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分かりやすくて斬新な述語論理の記述(?)

2010-05-10 | アカデミック
松井知己先生のブログで,ありがたいことに私の本について
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述語論理に関して,分かりやすくて斬新な記述がされていて,目からウロコが落ちるようです.
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と言及してくださっていますが,いやはや,「斬新」とは恐れ入ります.

私の本の述語論理の記述が類書と大きく異なる点は,「述語」という術語(←ややこしい)を大々的に使っていることだと思います.
私の本では,述語論理式のうち閉論理式を「命題」,自由変数がある論理式を「述語」あるいは「条件」と呼ぶという立場をとっています.

「述語」という言葉自体は新しいものでもなんでもありません.命題と述語を明確に区別して導入したうえで述語を論理の説明の中心に据えるのは,私の指導者の一人でもある本橋信義先生の流儀で,私のオリジナルではありません.「『述語』と『条件』は同義語である」「述語の自由変数に値を代入すると命題になる」「『十分条件』『必要条件』という語は命題でなく『条件』すなわち述語に対して用いるべき」などのアイデアも,学生時代に本橋先生の授業で学んだものです.

それで,述語を前面に出すとなると,自由変数と束縛変数の考えも説明しないといけない,命題の意味値が T/F なら述語の意味値は「真理集合」であるべき,真理集合を扱うとなると全体集合としての「変数の変域」の考えが必要になる… というふうに,説明しなければならないことが芋蔓式に出てきて,それらをなんとかまとめて教科書的記述に落とし込んだのが第3章「述語と真理集合」というわけです.
そういう意味で,私の本の述語論理の説明は「必然的にそういう筋書きになった」という感じで,新しいわけでも,きわだって独特なわけでもなく,「斬新」と評されるのは予想外でした.

もっとも,「なんで今までこういう論理の本を誰も書かなかったの?」という思いはあって,その意味では「独特で新しい」本となっているのでしょうが…