり、予備用のポンプ車を車庫から急遽配送しても1時間
以内に到着は無理な話でもあった。

とにかく現場でこの状況打破するしかないのだ。
手の空いた人は見当たらない。私位のものだった。

皆何かと次の段取りをしている。
バイブレーターの配線ルートを変えたり、型枠を洗ったり、ジュースを配ったり、鉄筋が乱れ
た所を直したり、鉄筋上では通路用の足代板を移動したり・・・何かと仕事をしている。

約45分の中断になってしまったけれど、ポンプ車は再稼働が始まった。
何とか生コンを捨てなくて済んだけれど、ポンプ会社にはキツク叱った。

「スミマセン所長―――お詫(わび)に伺います、今から・・・」
「それより、次回はパワーのある大型ポンプ車を入れてヨ。今日のような小型のポンプ車じゃ
あダメだよ(打設能力限界だ)、約束だよ、いいね牧野さん」 
と人が弱みを見せている間に、ダメ押しの一手だ。

これも私の得意の手だ。

今日の打設コンクリート予定数量は110㎥の予定だ。
1~2階の打設実施データからペースをつかむと5時間で打ち終わる。
途中ロスはあったものの、14時にはポンプ圧送は終わっていた。

タイムロスで昔の事を思い出した。
  ―――昔の事――――――
   S倉庫の現場の時、ポンプ車3台で計1100㎥の1階躯体コンクリート打設
   だった。
           真冬だったけれど、朝の6時から打設開始予定を組んで、生コン工場も
   何とか出荷を了承してくれた。
             真っ暗で寒い朝の5時に全職員の集合だ。
    火炊き場所(残材焼却場)では暖の取れる様に手配したり、照明点灯に
   走り廻ったり、土工約20人と打ち合わせをして、グループ毎に打設場所の
          確認をした。

   リーダーは無線を持って上と下との調整(階高7.5m)も行い準備OKだ
   が、生コン車は来たものの肝心のポンプ車がいない。

   3台の予定が2台しか今いない。
          1台当たり1時間に最高35㎥打設の計算でも10時間はたっぷりかかってしまう
   というのに何て事だ。

   「3台目はどこだ?」
       早朝の5時半に電話をしても呼出し音がリーンリーンと鳴るだけだった。
      (どうなってんだ馬鹿野郎!)
      早朝出勤している土工も騒ぎ始めたし生コン車は3台のポンプ車用に台数を確保
  している(組合からの応援車両もある)ので次から次へと来た。
         そもそもラッシュを避けての早朝運行計画だから生コン工場も8時迄には3往復
  させると計画していたのがプッツンだ。

   早朝にポンプ車は出たのだけれど、途中乗用車のスリップ事故があり、渋滞
  に巻き込まれ、動くに動けず7時になってやっと現場に来て、打設開始が7時
  半だ。
       この1時間半の間に生コン車が道路際に並んだのは言うまでもない。

  生コン車運転手も我々も、ポンプ車を待つだけだった。
  「話が違う、生コン車を他へ廻すから帰してくれ、今日はもう出せない」
  と、かなり生コン工場とモメもしたし、叱られた。(当然だけれどネ)

  でも、つぎの2階で1000㎥の打設時は生コン車の姿が見えないと、かなりの
  『しっぺ返し』を言ってやった。
      「土工の出面(でずら)=日当)待機時間分、請求するぞ!」
      へへへ。俺も若かったもんだ。  
                  ――――――  ――――――

  コンクリート打設には昔から   
   『現場のドラマ』
  が集約されている様に思われてならない。

  Kビルは6階建てで今日が3階だからやっと半分終わった事になった。
  コンクリート打設完了まで、Kビルもまだまだドラマは続くね。

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本音の安全パトロール

2023-05-09 08:08:27 | 建設現場 安全

  七月 十一日(火) 曇り   

今日は丸一日、安全の日だ。

朝からKビルの7月度の安全パトロール、そして午後からM店舗の安全協議会、さらに夕方
にはM店舗の《再パトロールの日》である。
『安全第一』と看板を揚げていても『安全は全てに優先する』と言っても、どこまでが安全な
施設、安全設備なのかがはっきりしない。

 誰が見ても危険と感じるのは安全でない証拠とはなる。
でも、これくらいは何とかなると言う考えもある。例えば―――――

M店舗で前回のパトロールの時、90㌢も掘り下げていないのに
「落下の恐れがあるので手すりと昇降階段を取り付けなさい」
と指示があった。

仮設工事の見積書の内容にはその項目はない。
 その様な低い所には不要(=節約?)という考えで、その予算さえどこにもない。
現地を見に来た人が危ないと言えば『手すり』を付ける。
黙認すればそのままでは要は、パトロールの『主観』で安全施設がどの様にも変化して
行く・・・・という事だ。

今日のパトロールで、
「Kビルは道路に接して足代があるので朝顔(落下物を受け止める棚)を取り付けなさい」
「高圧線の間をぬって弋工に危険な取り付け作業はさせられない」と私。
「規則では・・・」
「送電ストップして頂ければ朝顔取り付け工事は出来ますけれど―――」
「それは所長が電力会社へ・・・」
「結構です!」(てやンでェ全く!

 言いたい事を言って何が
後は所長がよろしく」とは、
下手な落語じゃああるまいし何たる言い勝手(グサ)だ。

私も意地だ。
足代の外側に絶対に物を落とさない、落ちない設備を代わりに作ってやる。
要は物さえ落ちないで、通行者にも迷惑が掛からねばよいではないか。落とさせてなるものか、
朝顔を取り付けなくても、足代の組立てた内部を完全密閉すれば朝顔は不要だ。

《規則、規則と言って本当の安全はどこにあるのか―――》と勝手にイキがってしまった。

昼からのM店舗のパトロールでもまた同じ様な内容の『電線対策』話が出た。
最接近部分で水平離隔1.5mだ。
規則上の2m以上離れている事に引っ掛かっているが、上空8mの所で1.5mだ。
1.5m離れていて人間がどうやって触れる事が出来ますか?

触れる前に墜落しますよ。
それに電線には杭打工事の時に電力会社より保護カバーを《過剰防護申請依頼》取り付けて
あるままではないか。(撤去申請書提出引き延ばし中)

この上、危険作業としては足代解体中に材料(鋼管類)が引っ掛かり……という懸念が
あるには有る。
KビルもM店舗も同じ様に高圧線が接近していて、電力会社もそれなりに電線の迂回
(うかい)や保護カバーを付けてくれている。

これ以上何をしろと言うのだ。

 私も神経を使ってはいるが、電線を撤去しない限り、現場でこれ以上の設備を望むのは無理な話だ。
 万一の場合でも電気事故が起きない様な設備迄すれば、パトロールとしては《合格点》になるのだろうか。

上空ばかりを見るより《手もと足もと》の整備が先決だ。
自分の足元がぐらついていて、他人の事を言えるかってンだ。

両方のパトロールで共通指摘事項に
電動工具の二芯コード使用有り、三芯に取り替える事減点2点』があった。

 確かに丸鋸(まるのこ)、ドリル等は一般家庭のコンセントに差し込んで使えるプラグになっている。
三芯とはアース線が一本あり(丁度洗濯機に緑色の電線が付いている様に)その線は分電盤で
アースされている事と『安全規則』にあるものだ。

電動工具も一般工具にはアース線が付いている。
現場へ電動工具を運び常にアースを接続してたのでは能率ダウンだから、コードも三芯を使用して
(持って来て)差し込みも三芯にして・・・というのだ。

しかし、三芯プラグは二芯のコンセント(一般家庭用)に差し込めない不便さがある。
その逆で二芯プラグは三芯のコンセントには使える(アースを無視使用)。
プラグ(差し込む側)に足の数が1本飛び出している故だ。
どこの現場に移動しても常に三芯用のコンセントが整備してあれば、職人達も三芯の電動工具を選ぶだろう。

しかし、他の建設現場へ行った時、二芯の設備しかしてないと、その電動工具は使えない。
三芯から二芯へそれ用のプラグアタッチメントをさらに加えると使う事は出来る。
だが待てよだ。
一方で使える工具が何故他の建設現場で使えないのだ?

この逆も有るのは何故だ。
△△の建設会社では三芯で◇◇の建設会社は二芯でもOKなら、三芯のKビルは一体何の為に
規制を強(し)いられているのだろうか…という事になって来る。


三芯(アース付)が正しくて二芯がダメと正論をとやかく述べたって何になる事だろうか。
電動工具を選ぶ時三芯を理解していても、二芯の現場へも持ち込む様なたくさんの現場を抱えて
いる親方としては、
「悪いとは思うけれど、自分の都合の良い方(道具)を選ぶ」
のは自然だ。

大手建設会社へ出入りする時はこっちの道具、そうでない時はあっちと分けて迄はいない。
ライトバンに一式工具を積み込んで毎日走り廻っているのが現状で、パトロールの度に、
「その日は失礼致します、二芯のモノを使っておりますので……」
と姿を見せないのでは、安全管理の目的が違う。

私もある程度は親方の立場を理解しているけれど、会社の方針を守らせる為にも、あえて
三芯の説明はする。(黙認使用ではあるが…)
パトロール直前には二芯のコードを回収して《使用禁止の札》まで付ける。
だが、当日だけの事であって、再使用するのを見つけても、
「持って出て行け!」と迄は言えない。

『三芯が望ましい』と今は指導の段階ではないかと思う。
なのに二芯を場内で発見しようものならば、三芯を使う事(指導不備)と減点項目に揚げる。

一体何の意味があると言うのだ。
雨の降る中での作業ではなくて、室内の作業(押入れ、床組、棚板付け)等の日曜大工と変わり
ない作業(腕は全く違うけれど)の時点でさえ三芯というのは何なんだ。
家で使っているCDラジカセでも現場でBGMとして聞く時は三芯(アース付)使用が決まりだ
から守れ、守らせろというポリシーのなさに私はついて行けないので、正直に(隠すのを忘れて)
二芯を使っていた1台を発見されたので、また減点されてしまった。

また呼出して言われるかな? 
 「お前の所はまだ二芯使わせているのかい!?・・・上手くやればいいじゃないか・・・!」
ってね。

こればっかりは横を向いて鼻で
「へン!(聞きたくもネエ!だ。

今日はパトロール、安全協議会にて建前論ばっかりを交わしている安全対策に無性に腹が立って
嫌気がさしてしまった。

  安全に事故を起こさない様に誰だって思っているんだ。
 パトロール隊も言わねばならない事かも知れないけれど《主観》で安全を指導、採点して欲しくない私の
《妙な意地と偏見》
が妙に気に障(さわ)ったみたいな一日だった。

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