建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

ティエラ

2009-03-28 00:01:37 | Weblog
                    …………………………(ティエラ)…………

 ティアラ(王冠)の言葉を耳にするようになったのは雅子妃殿下の報道からだったと思うのだが《ティエラTierra》という単語が私の人生に大きく関係するようになった。

 ティエラ、それはスペイン語で「地球」「土」という意味である。

NHKのラジオ出演が終って、退屈な日々を過ごしている時、
「失礼します、東京のグランブルーの増田と申しますが…」   
と丁寧な声が電話から聞こえて来た。            
「何それ?」
また《風来坊》の購入申し込みの電話かと嬉しくなったのだが、用件は別だった。
「私共は日立建機さんが発行している冊子を編集制作している会社ですが、今度福本さんの記事を載せたいと……」
「本を紹介ですか?」
「《ティエラ》という名前のPR誌で、インタビュー形式で登場して頂けないでしょうかと……」
「何それ?」がまた出る。
 今までに48号ほど配られているそうだが、私は一度も見た事がない冊子であった。
 日立建機さんが、重機関係にて取引のあるお客さんに自社製品のPRをはじめ、土木の分野を離れたユニークな話題も提供している《業界誌らしくない冊子》である事を知らされた。
 朝日新聞とNHKラジオの両方が増田さんの眼と耳に飛び込んで、《風来坊》を読まれて私と会いたくなったのが事の発端だそうだ。
 ティエラに私からのメッセージを載せたいので…という企画に、私は簡単に飛び乗った。
「名古屋へ記者とカメラマンを連れて行きます。ご都合のよろしい日は?……」

 10日後、我が家で数時間、建設現場の若者を応援するが為の話に花が咲き、実もたわわに熟したようで、庭で鳴いている蝉の声も負けるほどの会話となった。
 とりとめもなく、結論も出ない長話の中のメモから起草するのは、私自身が本を出版した経験があるので、大変な仕事である事が骨身にしみるほどよく分かる。
 それを仕事としている事に尊敬をするし(冊子を発行している楽しみは何なのだろう)と、配布済みの数冊のティエラを見せて頂いていると、腕(指先かな)がムズムズして来た。
「このPR誌に私の1頁を連載出来ると、面白くなるかも?」
と半分冗談のつもりの悪いクセがここでも出て、つい調子に乗って言ってしまった。
「その事も、検討して来ました。日立建機さんには福本さんの了解次第で上申するつもりです」
「エッ?」
驚いたのは正直に言って私である。
 気ままに自分の言葉で綴っているから文章が出来るのであって、テーマを与えられたり、企業宣伝になる美辞麗句や本音を外した文章はマッピラ御免であり、しかも、読者対象が私の専門の建築だけではなくて《土木分野》も含まれるのである。
 話のネタが土木向きにもなっていなければ、日立建機さんとしても配布できないのは当然である。
「建築と土木の共通の仕事から話題をひろげれば…」
と気安く増田さんは仰るが、まあ何とかなるだろうけれど、正式に決まってから考えようと心積もりだけにしてインタビューに戻した。

 余談として・・・、
土木と建築を較べて「どちらの位が上なのか」の論議を、嫌というほどやって来た。
 ゼネコンの社内でも上位争いにこだわっているのだが、私は土木が上と結論付けている。
 その答えの理由は至って簡単である。
「《土建業、土建屋》と辞書に有る以上、土木が上でなければならない」
と私の理屈を定義付ければ、丸く解決するのだ。
観光ホテルを山頂に建てるにしても、そこ迄たどり着けられる道路が無くては建築物は創れないし、建物が完成しても浄化槽へ流せるまでの下水道の排水工事がなければ、建物は機能しないのだから、土木対建築のどちらが上かと言い争っても仕方ない話だろう。
 計測単位を㎜で測るか㎝を使うのか、私有地の境界線の中で工事するのか国(官有地)の中の仕事かによって建築と土木の分岐点となるが、土建業とまとめれば似たもの同士である。
「仲良くやろう」
と誰かが旗を振らなくても、心の底では相手を分かっているものだよね。

話をティエラに戻して・・・。
その土木の分野に数回で終わる話でなく連載となると話のネタが途切れるのでは……と心配が無きにしも非ず、と言うのが正直な気持ちであった。
「私の文章で書きますから、都合が悪ければ修正して頂けますか?」
この条件さえ認めてもらえば、ある程度は続けられるとも思える。
 言葉の言い廻し方、不適切な言葉、日立建機さんの立場を考慮していない文章等は、自由に修正してもらうのに、何ら不満はない。
 話のテーマも私の自由で良い事になって、先ずは土木と建築の共通する部分で、若手現場マンを育てる話を基盤にする話から始めようとなった。
「早速、日立建機さんにご報告して承諾をいただきますから、しばらくお待ちください」
(必ず承認になるから)
と増田さんの自信をたぎらせた顔が、頼もしく見えた。

 それから半年後、日立建機の東京本社で連載についての打ち合せ会があり、
『元、現場監督の熱血コラム 福本悟美の現場大好き』
のタイトルも決まっていて、来月からでも原稿次第で寄稿出来る体制が整っていた。
現在は年4回の季刊行であるが、その時は隔月発行だった。
百号まで連載の心積りで執筆開始していてもう90号を越えたところとなっている。

日立建機さんが若手建設現場マンを応援されている中で、私も微力ながら若者に夢と希望の光を伝えたく応援させて頂けている事に感謝している。
若手現場マンからの応援に支えられて、私にまだ熱血の血が騒いでいれば連載を継続するかもしれないが、建設現場を応援したい気持ちはいつまでも持っていたいと思っている。

(注)この本には、ティエラに掲載したものを一部転載してあります。
またインターネット版の《ウェブティエラ》もご覧ください。
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NHKラジオ出演(3)

2009-03-14 00:55:39 | Weblog
                …………………(NHKラジオ出演 3)…………

二見:その「やってられっか」が間違ってしまうと、どういう風になってしまうのか… 
私:まったくやる気のない建物が出来上がり、そこに住む人達が困るだけのものですね。
二見:つまり、責任はあるが権限がない所長さんのつらさは良くわかったンですけども
最近,欠陥住宅があちこちで出て来てますね。どうお考えですか?
私:バブルの頃からたくさん住宅を建てるようになって、職人さんの数が少ないのに数多く建てるにはスピードアップせねばノルマが達成できない。
  たくさん建てれば職人さんも儲かるから現場の作業を極力減らしてプレファブ化らしくバタバタと表面を仕上げて
 「住宅が出来ましたよ」
  と言い、お客さんが見に来た時は表面だけ見て、評価している。骨組みがしっかりしているかを見ないで住宅を評価したら4~5年経てば雨が漏る、建具が傾く、壁にヒビがはいる、地盤が下がる、水が流れなくなる等当然のように出て来ますね。
  コンクリートのマンションでもこのくらいならいいだろうとよく思うけれども
  「創って終わりではない」
  という事が頭に無い現場所長さんの建物ではね。
二見:完全な建物って出来ると思いますか?
私:否、自分が創った建物で満足する建物はあります。出来た時の満足とお客に渡す時の満足は違います。
   設計図とおりに創ることは原則だけれども、ここは後々の事を考えてお金がかかっても(追加工事代金が頂けなくても)設計の先生と話をして良い方法に変更することを認められて行けば、質の良い建物は自ずと出来ます。
   建てること、工期に間に合わせることに必死の現場に完全を求めることは出来ませんよ。

二見:一般の住宅を建てる人もビルを建てる話が当てはまる気がしますよね?
私:一般の人が住宅・マンションを買う時は、色々と現場を見て廻っていると思いまが、どこを見るかと言えば
  「キレイな所で仕事をしているか」
  と言う事なのです。
   玄関を入って見て、職人さんが土足でやっているのか上履きでやっているのかで、どこまで職人さん達が気をつけて仕事をしているか、土足でバタバタとゴミがあったりくわえ煙草だったり傷がつきそうだったりしているようでは当然、良い建物にはなりませんよね。
   入る時に
  「すみません、靴脱いで入るのですか?」
   とお客さんが言うくらいキレイにしておけば、創る方も良いお客さんが買ってくれるンだと気持ちが入りますよ。
   創るほうが土足、見る方も土足で入って表面だけ見てるのでは、仕事に愛情が湧かないのでは良い建物・部屋にはならないですよ。
   しかし、ゼネコンでも掃除片付けは、なかなか出来ないモノなのですよ。
二見:どうして?
私:職人さんは仕事をしに来ているのですよ。ゴミや切り屑は自分のものではないと思っているのですよ。
   自分は切って取り付ければそれでいいのだ、切れ端は誰か片付けてよとバタバタの積み重ねがどこかで失敗を招くのですよ。

二見:どんな建物でも創る人の愛情、そこに入る人の愛情がなければいい物は出来ないですね?どういうものが
   《欠陥住宅》というものになるのですか?
私:職人さんの腕が悪かったというものは別にして、私が思うのは四つあります。
   雨が漏ること、台所、トイレ、風呂場等の水が流れて行かないこと、建具が音を出すこと、建物が傾き始めた兆候)それと床が鳴る(歩くと床が揺れる・音がする)の四つです。
    私も(数年前に)建売住宅を買ったのですが、あまりにも床がギシギシ音がするので、床を剥ぐってみたのですね。
    そしたら自分が建築屋でありながら何という欠陥住宅を買ったのだと経験しましてね。
    自分のスタンスで考えてまさかこんなことはしていないだろうと思って、建売住宅を買ったのだから、私の場合でも不動産屋さんとは表面しか見ていないし、建てるところを見た訳ではないから、一般の人から見ると出来上がったものしか買っていないから、生活してみて始めて欠陥住宅だと言うのは手遅れなのですね。
二見:よほど注意して建物は買わなければならないのですよねえ
私:消費者の方から見ると何処を見れば良いのか分からないですよね。
   大工さんの創っている場所を見学するとか、建てた人からその職人さんの評判を聞いて、設計図を多くの人に見てもらうなど相談する窓口をたくさん拡げて余裕を持ってスタートして欲しいですよね。

二見:創る側の話を《建設現場の風来坊》と《…子守唄》の二冊に書かれていますね?
私:本の中にも書いていますが建築現場に入ってくる若い子たちは、はっきりいって勉強嫌いなのですよね。
  ホワイトカラーになれないし学校嫌いな茶髪のお兄ちゃん、暴走族上がりの人もいますが真面目に働いているのですよね。
  そこらの大学生が親からお金をもらって遊んでいるのを見ると、同年代の現場の中の若者たちがね、若くても生活臭さを持ってしっかり頑張っていますよ。根はやさしいのですよね。
   自分の人生をしっかり持っているからそういう人が集まっている所で、現場所長として若者を育てていきたい・応援したいのが私の生きがいだったのですよ。
  (現場の)若者達が学問よりも職人さんとして
  『自分の腕で自立』
   というポリシーを持っているから20~30代の若者は必死ですよ。
   技術(技)を習得するには親方のゲンコツにも耐え、汗水流して命を削って一つの物を創った時に振り返って見て、俺たちが創ったンだと思うと嬉しいでしょう。

二見:ここで東京江戸川区の大塚えりさんからFAXを紹介します。
   「学歴社会・徒弟制度も無くなってしまった。「勉強は嫌い」で働いて稼ぐ事の喜びが失われて行くのではないでしょうか。若い内は汗を流して働く事の大切さを忘れに…子供達の人気職は大工さん、子供達の考えが正しいのではないでしょか」
二見:生命保険会社が調べた今年の小学生のなりたい職業の一番が大工さんでしたね?野球・サッカー選手が同率4位、これ福本さんどう思われます?
私:いいことですね。もう少し頑張って建築屋さんになって欲しいですね。職人さんとして大工さん左官さん等が見えるのでしょうが、広く建築業界に目を向けてくれているのに私は嬉しく思いますね。
   ねじり鉢巻でカンナをかけているのをいいなあと思うのではなくてね、建物を世の中に残していくというロマンが分かってもらえればいいんじゃないかと思うのですよ。
二見:さて福本さんこれからどんなお仕事をされる?
私:私は創ることから今度は皆に教えるのでなくて応援する。建物を一生懸命創って完成させた時の喜び、建物に愛情を込めれる感性というものを教えて行きたいですね。
*********** ********** *********    ********   
話はまだ続きますが、放送時間はあっという間に終わった感じがしました。
新宿NHK放送センターから帰りのタクシーの中で携帯電話が鳴った。
「今、放送を聞いて本を頼みたいのですが…」
本の届け先のメモが終わると、次々と携帯が鳴り出して放送の余韻も消えてしまった。
   
電話の対応に追われながらも全国放送の威力に驚くと共に、本が広まるのも有り難いが、感想が送られて来るのも嬉しく、張り合いのある日々が今も続いていて感謝している。

                   《続く》
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NHKラジオ出演(2)

2009-03-07 18:33:49 | Weblog
…………………(NHKラジオ出演 2)…………

では99年7月23日(金)の放送を再現してみましょう。
     
☆湾岸道路では事故のため3キロの渋滞です。日本道路交通センターの…… ☆
 時報とともに軽快なテーマ音楽が流れてきた。

二見:9時になりました《ラジオいきいき倶楽部》9時台は暮らしセンスアップ、今日は職人が消える欠陥住宅は増える、まあ確かにそうかもしれないけれど一体どういう理由でそうなるのかと言うことでですね。
 今日は一級建築士の福本悟美さんにお越しいただいております、後ほどじっくりお話を伺います。どうぞよろしくお願いします。
私:どうぞよろしく。
二見:福本さんはこのお仕事に入られてもう何年くらいになりますか?
私:そうですね。大学出た時から建築屋さん一本で来たからかれこれ30年近くなりますね。現場所長としては平成になってから。
二見:ほう、この現場の所長さんと言うのは相当激務?
私:そうですね、外から見ると監督さんという気楽に見えるのですけれども、実際はもうバタバタしてるというか、もう安全から職人さんの仕事の状況をね、出来上がり具合、それから施主(オーナー)さんとの関係、それから設計事務所の監督さんとの打ち合わせ、いろいろすることがたくさんあって、ほっとする時というのは雨降りの仕事の無い時ですね。
二見:やはりそうですか?
私:雨が降ってくるとデスクワークが溜まっているから、それを処理したり。
二見:デスクワークもあるンですよねえ。
私:雨がふると工程もズレるし工程の仕切り直し職人への連絡、と休む暇もないですね

二見:つまり最初にここで創るぞと言ってから出来上がりましたと言うまで、大体どのくらいかかるのですか?
私:ちょっとしたものでも、私の経験では一つの物を創るのに一年間、大型現場で3年、超大型現場で10年と言うのもありますが、私は一つの現場で正月を3回迎えたのが一番長い現場ですけども。
二見:最盛期には工事現場で働いている方はどのくらいいらっしゃるのですか?一番多い時って何人くらい?
私:私の一番多かったのは1日1200人。
二見:延べでなくて1日に1200人?
私:はい、日曜日に300人になって、今日は少ないな?という日もありましたよ。
二見:うわー。この方たちが鉄筋を組む・・・そのやって来る職人さん達はそれぞれ別の会社ということになるンですね?
私:孫請下請けいっぱい来ますから、全員の顔を覚えることはできませんよね、誰がどこで仕事をしているのかも所長としては見られないですね。
二見:でも所長さんとしてはその一人一人に対して責任があるのでしょ?
私:当然あります。その中の一人が怪我をしても所長の責任になりますから、労災事故を考えて安全にさせねばならない、仕事はさせねばならないし、お金の管理、つまり儲けねばならない。
二見:あっそうか。
私:その辺が出てくるともう居ても立ってもいられなく、現場の中を朝から晩まで、どうしてこのような事をしなくてはならないのかと思う事はあります。
 また、コーヒーを飲んでいて手を抜く訳ではないけれども気楽に《任すわ》と言う感じでいても、現場は終わるのですよね、日本人はケツ合わせがうまいというか、あなた任せ職人さん任せでも出来るのですよね、
二見:でも出来る事は出来るのですよね。その後の責任は持て無い、形だけは出来る。《現場所長さんというのはどっかでお茶を飲んでいても、現場の事務所で胃をキリキリさせて休みのない一年を過ごしてもいいんですね》
私:でも建物は残るのですよ。

二見:今、建物は残るとおっしゃいましたが、残るものを創るのですね?
私:そうです。世界に一個しかないものを創るンですけれども、模型飛行機と同じでね、同じ材料同じ設計図で作っても、よく飛ぶ飛行機と飛ばない飛行機が出来ますよね。
二見:経験ありますよ、セット買って来て作ったこともありますよ。
私:同じ材料で作ったのに飛ぶ・飛ばないがあるように、建築の世界で何百人の人が延べ何万人の人が働いても全てがプロとは言い難い・・・それを全部監督してることになっているのだけれども、そこまで目が行き届くと立派な建物が出来るのだけれども、マンションとか一般住宅で現場監督さんがいないという現場も多いのですよ。

二見:そんなこんなを福本さんは本にまとめられて《建設現場の子守唄》《建設現場の風来坊》の二冊自費出版なされて…
私:建設という難しい本じゃなくて、現場のシナリオ・現場の楽しいところを知らせたかったのですよ。塀の中ではこういう話があるンだよ 裏話じゃなくてね、楽しいところだよと…

(やっと本の話題が来た、NHKで自己宣伝していいのかしら、でもやめないよ)

私:世の中建築工事というと、すぐ欠陥工事手抜き工事と悪い方ばかり先走りしているけれども、職人さんを見る目がね、もっと温かい目で見て欲しいよという事を何とか皆さんに伝えたかったと思って書いたのですよ。
二見:私も一気に読んじゃいましたが、専門的な本じゃなくて…。
私:難しい事じゃなくて、若者が現場で悩んでいること、管理する方もされる方も含めて、本来これが建築の姿ではないのかと。
 私の偏見かも知れないけれど本音を書いてね、教科書ではないのですよ、現場の応援、あくまでも建築業界への後ろからの応援です。この本を読んだら絶対に夢が湧くという話です。


(途中省略)
私:現場所長には全ての実権があると思ったら全然ないのです。
 責任はあるけれど権限が無いのです。建物を創る上で現場所長には権限が無いからタイルの色・塗装の色の一つ決める事も出来ず、全て設計者とお金を出すオーナーの方々にお伺いを立てねばならないのです。

「やってられっか!」と何度言おうとした事か…。

                           《続く》
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NHKラジオ出演(1)

2009-03-01 10:03:00 | Weblog
                 …………………(NHKラジオ出演 1)…………

 7月になった。
 暑さの中を無理に出て行くことまでしなくてもとか、別段急いでする事もないしと、もやもやと日々をおくっていたらFAXからダラーと長い用紙が出ているのに気が付いた。
ハローワークの求人募集に2~3箇所応募していたから、
(また雇用者から面接の問い合わせかな?)
と程度の気持ちで見ていると、それは一大事の幕開けとなった。

「NHKラジオ番組に是非出ていただきたいので」
という内容の連絡要旨が送られていた。
 原因は『建設現場の風来坊』の紹介が朝日新聞社の夕刊に載り、NHKさんの目に留まり本を読まれた上で
《トーク番組に出て下さい》という依頼の連絡である。
「ドッヒャー」
 腰がピーンと伸びて青空までが迎えてくれているようである。
 ここらで私のこれからの道が開けるのではないか、と予感が走る。
 何かがどこかでつながっている、否、何かにつながるのではないかと単純な考えで数年前に《建設現場の子守唄》を出版した時から、こちらから一方的にメッセージを発信している。
 メッセージを、誰が受け取ってくれるやら全く予想が立たないながらも出版した《子守唄》には各方面から多くの便りを頂いて、自分なりの満足を感じて感謝もしている。
 それが今回の『建設現場の風来坊』ではマスコミに飛びつけるチャンスが向こうから飛び込んで来たのであるから、本を売るよりもNHKで喋って来たという実績が貴重な財産になる事は明らかである。
 これが今後の仕事の方向に結びつけば良いのでしょうが退職直後であり、まさに無職の《風来坊》であるから、本が売れるかも……という欲目にかられる事もなかった。

 FAXを繰り返して読んでいると電話が鳴った。
「NHKの田中と申しますが、福本先生でしょうか?」         
「はい、でも先生とは呼ばないで、普通に(さん付け)で呼んでください」
 これがディレクターの田中良一さんと話をした最初の言葉でした。   
                               
《ラジオいきいき倶楽部》9時台の『くらしセンスアップ』のコーナーである。
 話す時間は交通情報が途中に含まれても9時55分までの約一時間、トーク番組を受け持つのであり、別段テーマは決められていませんでしたが、
《職人が消えるとき欠陥住宅は増える~なぜ増える!欠陥住宅~》
 はリスナーが飛びつくキィワードにもなっていると教えられた。

 放送前日には新宿NHK放送センターに行き、夕方から番組の下打ち合わせを二見和男アナウンサーと三人で、グラスビール一杯から打ち解けたムードの雑談に話が咲いた。
「欠陥住宅とか手抜き工事を取り上げると視聴率が稼げるから、民放はよくやるのですがNHKとしては悪くなる以前に手を打つスタンスで、番組を作りたいのです……」
「物を創る側から言わせてもらえば「手抜き」と「設計ミス」の言葉を聞くのも言うのもつらいのですよ、職人さん達は必死になって頑張っているのを皆さんに知って欲しいのですよ」
「明日は生放送ですから、久々にドッキリ発言が出てくる予感がします」
「業界の悪口は言いません、『建設現場の風来坊』の話題を少し入れて頂いて、現場で汗水流して働いている茶髪の職人さんを応援するような話をしたいですよね」
三千万人のリスナーがいると聞いて、背筋にピンと力が入り、本の宣伝も出来るとなれば舞い上ってしまいそうな自分が想像出来るようであった。

 とまれ、リハーサルらしき二時間の話も終わって、
(明日の話の結末はどこに落ち着くのか、二見アナウンサーに任せよう)
気楽に自分のそのままで行こう……と思うと何の準備も心配も消えて行った。

では99年7月23日(金)の放送を・・・
                        《続く》
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