建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

熱中症完璧防御の為に

2023-07-18 07:44:42 | 建設現場 安全

  スピンオフ  として熱中症 完璧防御の為に必要な事を、真夏の安全大会
の資料として活用してください。
**********************************

熱中症の『自己防衛』をいかにするか―――私の安全大会時の《熱中症対策》を公開しよう。

安全大会の講演を聞いている元気のいい職人さん達に、 

 「『熱中症になるかも知れない』と心配な方は手を挙(あ)げて下さい」
と訊(たず)ねると、聞き漏(も)らした訳ではないが、手を挙げる人はマレである。

(俺たち、炎天下で仕事してるから、そんなヤワじゃあ職人は勤まらん

と健康なのか強靭(じん)な体力を自慢してなのか、熱中症で倒れるとは思ってもいない。
だから熱中症の予防についての話を誰がしても、馬耳東風って事なのだ。

「じゃあ、の体について話をするね」から対策話が始まる―――

            人間の体温は一般に36℃です。
          子供が風を引いて、熱が出てぐったりしている時が大体39℃だったでしょ?
          大人でもたった3度体温が上がっただけで、仕事を休もうか……と思うよね。
          体温計の目盛を見ましたか?
          体温計は42℃までしか目盛が無くて、それを越えると人間の細胞が止まるって事
    です。

    つまり、ぐったり状態の人の体温が、それからたった3℃上がると心肺停止状態
         なるのです。(逆に8℃下がって28℃が底限界)

         36℃から3℃ほど上がるまでの状態を覚えている人はあまりいなくて、体温を測って
       初めて熱が出ているのを納得する人のほうが多いと聞いています。
   
       風を引けば極寒の冬でさえ体温が上がる(熱が出る)のだから、真夏に太陽に照らさ
      れながら仕事をしていれば体温はどうなるのでしょうか?

  冬、寒い時には手足を動かして、体全体を温める行動を取りますが、夏場でも体を動
  かせて仕事をしていれば、同じように体内から熱は発散しているのですよ。

      炎天下、直射日光をモロに受けての作業をしていて、体温が36℃のままでしょうか?

  健康の為サウナ風呂に入り汗を出している時、体温が36℃のままでしょうか?―――
    サウナ風呂の室内は90℃前後であっても、発汗作用によって体温は調節されるから
  熱中症
のよ うに体温を蓄える事は殆んど無い。

  炎天下で作業している人は日射病になる可能性はあるが、汗を大量に出せば、のどの
  渇き
により水分を絶えず摂取補給となって、体の温度は上がらず熱中症にはなり難い。

      しかし、現場で室内作業をしている場合には、熱中症に罹(かか)る確率が高いのです。

     それは、外気温33℃でも工事中の室内にエアコンはなく、埃飛散防止に窓は閉めて
  ある中
での作業でもあり、風通しの悪いのは慣れているから、

  「今日は特に暑いなあ……もう少し頑張って早目に帰宅しよう」

  と休憩時間を省略して、キリの良いところまで無理矢理仕事を進めるものだ。
   汗をかいて肌着にベトついていても、水分補給があまりなされず、作業を強行する場合
 が多い。

  発汗作用の機能が発揮されていないまま、水分補給が不足してくれば、体を動かした
 熱量が
体内に蓄積され始めて、熱中症の症状が徐々に現われて来る。

 我が家に帰ってエアコンが効いていればいいのだが、クールビズが家庭でも実行されて
 室温
はさほど低くないので、蓄積された体温はなかなか下がらない。
  夕食前後から体調不調を感じて救急車の世話になる……こういう話が夜中に入って来る
 のだ。


 ではどこで手を打っていれば《熱中症が防げる》のかがポイントである。

  「汗をかくのと水分補給のバランスを理解して下さい」
 と私の講義は第二段階に入る―――

    人間の体重の60%が水分です。 
    例えば60㎏の人の場合は36㎏つまり36㍑が水です。
     その中から水分を2%失うと喉が渇いた(カラカラ)と感じる状態になります。

         2%と言えば720㏄ですから、水分損失量はカップラーメン2個分以下の量なのです。
    10%=3.6㍑失うと脱水状況で、12%の4.3㍑(バケツ半分)失うと死亡なのです。
        ちなみに寝ている時の発汗量が200㏄と言われていますので、水分の補給は大切な
         事なのです

     サッカーの試合中、僅(わずか)なブレイクタイム時には、選手がこぞってスポーツ飲料
    をガブ
飲みしているのを見たり、マラソン競技でも走りながら必ず水分補給をしている
    のを
 見れば発汗の量は相当あり、水分補給が大切であり、運動エネルギーの源に
        なってい
るのがよく分ると思います―――

  話を熱中症に戻して―――
『炎天下で作業する人より現場では室内作業に従事する人こそ《熱中症に罹(かか)り易い》
という事に気が付いた頃を見計らって、

「やっぱり熱中症になるカモ知れないな……と思われた方は手を挙げて下さい」
ザワザワと音がして、
(多分大丈夫だろうけども…絶対ならないとも言えないから……) 

と先程の健康自慢を取り消して、ゆっくり手が上がる……数秒後には半数近くも・・・
 手を挙げた人は私の注意事項が琴線に触れて、熱中症対策を素直に理解した顔になって、夏場を乗り切る自信が出来たのが伝わって来る。

 安全大会終了後自社に戻り、自分達のグループや仕事仲間にリーダーとして
《熱中症対策の呼びかけ》
の中で人間の
体について数値を示してくれる筈であり、7月・8月の厳しい暑さの中でも、元気に頑張って頂ければ、私の役目は終りである。
 熱中症に気を付けさせるのか、命の危険を伝えるのか、私の話を活用してください。
『ご安全に・・・』

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7月熱中症完璧防御

2023-07-03 08:46:10 | 建設現場 安全

   七月二十五日(火) 晴れ 

バカヤロウ、この柱もアンカー違うじゃあないか、どこ見てるんだ!アンカーボルトを直す迄、
俺たち帰っているよ、監督さんよ、組の方で直しなよ!!」
「何とか建ててよ、鉄骨の搬入トラックも入って来た事だし・・・」
「何ともならねえよ、そのまま工場へ持って帰らせろ!
と言い争って、汗がグッショリ出ている所で目が覚めた。

夜中の3時だった。
もう鉄骨建方が工事が終わってホッとしているつもりだったのに、神経の疲れは体に入り
切っていたのだ。
抜け切っていないのだった。
(もう大丈夫だ、大丈夫なのだ・・・)
自分に言い聞かせても、心臓のドックンドックン音が脳裏までも聞こえて届いて来る。

冷蔵庫からビールを出して、心を落ち着かせようと飲んでいたら、
(昔もこんな事があったなあ……)と思い出していた。
(私が計画したレッカーで果たして建方が可能だろうか?鉄骨の手配や作業手順にはミスがな
いか?つり込みワイヤーロープの予備は?安全ネットは?全てチェックしたにもかかわらず、
鉄骨建方中には眠れない日々があったなあ)
と、そういう事をしみじみ思って、
(俺もトシを取ったんだ、あの頃のひたむきさは何処へ行ってしまったんだろうか―――)
と悩んでしまった。

朝、少し遅れてKビル出勤となったがM店舗へ廻った。
夢が何となく現実と重なっているようで、まるで昔の自分が歩いている様だった。

小さい鉄骨造の建物でも、むき出しのままの鉄骨本体の組立完了姿は立派だ。
(今は骨組だけだが、自立しているんだ、ここに建っているんだ、さあ仕上げ材料を何なりと
くっ付けて飾ってくれよ、裸は寒いゼ・・・)
とでも鉄骨柱君が言っているみたいだ。

 鉄骨造は(橋、鉄塔もそうだが)意匠面(見ため)でも全体のバランスが良く設計されている。
絵になる構造体でコンクリート構造物より「美しさ」がある。
こう思うのは私の偏見だろうか。

 鉄骨工事は『眺められている』事を一般の工事以上に気をつけておく事が必要だ。
鉄骨工事の建て方中は青空・特に今は真夏の真っ盛りと言うのに日陰が全くない。
炎天下で日陰もない工事現場に、
「これから暑い時期になりますので熱中症に気を付けましょう」
のポスターが1枚掲示してあるが、熱中症になれば現場の責任の如く言われる。

気を付けているだけで防げるのならば、建設業界に熱中症や《労災》は発生しない。
挨拶用の言葉になっているだけだから、気に入らない。
水分を十分補給し、気分が悪くなったら涼しい所で休息して、体を冷やす時は……等の話を耳
に入れ、ポスターを目にすれば《気を付けられる》とでも思っているのでしょうね。

最近、建設現場から熱中症で病院へ運ばれる人が年々増加しているのだから、もっと有効な熱
中症対策があってしかるべき話が聞こえて来ないのが、現状であるみたいだ。

「車の運転には注意して安全運転しましょう」
と車の免許更新時に言われるのだが、死亡事故は発生するし、少なくもならない。
掛け声をかけている側から、どこまで本気なのか熱意が伝わって来ません。
交通安全に掛け声をかけて運転席にはショックアブソーバーも装着されているし、死亡事故の
責任は運転手側に原因があるとでも言いたげな《車は安全だ》と言う様な宣伝もある。

 これは熱中症対策を呼びかけていても、救急車で搬送される人が年々増えていて、注意喚起の
ポスター枚数を増やすだけの《呼びかけ》と似た様なモノであろう。

「安全に注意しなさい、スピードは控えめに」
の決まり文句に対して、
「温度が高くなったら、涼しい所で作業しなさい、水分補給をこまめにしなさい」
と、まるで選挙カーからの叫び声のようで、炎天下で保護帽を被り、命綱を腰に巻き、重装備で
働く人の為を思っている呼びかけでは決してない。

 屋上で作業していて頭上には太陽しか無いような場合に、クールビズではないけれども保護帽
を脱いで麦わら帽子でも与えて、日射病も熱中症も気に掛ける事なく《軽装備》で作業した方が
よほど安全作業になると思えるのだが、誰も麦わら帽子を準備しようとしないで、
「熱中症に気を付けよう…(暑いのは我慢しよう……)」
の繰り返しであり、《我慢をさせながらの安全監理》だから熱中症にさせているのだ。

  朝礼も安全大会でも、労基署署長さんの訓話からも、
「暑くて大変だけど、職人さんだから何とかするだろう」
と他人事の問題として、エアコンの効いた部屋から現場を眺めて、熱中症対策会議が終わるのだ。

 墜落防止を呼びかけていても、墜落死亡事故が発生するのは、落ちる空間があって墜落防止の
ネットが張ってないからであり、ポスターや言葉で事故は防げはしない。

 熱中症に注意させながら、涼しい所で体温を冷やしたくても、職人さんの休憩所にクーラーが
設置されてない小さな現場が大半であり、対策の手立てを差し伸べない限り、熱中症に罹(かか)る
人は増える一方である。

熱中症の『自己防衛』をいかにするか―――私の安全大会時の《熱中症対策》を次回述べよう。

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