パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

千羽鶴

2021年10月14日 09時58分32秒 | 

あの時の自分では、わかるはずないな!
と感じたのが図書館から借りてきて再読した川端康成の「千羽鶴」
最初に読んだのは高校時代か大学の時か、覚えていない

覚えていることといえば物語に出てきた「志野」という焼き物のことだけ
何かとても魅力的な焼きもらしいと頭に刻まれたが
題名の「千羽鶴」はどこから来ているか、さっぱり記憶になかった

それが女性の持参した風呂敷の柄だったことに驚くが
それ以上に驚いたのは、こんな話だったのかということ

およそ子どもではわからない変な物語で
浮気症の男の息子が、父の浮気相手の婦人とその娘、
それにもうひとりの胸に痣のある女性との微妙な関係を
今では何となく分かる微妙な雰囲気を醸し出している
(物語の印象は福永武彦の「海市」に似ているような気もする)

今ではわかるというのは、人の弱さ、醜さ、惰性に流されそうなところ
そして異性に振り回されてしまう可能性を実感として体験しているからだ
単なるフィクションではなく、思いの外リアリティがありそう今は思えたが
主人公の男の感じ方、生き方は不意に夏目漱石の「それから」の代助を連想した

久しぶりに読んでみると、俯瞰的に捉えて話を進めている作者の視点とか
文に隠れた性格のようなものを感じられた気がしたが、正直なところ
少しばかり作為的な、あるいは意地悪のようなところがあって、
川端康成はあまり相性が良い方ではないと思えた
(太宰治の文章に感じる意地悪さを思い出した)

借りた本の一緒に収められた「伊豆の踊り子」もこんな内容だったのかと驚いた
それは青春の一瞬の物語、エピソードというよりは、生身の男の
少しばかり作為的な行動の物語で、風景描写の素晴らしさは納得できても
心情は少し距離感を覚えてしまった

だが川端康成はノーベル賞をもらっている
そしてそれは、この少しばかり作為的な、もしかしたら意地悪っぽいところが見える
なにかのせいではないかとも思ったりする
毎年ノーベル賞候補の村上春樹も、決して相性のいい方ではないが
彼の作品はどちらかといえば、エンタメ的な要素が大きく
川端康成と比較すると毒がない(と思う)

ノーベル賞をもらう人物は、どこか重荷を背負っている人のような印象を持つ
ノーベル賞作家のオルハン・パムクの「雪」は最後の出来事のせいで再読したいとは思わないが
中身がギュッと詰まった重い作品なのは十分過ぎるほどわかる

話はそれたが、本は読むタイミングで随分感じ方が違ってくるということ
それにしても、「千羽鶴」があんな内容の本だったとは、、

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