冬の日の散歩道には、時々、思いがけない発見がある。
冷たい空気に、太陽の日差しが通り抜ける道端に、万両の実がなっていた。
この実を育てると、お金持ちになると母親が言っていた。
ちっとも豊かにならずに、貧乏なままで死んでいった彼女のことを思うと、時々いたたまれない気持ちになる。
私の宝はお前たちだ、と私たち兄弟に繰り返し言っていた。
ずいぶんと心配や迷惑をかけたのだが、不思議と幸運に恵まれたのは、母親の強い愛情のおかげだと思っている。
冬のこのごろ、こうして万両の実を見るたびに、小さく笑った母親を思いだす。
万両の実は葉の下になり、千両の実は葉の上になるという。
それほど豊かにたれ下がり、己の実を支えているのだ。
日に照らされて鮮やかに輝く赤い実は、陰鬱になりがちな冬の景色を一変させる。
雪の白にもよく映える。
万両、万両、この世の人々に幸せを届けておくれ。
今日のささやかな発見は、私の心を晴れやかにさせた。