ガラパゴス通信リターンズ

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魚類への憧憬

2009-03-15 07:38:43 | Weblog
 昨年の暮れのことである。夕食時に太郎が、「セックスってそういうことだったの」と突然聞いた。その日学校で、隣の席のさくみちゃんがスティック糊と筆箱をつかって、セックスのなんたるかを「実演」してみせたのだという。さくみちゃんはボーイッシュで活発な女の子である。なんであれこの年頃では、女の子の方が早熟である。さくみちゃんはさらにセックスをすると赤ちゃんができるということも太郎に教えたようだ。

 「さくみのいうとおりなの。びんちゃんとおかあちゃんもそんなことやったの?」と聞く。嘘をつくわけにもいかないので、われわれが「そうだ」と答えると、太郎は「H先生も?」と聞く。H先生は太郎の担任の男の先生である。こちらとしては「たぶんそうだろう」と答えるしかない。先生にはお子さんがいるから、「たぶん」も何もないのだが。太郎はショックを受けたようだ。

  太郎は最近、その手の下品なことばを連発していた。太郎はこの4月から中学生。そういうことを口にしたがる年頃ではある。だから当然、赤ちゃんのできるメカニズムは知っているのだと思っていた。それを知らなかったということにも驚いたが、これほどショックを受けるとも思っていなかった。まあ、ぼくも中学に入った直後にそのことを知ったのだから驚くには値しないのかもしれない。でもいまは昔と違って小学校から性教育は始まっている。そこでは一体、何を教えているのだろうかと思う。

 「ああ、もう御飯を食べたくない。人間に生まれたくなかった。動物か昆虫がよかった」と太郎はいう。骨子が、「でも太郎、動物も昆虫も交尾をするのは知っているでしょう。交尾というのはね。すなわちセックスなのだよ」。流暢に講釈を続ける骨子に「魚は?」と太郎が聞く。「魚類は交尾しない。卵に精液をかけるだけ」と骨子。太郎はしみじみと言った。「オレは魚類に生まれたかった」。