芥録 一冊目

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「著作権」はなんのために?

2009-04-21 22:52:32 | コラム(著作権関連)
「新たな視点から既存の問題に展望を」,文化庁の基本問題小委員会が第1回会合:ITpro

権利者軽視では結論出ない? 著作権制度「大所」からの議論開始

ネット時代の著作権、利害離れて議論を 「基本問題小委員会」スタート - ITmedia News

著作権制度の抜本見直しへ、「基本問題小委員会」の初回会合が開催――文化審:ニュース





というわけで、「私的録音録画小委員会」が「基本問題小委員会」と名を変え再び始まりました。
名を変えただけでなく委員会の主旨も変わっているようですが、それについては後ほど。



まずは、構成員から触れておきましょう。
とは言っても触れるべき点は簡単です。JEITAの委員と津田大介氏がいなくなりました。
日本レコード協会、JASRACなど巨大な団体を始め、作家やマンガ家などの権利者サイドの人間が大半を占めます。
文化庁がなんと言おうと、明らかに人選に偏重があると言わざるをえないでしょう。

昨年のブルーレイ課金やダビング10問題に際してJEITAが話をややこしくした、という側面があるのは否めませんが、少なくとも著作権を取り巻く多くの人々の内、JEITAもまた大切な目であるのは確かです。
そして津田大介氏も、利用者の視点を持つ貴重な人間です。
安直に「利用者の利便性を」と唱えるわけではなく、ちゃんと権利者の方も向いていたという点で、彼の存在はとても大切な筈。

なんともきな臭いと言いますか、薄気味悪い第一印象となってしまいました。



話し合いの内容自体については、第一回と言うこともあるので触れないことにします。
今回注目したいのは、この会議の主旨です。
今までは私的複製に伴う補償金や著作者死後の著作権保護期間など、具体的な案件についての話が中心でした。
しかし今回は、

「(前略)著作権制度全般について、根本から話し合ってみることに意義があると考えている」(黒沼課長補佐)
(引用:著作権制度の抜本見直しへ、「基本問題小委員会」の初回会合が開催――文化審:ニュース http://pc.nikkeibp.co.jp/article/news/20090420/1014448/)

とあるように、「著作権法」というよりは更に根本の「著作権」を考える、というのがどうやら主旨のようです。
(イマイチ定まっていない雰囲気もあるので予断は許せませんが)


確かに、これには賛成です。
いい加減、著作権という権利が何のためのものなのかを改めて考えた方がいい。

はっきり言って、著作権とは「著作物の作者の利益を保証するため」のものではありません。
更に言えば「権利者のため」のものでもない。
そして当然、「利用者のため」のものでもない。



「文化活動の興隆を促すため」


これが著作権の存在意義です。

著作権法は主に著作者の権利や利益を保証するための法律ですが、それは単に「そうすることが文化の興隆を実現するから」です。
著作者の権利や権利者の利益を実現するのは、それが文化興隆を実現するための手段であるからに過ぎません。

端的に言ってしまえば、もし

「コピーだろうがなんだろうがあちこちで使われた方が文化興隆を果たせる」

ということになれば、恐らく著作権法は「一切のコピー制限を禁止する」ということになるでしょう。

もちろん今のは例えばの話。少なくとも現状は、そうした世の中ではありません。
ですので、委員会の中でもあるように「権利者軽視」では何も実を結ばないでしょう。


しかし、だからと言って「自家用車でCDを聴きたいならもう一枚買うのが当然」という理屈は通りません。

想像してみれば簡単なことです。
私たちが今、家の中、車の中、電車、バスなど、あちこちで音楽を聴いているのは、それがとても手軽にできるからです。
音楽も、かつてはコンサートのような生演奏が大前提でした。
それがここまで生活に浸透しているのは、まさに「文化の興隆」と言えるでしょう。

これがもし一々CDを買わないといけなくなると、ここまで生活に浸透することはあり得るでしょうか?
答えはノーです。

これこそ本末転倒。著作権の存在意義を真っ向から否定する行為と言わざるをえません。



今回の委員会で「著作権」というものを見直すことができれば、喜ばしいことだと思います。
「権利者を守れ」だとか「もっと便利に利用できるようにしろ」だとか、そうした水掛け論はもういい加減にしなければならない。
著作者のどんな権利を守ることが、そして利用者がどんな恩恵を享受できるようにすることが文化の興隆を促すのか。
本質的な議論ができることを望みます。
お願いですから、「権利権利」とやかましく叫ぶだけで終わらないで下さいね。







ダビング10延長を受けて

2008-05-19 22:11:48 | コラム(著作権関連)
先日、ダビング10が延期 というニュースを紹介しました。
委員会で、文化庁提案を受け入れ「させる」ためのカードとして提示していた通り、採用したということでしょう。
しかし、この脅し(という表現で構いませんよね?)、アップルには殆ど効果が無いように思います。
日本の放送事情なんか、言ってみれば「どうでもいい」でしょうからね。
「勝手にやってろ。どうせその内泣きを見るぞ」って感じでしょうか。
実際、去年もアップルは猛烈な抗議を送ってましたし、他の国内機器メーカーに比べれば、文句を言いやすい立場にいる気がします。
国内機器メーカーにしてみれば、ダビング10というカードは腹立たしい存在でしょう。
せっかく、随所で「BDレコーダーはダビング10の始まる夏が買い時!」だとか「北京に合わせてブルーレイを!」などの宣伝が踊っているのに(この宣伝自体へのツッコミはなしです。そういう話題ではありませんので。)、横から水をぶっかけられるわけですから。
アップルが正直に文句を言ったとしても、「ちょっと空気を読んでくれないかなあ・・・」という気分にもなるでしょう。
ただ、本音としては「ざまあみろ」と思ってるかもしれませんね。

なんにしても、脅しという形でこの問題を解決する、というのはダメです。
法学者のいう「時間かかりすぎてるから取り敢えず結論出そうぜ」というのも正論ではありますけど、それにしたってこんな決着はあんまり賛同できませんよ。






文化庁、「iPod課金」提案へ

2008-05-06 10:03:43 | コラム(著作権関連)
asahi.com:iPodに「著作権料」上乗せ 文化庁提案へ - 文化・芸能




これはつまり、iPodやウォークマンを買うだけで、著作者の利益を損なうということでしょうか・・・。
というか、この制度が拒否されたら「ダビング10」の導入を拒否するって、それはあまりに傲慢でしょう。
そんなことを言う前に、補償金制度への不信感の払拭をまず第一にやってもらいたいものです。
補償金の使途を明かし、それに納得した上でなら、そこまで反感も覚えずに済むのですから。






コラムではありません。あしからず。

2008-04-03 23:31:01 | コラム(著作権関連)



私的複製、補償金からDRMで管理へ--文化庁の審議委員会が著作権法改正に向け始動:ニュース - CNET Japan



下線部、抜粋引用



ダウンロードの違法化については、委員の間で違法とすべきという一定の結論が得られたものの、

よかったですね、一定の結論が出て。あれだけ反発が起こっている中で結論を出すなんて馬鹿な真似、本当に、凄いです。



DRMによってコンテンツの複製回数が完全にコントロールできれば、補償金は不要になるという前提のもと、著作権法30条2項で規定された補償金制度を順次縮小していくという方針を示したもの。

その前提、成り立ちませんよ?そんな方針だと間違いなく頓挫しますよ?
あ、なるほど。頓挫を前提にしているんですね。最初から、補償金制度を縮小するつもりはないから、そういう前提を打ち出した、と。



文化庁著作権課川瀬真氏によると「同案に対しては関係団体の間からも表立った反対意見は寄せられていない」と述べた。

へー・・・。



今後は補償金制度の対象機器や機器に上乗せする金額、補償金の支払い義務者などの詳細を盛り込んだ提案書を改めてまとめ、5月8日に開かれる第2回会合で提出する方針が語られた。

ああ、まだまだ消費者から金を搾り取るつもりなんですね。その一貫した姿勢、輝いてますよ、金色に。





最後の最後に、少しだけホッとする一文もあるのですが、全体的には気分の沈む記事です。
顔に青筋が走ってもいいのですが、最早そんな気にもなれません。
漫画的に言えば、顔にトーンが貼られて縦線が走ってる状態です。






製作者と権利者 その二

2008-03-26 23:52:00 | コラム(著作権関連)
違反か販促か--著作権侵害動画の本質:CNET Japan オンラインパネルディスカッション - CNET Japan



前回の続きです。



この記事の冒頭で素晴らしいコメントがあります。

「ファンのいないところにエンターテインメントは成り立たない。好意を持っていてわざわざ宣伝してくれる。そんなファンをないがしろにして著作違反だとやっていたら,ファンなんかいなくなります」

全くもってその通り。素晴らしいですよね。
ではこれ、誰のコメントかと言うと、角川デジックスの福田正社長のものです。
私の記憶の中では、動画共有サイトからどこよりも熱心に動画を削除していたのは角川だったような気がしているのですが・・・。
記憶に自信が無いのが申し訳ないのですが、「ん?」と思ってしまう点ではあります。
まあ過去はどうあれ少なくとも現在は、最も積極的なアクションを起こしている会社と言えるでしょう。


少々話は変わります。
記事の最後に書かれているこの一文、ここから日本のテレビ業界が抱える問題を考えることができます。

番組製作者も空気のように消える番組ではなく、2度3度と見てもらい、おいしい思いをしたいはずだ。

ここで注意すべきは、「おいしい思い」をしたいのは「番組製作者」であることです。
実際に番組を流しているテレビ局は、むしろ番組を「空気のように消」すことを望んでいるのですから。

放送業界の収入は(NHKを除き)広告収入がメインです。
つまり放送業界にしてみれば、「一つの番組でいかに広告費を稼ぐか」が大事なわけです。
そのため、例えば人気ドラマであれば、大体こういうプロセスを踏むことになります。

テレビで放送(一回目の広告収入)

テレビ局の蔵入り

再放送(二回目の広告収入)

その後時々再放送(再放送ごとに広告収入)

このプロセスで最も大切な要素は、二つ目の「蔵入り」です。
これによってその番組を完全に自分の管理下に置き、視聴者が目にする機会をコントロールします。
そうすることで再放送の価値が上がり、当然の結果として広告収入も増えるわけです。
またこれ以外に、レンタル収入やDVD販売による収入などもあるでしょう。
しかし売り上げの大部分は広告収入が賄うので、テレビ局にしてみれば「蔵入り」という要素が非常に大事となります。


ところが、番組製作者の思惑は大きく異なります。(テレビ局の自社制作の場合は別として)
自分たちの作った番組なのだから、自分たちの自由に儲けさせろ、というわけです。
この辺りは説明すると長くなるので省きますが、通常テレビ局は番組に関する全ての権利を保有しています。
つまり先程の「完全管理」というのは、著作権やそこから発生する全ての利益も管理しているということです。
番組を買い取る際に相当な額を払ってはいますが、それは「歩合制」ではありません。
どんな人気コンテンツを作ろうと、一定額以上の儲けは出しようがないのです。
これが日本のコンテンツ業界の抱える最大の歪みでしょう。
番組製作者はあくまで下請け。そこから発生する殆どの利益はテレビ局のものとなるのです。

随分とおかしな話なのですが、これに番組製作者が強く反抗できないのにも相応の理由があります。
テレビ局からそっぽを向かれると、製作者としてはどうにもならなくなってしまうのです。
やはり、テレビの持つ影響力というのは強大ということでしょう。


ところが最近、状況が段々と変わってきました。
テレビにはまだまだ及ばないものの、破竹の勢いで影響力を広げるメディア、インターネットが現れたのです。
つまり番組製作者は、テレビ放送に頼らずとも多くの人々に知ってもらう手段を手に入れつつあるのです。
自分たちで作った人気コンテンツを使い、テレビ局に権利を握られることなく、自由に稼ぐことができる。
いいものを作れば作るだけ、相応のリターンが帰ってくる。
気概を持つ製作者にしてみれば、夢のような状況と言えるでしょう。


もちろん、そんな状況がすぐに生まれることは考えにくいです。
インターネットが成長著しいとはいえ、広告の市場規模はまだまだテレビが、文字通り桁違いな規模を誇っています。
しかし放送業界は、そろそろ現状に拘泥するのをやめた方がよい。
一視聴者として言わせてもらえば、今すぐやめていただきたい。
結局のところ放送業界も広告収入に依存しているのです。
記事で書かれている、こういう状況だって、あり得ない話ではないのです。




視聴率を見て視聴者を見ていない現状は打破されなくてはいけない。
そうしないと、広告主が直接、製作会社とニコニコ動画で番組を作りだす時代がやってきてしまう。
そのほうが、売れるのなら、広告主は躊躇しないだろう。




※参考文献
吉野次郎著『テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか』日経BP社刊
Amazonリンク






製作者と権利者 その一

2008-03-24 22:57:02 | コラム(著作権関連)
違反か販促か--著作権侵害動画の本質:CNET Japan オンラインパネルディスカッション - CNET Japan



権利者は「著作権を侵害された」から怒っているのではなく、「自分たちが本来得るはずだった利益が損なわれた」から怒っている。
非常に的を射たコメントだと思います。
この記事を読んで思ったことを二つに分けて書こうと思います。
今回は、権利者のネガティブかつ短絡的な発想について書きます。

考えてみれば、権利者の怒りは当然とも言えます。
自分の儲けが損なわれて怒らない人はいないでしょう。
では何が問題かというと、何故それを素直に言わないのか、というところではないでしょうか。
「儲けが減る」という問題を前面に出さず、「著作権を侵害している」という建前で行動する。
どこか汚い印象をぬぐいきれない「金儲け」という本音を隠し、「著作権」という言葉を大義名分を仕立て上げるその体質が反感を買っている気がします。
そして同時に、実際の行動が極めてネガティブなものであるのも大きな要因でしょう。
CNETの記事で言えば、それが「動画共有に共有されなくなったときが、本当は一番の営業機会の損失になる」ということです。
少なくとも話題に上る限りは、その存在は人々に認められているわけです。
「好きの反対は無関心」というのは随所で聞く言葉ですが、つまりはそういうことでしょう。

動画共有によって儲けが損なわれること自体は、どうにかしなければならないでしょう。
しかし、そのために動画共有サイトから権利を持つ動画を削除する、といった措置「だけ」ではただ反感を買うのみです。
「動画共有サイトは自分たちの利益を損ねる存在だ」と考え、そこさえ締めれば儲けが戻ってくるという短絡的な行動。
実際に利益を損ねる存在だとしても、それならばその存在を何とか利用してやろうという発想は生まれないものでしょうか。
まさにその発想によって、YouTubeは一メディアとしての地位を確立しつつあります。
日本の権利者も、ネット上に広がる様々なニーズに早く気づくべきでしょう。






いい方法がありますよ

2007-12-31 00:48:47 | コラム(著作権関連)

フリーオ駆逐の最終兵器、「合法外付けチューナー」の胎動:日経パソコンオンライン



まあ、一定評価できる内容もあるのですが、基本的には業界の都合を最優先した記事と言わざるをえません。
ここでも色々論じていますが、はっきり言って、もっと簡単な方法があります。

フリーオが合法チューナーとして認められるように法改正と制度改正をすればいいんですよ。
後、B-CASを無くせば尚良い。

だってそうですよね?
そもそもフリーオが法的に問題になるのって、日本くらいですよ?
海外で「外付け地デジチューナー」と言えば、フリーオ程度の性能なんて最低限のラインです。
なんというか、なんで地デジチューナーが普及しないのかを全く分かってませんよね。

「映像がきれいですよー。色んなサービスが受けられますよー」
「で、内容は面白いの?」
「で、俺らにとって便利な製品なの?」




合法外付けチューナーが思いっきりこけることを切望しますよ。
いい加減、業界の都合に消費者が付き合ってられないってのを理解すべきです。






素晴らしいサイト

2007-12-20 21:43:56 | コラム(著作権関連)
任意団体日本違法サイト協会



これは素晴らしい。こんな団体がいてくれるなら、ダウンロードが違法化されても安心ですね!

記念すべき違法サイト認定第一号は文化庁ですおめでとう!
そりゃそうですよね。Macのアイコンを無断転載してましたもんねえ。
ということは、これから先文化庁のホームページを見たら、ああ大変だ。著作権法に抵触してしまいます。
皆様も重々注意なさって下さい。文化庁のサイトを見る際は、著作権法のことを頭に置いておかないと大変なことになりますよ。
















・・・ふう。
我ながら、こういう文章を書くのは苦手です。
さて、ここ数日色々と書きましたが、一つ忘れてることがありました。

それは、津田大介さんへの感謝です。
権利者相手に色々と尽力して下さった津田さんに、深く感謝しなければなりません。
悲しいかな、まだ終わったわけではないので今後も色々大変だろうとは思いますが、取り敢えずは今までの活動を労いたいと思います。