美 going on

長野県下の小中学校の図工美術教師による,毎日の「図画工作」「美術」の授業の様子を紹介します 

体で味わう鑑賞 ~『最後の晩餐』をロールプレイ~

2014年08月01日 19時58分40秒 | 鑑賞学習のすすめ
裾花中,長崎です。

先週末,教員免許更新講習会があり,信州大学で岡田匡史先生の鑑賞の講義を受けてきました。

知り合いの先生も多く,楽しい雰囲気で鑑賞について改めて学ぶことが出来ました。

講習では,鑑賞指導を実際に行う上でとてもわかりやすく,いくつかのメソッドを学びました。

 1 鑑賞指導メソッドⅠ ‘形’や‘主題‘で繋ぐ鑑賞
 2 鑑賞指導メソッドⅡ 類似を探す比較鑑賞
 3 鑑賞指導メソッドⅢ 段階型鑑賞法(含対話・読解)
 4 鑑賞指導メソッドⅣ ロール・プレイ(体で味わう鑑賞)

最後のロールプレイでは,『最後の晩餐』を参加者で演じてみる,ということを行いました。



こうした実践はこれまでも耳にはしていたのですが,実際に自分が演じる側になるのは初めてで,今回やってみていろいろなよさを感じました。

1つめは,作者の気持ちが理解できるということ。

絵を描いたダビンチが,全体の構図やそれぞれの弟子の目線などを考えつつも,絵にするときには,無理な体勢をわざととらせていることもわかりました。

2つめは,その絵の中の人物の気持ちが理解できるということ。

実はこの写真。
その前に楽しくみんなで食事を囲み談笑している場面から,キリストが「この中に裏切り者がいる」と告白したあとにポーズをとって撮られたものです。

一連の芝居のあと,どれだけびっくりしたのか,「それは本当ですか!?」「まさか私ではありませんよ!」「一体誰が…!」という声が実際に聞こえてきそうな,そんな瞬間の絵なんだ,ということがよくわかりました。

きっと中学生くらいでしたら,大いに盛り上がることでしょうね!


にほんブログ村 教育ブログ 図工・美術科教育へにほんブログ村

教育・学校 ブログランキングへ

鑑賞を使って・・・

2014年07月03日 23時01分27秒 | 鑑賞学習のすすめ
安茂里小坂井です。
長崎先生が、子どもたちの「上手な絵」について考察しておられたので、すこし絡めての話題です。

美術の授業を「苦手」な理由を尋ねると、やはり「上手く描けないから」と多くの子どもたちが答えます。特に「リアルに描けない」からと口をそろえてよく言います。この場合のリアルは写実的、本物そっくり、写真みたいを意味しています。
そこでこの鑑賞を行います。

題材名「絵の役割について

準備するもの
写実的な作品(写真はドミニク・アングルの作品)
ゴッホの作品
※いずれも資料集や作品集から撮りました。プロジェクターで拡大して提示します。パソコンのプレビューだけで十分です。拡大もできます。

展開
1 まずは2つの作品をじっくり見せます。タッチの違いもしっかりと。
2 次に書かれた年代を提示します。
3 質問「技術が高まって、写真みたいに描けるようになるならわかるけれど、時代が進むとゴッホのような絵になっていったのはなぜ?

 子どもたちは困ります。
 「リアルに描くのに飽きてしまったから」等など。あまり時間をとっても困るだけなので、見計らってヒントをだします。

4 実はこの40年の間に今ではどこにでもある「ある物」が発明されました。そのせいで絵は変わっていくのですが・・・それはなんでしょう?

5 答えは・・・カメラ
  カメラの登場は、絵の役割を大きく変えました。まったくその通りに自分の姿を残せるのですから。
  必然的に、絵は写実的であることから、離れていくことになりました。そこで自分の感じた印象が大事になってきました。

6 美術の授業で学んでほしいことは、リアルに描くことよりも、自分の思いを色や形でどう伝えるか。
  写実的にしたいなら写真を撮ればいい。写真では足りない部分「私にはこう見えた」「感じられた」を大事にしたい。

 と結びます。

私はこれを中学校2年生の最初の授業にしていました。ともすると、写実一辺倒になりがちな子どもたちの気持ちを、すこしでも和らげることができるといいのですが・・・。
  、

気軽に鑑賞しませんか?鑑賞のすすめその2

2014年06月26日 21時53分18秒 | 鑑賞学習のすすめ
安茂里小 坂井です。ずいぶん久しぶりになってしまいました。
今日は鑑賞学習のすすめ その2です。写真は、つい最近おこなった、「せ~ので選ぼう」の一場面です。


私が鑑賞を始めた理由は
「子どもたちって、作りたい作品のモデルがあるかな?」と感じたことでした。

それまで、授業をやると発想・構想で悩み、時間だけがかかってしまう子がクラスに必ず何人かいました。
当初は「失敗をおそれているのだろう」と考えて、試行錯誤を保証する題材をしてみたり、造形遊びのような感性トレーニングをしてみたりしていました。

でも、ふと自分を振り返えってみると、ひらめきが降ってきたときは制作に乗れるけれど、そうでないときは苦しむ自分がいたことを思い出しました。

表現をすることは、コップから水があふれ出すことに似ていると思います。
満水なら、とめどなく溢れ続けて、どんどん外にでてくる。(表現できる)でも、いっぱいにならなければ、いつまでたっても外にはでてこない。
だから、必要なのは授業で「表現しろ~表現しろ~」というのではなく、言いたくなるように、子どもたちの心のコップに、水を注いであげることなのではないか??
と考えたのです。

「せ~ので選ぼう」は、これまでどのクラスでも行ってきましたが、例外なく盛り上がります。それは、作品を見ることで、子どもたちの中にどんどん水がたまっているからだと思います。肩肘はって発表しなくてもいい気軽さと、自分とは違う見方に出会える貴重な時間です。


鑑賞学習のすすめ

2014年05月21日 22時47分30秒 | 鑑賞学習のすすめ
安茂里小 坂井です。
このブログの何回か前に、諏訪で対話型鑑賞をしている記事があります。今ではいろいろな美術館で同じ取り組みがされているので、是非参加してみてください。お勧めします。

でも「美術の専門ではない私には、難しそう」と気おくれされる方も多いと思います。実際、学校の教育現場で鑑賞の授業って「どんな風にすればいいかわからない」「そもそも、なにを教えればいいのか、わからない」という声もたくさん聞きます。

そこで、私が提案するのが鑑賞の入門編 
「せ~ので選ぼう!!」です。
所要時間は5分~10分

準備するもの 図工(美術)の教科書か資料集 (作品集でもよい) 折り込み広告

やり方
1) 3人くらいの小さなグループを作る。
2) 持っている資料集のあるページをあける
  (基本的にどこでもよい)
3) その見開きページの中で、自分が気に入った作品を心に決める
4) 全員が決めたら、「せ~の」でその作品を指さす
   (慣れてきたら、選んだ理由を説明する)
5) 次のページにすすむ 以降、時間までこの繰り返し。


そもそも、子どもたちは、作品を見るのが結構好きです。教師がなにも言わなくても、自然に「こんなところがいい」とか「その作品は選ぼうか迷った」とかいろいろしゃべりだします。

これって、「自分の価値観で作品を選ぶ」体験ですし、「自分と違う見方に出会う」瞬間でもあります。
同じ作品を選ばれると「ああ、同じだ」と共感の喜びを感じます。

たとえば授業前の休み時間、心を美術にむける小さな活動として・・・
単元と単元のつなぎに、
授業の補充に
試してみてください。意外に、「作品をみるのが楽しい!」気持ちがわかると思います。

このシリーズは、ちょっと続けたいと思うので、カテゴリーを増やしました。続きはまたの機会に!