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白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

西尾維新 『鬼物語』 感想

2011-09-29 12:45:28 | 西尾維新
直接的なネタバレはしないつもりだけど、どうしてもそうなるところもあるだろうから、その点、了解した上で続きをどうぞ。
































多分、『化物語』第二シリーズの中では、最も『化物語』らしい雰囲気をもつのが本作のように感じた。というか、実にこの物語世界の印象を支えていたのが八九寺真宵であったことを象徴するような作品だと思う。

そう、『鬼物語』は表向きは忍野忍=キスショットのターンと名うたれていて、確かにお話の多くを占めるのは400年前の忍の物語なのだけど、しかし、本作の実質的な主人公はどう考えても八九寺になる。

その意味では、『傾物語』と対をなす作品。
実際、語り部が阿良々木君であるところも、そういう印象を与える。
阿良々木君にとっての痛みの話なんだよね、どちらも。

裏返すと、この間にあった『花物語』と『囮物語』がいかにイレギュラーな、変化球であったというのもわかる。語り部の点でも、時空間の点でも。

そして、そのイレギュラーの演出そのものが忍野扇の所業であるような感じがプンプンする。
というか、第二シリーズ自体が、基本的に忍野扇による『化物語』の二次創作でした!なんてオチが待ってるのかも知れないような感じ。

今回、途中まで読んで、あれ、今回は忍野扇が出てこないなと思っていて、実際、彼女が出てこないことが、いつもの『化物語』世界が進行している雰囲気を確保するのに一役買っていたのだけど。

ところが彼/彼女は、最後の最後で登場してきた。

で、どうも振り返ると、彼女自身が今回登場した「怪異を超える非存在」たる「くらやみ(←阿良々木君による仮称)」を操る存在のように見えてくる。

「くらやみ」は、この世(という物語世界)のルールに準じない、その意味では因果律から逸脱した存在を狩る役割を担っていて、それが故に、忍と八九寺が対象になったわけで、要するに、キャラ設定から逸脱したり、メタ視点を持つ存在を許さずに、物語内世界が平穏で調和のとれた世界となることを調整する番人のような役割を担っている。

で、これって普通に考えたら創造主とか神とか、あるいはゲームマスターと呼ばれる役割だよね。要するにバグキャラとかチートな能力の発現を許さない、世界の守護者。

どうも、そういう役割を担ってるのが忍野扇なのだろうな、と。

で、同じく忍野一族であったメメは、そうした一族の「神的介入属性」を嫌っていたのだろうなとも思う。だからこそ、彼は「自分で助かるしかない」とか、バランスを保つ、とかいって、自助努力を促すような振る舞いをしていたのではないかな、と。

ということで、とにかく忍野一族の秘密、とりわけ扇の位置づけ、というのが第二シリーズの「扇の要」にあることはほぼ間違いないのだろうな。

ただ、第三シリーズの登場も示唆されている現在、忍野扇の話が次回作の『恋物語』で明らかにされるかどうか、というと怪しいところ。むしろ、忍野一族や、忍野メメの仲間たちの話が第三シリーズまで持ち越すことになるのだろうな、という気がしている。

大体、学習塾炎上事件の真相を描くと言っていた『鬼物語』自体、そのことには全く触れずに違う話をしてしまったわけだしw

第二シリーズで出された謎やら伏線の回収が『恋物語』のみで行われるには「尺が足りない」と思うのだよね。

というか、今回のノリでいくなら、次作で『囮物語』で生じた、千石撫子ラスボス化事件すら全く無視されそうな感じすらする。いや、あれは、たんなるノリですから、と。

で、その、「あ、あれ、嘘ですよー、夢ですよー」なんて言ってごまかすのが扇の役割のように思えてきてる。

というのも、今回の『鬼物語』で気になったのは、あからさまに「叙述トリック」や「メタフィクション」が作中で言及されているから。『花物語』では、いきなりの「未来の話≒時間跳躍」が導入され、『傾物語』では、平行世界の時空跳躍が扱われたりと、この第二シリーズは、そもそものこの物語シリーズ自体が物語内仮構でした、という感じがしてくるから。

まぁ、このあたりは、次回作を見ないことにはわからないのだけど。

でも、全体に漂う二次創作的嘘臭さが、八九寺の退場すら実は冗談でした、で終わらせてしまいそうで。。。 その分、今回の終幕部分も今一つリアリティに欠けていたと思う。

とはいえ、この嘘臭いリアリティの醸成こそが西尾維新の狙いだとしたら、やはりこの人は恐るべしってことになるのだけど。

ということで、『恋物語』の出版を心待ちしたい。
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