パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

今年の聴き初めは、モーツァルトの「魔笛」

2018年01月03日 09時07分03秒 | 音楽

毎年最初に聴く音楽は慎重に選ぶ
「一年の計は元旦にあり」この言葉が頭の片隅に鎮座していて
下手な選曲は出来ないと勝手にプレッシャーがかかる
バッハなら当たりハズレはないし、クリスマス・オラトリオの正月用のを選べば
問題はないのだがどうも気が乗らず結局選んだのは

モーツァルトの「魔笛」ショルティの指揮したウィーンフィルのやつだ
聴き始めというのもも実は昨年からの続きといったほうが正確で
昨年は6面あるレコードの4面まで聴いていて残すところ5面、6面だけになっていたので
この際年始に最後まで聞くことにしたというわけだ

大正解!
とても楽しかった
「楽しい」という言葉が音楽を聴いて出てくることはそんなにないかもしれない
音楽を聴いて感動したとか圧倒されたとか何か考えさせられたとか 、、
そういう言葉が出てくるほうが普通だが、この「魔笛」は何か無条件に楽しい

個人的にはレコードの3面に収まられれいる1幕3場のシーンの音楽がとても気に入っている
真面目な元々は頼りないタミーノが、ザラストロの下に囚われているパミーナを助けようと
神殿に入ってくるシーンから始まる音楽は、急に真面目なしかも美しいコーラスが挿入される
そしてその後で起きるいろんな人間が入り混じってのバタバタ騒動
本当にこのシーンは楽しい、パパゲーノがグロッケンシュピールを奏して
みんながつい踊りだしてしまうようなところは演劇的で一気呵成の楽しさ

この場面がずっと気に入っていたが、今年始めの5面も楽しかった
それはパパゲーノのアリア「恋人か女房がいれば」があったからで
この無責任な脱力系の歌詞はこんなだ

彼女か女房を パパゲーノは欲しいんだ
ああ そんな気立てのいい可愛い娘がいたら まさにこのうえない幸せよ

そうなりゃ飲み食い みなおいしくて 王様とだって肩を並べられるだろうさ
人生を賢い人間として楽しみ まるで天国にいるようだろう

彼女ひとりか女房ひとり おれの欲しいのはこれだけさ
優しい小鳩がいてくれりゃ まさに幸せそのものよ

ああ 誰も好いてはくれんのか 魅力的な娘たちの誰にも?
どうか誰か この苦境から助けておくれ さもないと本当に死ぬほどうらむぞ

娘っ子か可愛い女房がひとり パパゲーノは欲しいんだ
ああ やさしい小鳩がいてくれりゃ おれはまったく大喜びさ

誰も俺を愛してくれないなら わが身をこがして死ぬまでよ
それでも女性のくちびるがキスしてくれたら そうしたら俺はきっとまた元気になるさ

この歌の後もセリフで馬鹿馬鹿しい楽しいのが続く
そうして楽しい気分になってレコード6面までくるといよいよ最後のシーンとなる
真面目な主人公タミーノは我慢して努力して目的を果たすのだが、横着者のパパゲーノは
せっかく目の前に現れた恋人候補のパパゲーナが直ぐにいなくなって希望を失い
もう生きている価値がないとさえ思うようになる
こんなことなら1.2.3と数えて首を吊ろうとするが、そのカウントも本気なのかどうか、、
誰かが助け舟を出してくれないか、、と期待しながらゆっくり小さな声で、、数える
でも、ついに誰も助けにこず3となった
この瞬間に現れるのが今までのふざけた気分を覆すパパゲーノの心情を表す悲しい雰囲気の音楽
その効果的なこと
だがそれは一瞬のこと
音楽は一気に明るい大団円にむかう
横着者のパパゲーノにもまるでプレゼントのようなパパゲーナが現れ
「生きていていいんだ、、」と肯定的な結論にいたる

そう、とても肯定的な結論だ
良い人も横着な人も生きていていい
それは、赤塚不二夫の「それでいいのだ!」を連想させるような
おおらかなホッとする結論だ

この魔笛、台本が楽しいから楽しいのか、、といえば、多分違う
モーツァルトのキャラクター描写の的確さ、感情のコントラスト、勢いにのった時の音楽の進行、そして晩年特有の静謐さ
それらがあってこそ楽しい世界が実現される
こんなとんでもない物語でも人の心に響く様に美しい音楽が可能なのがモーツァルトの不思議なところだ
「魔笛」を聴いたゲーテが、その第二部を書こうとしたらしいが、その気持は分からないでもないな

ところで、聴いたのはレコード盤
少し反っていたので妙な雑音が入ったが、中身がギュッと詰まった音はレコードしか味わえない
多少のノイズよりはこちらの音を選んでしまう


 

 


 

 

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