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偶置換だんごと奇置換だんご:解決編!

2010-05-17 | Weblog
偶置換だんごと奇置換だんごの謎が解けました!
結論としては,実に納得のいく理由で,意図的に,偶置換だんごと奇置換だんごを公平に半々ずつ作っていたのです!

謎を解く鍵は,次のブログ記事にある,20本入り箱の写真.
だんご三兄弟 - 気ままにバス釣り
串だんごが10本×2列に配列されていますが,2列の串の向きが逆向きで,箱の中央で串の先が向き合うように並べられています.
すると,3色のだんごが箱の中で10×6のマトリックスをなすように並びます.そのマトリックス全体として,3色がサイクリックに斜めの列をなすようにしようとすると,2列をそれぞれ偶置換系列と奇置換系列にしなければなりません.
たとえば,上述のブログ記事の写真で,最も手前の串に着目すると,だんごの色の並びは左から「緑白黒緑白黒」ですが,左列の串は右が先端,右列の串は左が先端なので,左列は「黒白緑」,右列は「緑白黒」です.そして,これらは偶置換と奇置換の関係で,サイクリックな置換では互いに移り変われません!

たぶん,「20本入り(串が2列に並ぶ)の箱を作るときには両方の系列の色順が半々に必要になる」という前提で,製造工程で両方の系列を半々に作っているのでしょう.それで,5本入りや10本入り(串の並びが1列)の箱を作るときには,その都度任意にどちらかの系列から取って,確率的に半々に「偶置換の箱」と「奇置換の箱」ができるのでしょうね.

いやぁ,参りました.菓子屋はちゃんと数学を理解していたのです!

「偶置換だんご」と「奇置換だんご」?

2010-05-17 | Weblog
数学や物理学の世界には,偶置換と奇置換,あるいは右手系と左手系のような,「表裏」あるいは「鏡写し」の関係でお互いに移り合えない,対をなす状態というものがいろいろあります.有機化学だと,L型アミノ酸とD型アミノ酸の関係のような「光学異性体」があり,生物はそれらを選り分ける能力を持つけれど,人工的な化学反応でそれらを選り分けること(不斉合成)は困難で,それを可能にする手法はノーベル賞ものだったりします.
そんなわけで,自然科学には「表裏」あるいは「鏡写し」の関係にまつわる興味深い話題にはこと欠かないわけですが…

鳥取県の銘菓に打吹公園だんごというものがあります.黒(小豆あん),緑(抹茶あん),白(白あん)の3色のだんごを1個ずつ,3個のだんごを刺した串だんごが,5本なり10本なり箱詰めされていますが,ひとつの箱の中では「黒緑白」「白黒緑」「緑白黒」…のように,3色の配列をサイクリックに置換した串が並べられて,見た目を美しくしています.

ところで,3色のだんごを1個ずつ串に刺す色順の総数は,3×2×1で6通りです.一方,ひとつの色順からサイクリックに置換して生成される系列は3通りの色順からなります.
つまり,打吹公園だんごの箱には,

(1) 黒緑白 - 緑白黒 - 白黒緑
(2) 黒白緑 - 白緑黒 - 緑黒白

の2種類の系列があり得るわけで(色順は「串の先から順」に記すことにします),(1)に属する色順と(2)に属する色順の串は同じ箱には混在できません.当然,製造段階でも,一方の系列に統一された串だんごを大量に作ってから箱詰めするのでしょう.
で,これらの2つの系列は,数学的にいえば,ちょうど3次の置換群 S3 における偶置換と奇置換に相当します.たとえば「黒緑白」という色順を基準として選べば,(1)は偶置換の系列(つまり3次交代群 A3),(2)は奇置換の系列となります.



そんなことを考えながら,目の前にある打吹公園だんごの箱を開けて,中のだんごと,菓子屋の「しおり」を見比べたのがこの写真.
当然,菓子屋の「正統」として,すべての商品がどちらか一方の色順の系列に統一されていると思いきや,意外や意外! 現物のだんごと「しおり」の写真のだんごの色順に注目.現物は(2),「しおり」は(1)の系列になっています.

「打吹公園だんご」のGoogle画像検索結果を見ても,(1)と(2)の両方の系列がほぼ半々に見つかります.

うーん,菓子屋としては,どちらの系列が「正統」ということはないのでしょうか.意図的に半々に作っているとか,日ごとの菓子職人の気分で「その日の系列」が決まるとか…

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ちなみに,愛媛の「坊ちゃんだんご」はやはり3色1個ずつの串だんごですが,パッケージ内の色順はすべて同じで,画像検索結果を見ると,どうやら「緑黄黒」がスタンダードのようです.

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(追記)偶置換だんごと奇置換だんごの疑問は氷解しました!